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助成対象詳細

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2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2) ]

ポスト福島第一原発事故における地域コミュニティの持続的「発展」「再生」の可能性
Possibilities of Sustainable "Development"and "Reconstruction"in Local Communities Facing with the Fukushima Daiichi Nuclear Disaster

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

2011年3月11日の東日本大震災、特に原発震災は福島県のみならず日本、さらには近隣諸国を含めたグローバルな問題を提起した。日本の将来の基本的在り方が問われているのである。本研究の目的は、今後の政府や自治体の政策変容を視野に入れつつ、異なる文脈で展開をみせる地域社会の住民の生活意識の変容を、第一に原発の「反」「脱」「維持」という論点から、第二に地域コミュニティの持続的な「発展」「再生」という論点から、明らかにし、「原発」問題に対する地域社会の側からの解決策を提示することである。調査対象地は原発立地地域のなかで唯一国策であるプルサーマル導入に対する住民投票で異議申し立てを行った新潟県刈羽村と柏崎市である。併せて第三に、原発推進政策に対する世論の変化のなかで原発に今後どう対応するかという課題や、地域コミュニティの抱える課題等で日本と共通の課題を抱える韓国の地域社会や社会運動との共通性や相違点を比較検討し、ナショナルな枠を越えたコスモポリタン的な枠組み(U.Beck)でローカルな課題の解決可能性を探りたい。
 "The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake" and especially the Fukushima Daiichi nuclear disaster raised radical problem to, not only Fukushima prefecture but also Japan, furthermore neighboring countries. The impact of Fukushima also resonated worldwide. The question having to being asked here is how clearly we can design our future of Japan. The purpose of this research project is to examine the changes of citizens' life consciousness developing interdependently of those of national government's policy and local one's that should also be put our focus on. Analyzing this, firstly from the point of "anti‐," or "post‐," or "pro‐" nuclear power facility, secondly from the viewpoint of "sustainable development" or "reconstruction" of local communities, we will show how to resolve the problem from communal point of view. The case study areas are Kariwa village and Kashiwazaki city in Niigata prefecture, which are siting nuclear power plants. In the former, inhabitant' poll regarding the approval or disapproval of the MOX fuel use at Kasiwazaki-Kariwa nuclear station was only carried out in nuclear power plant siting areas. Finally, with change of the public opinion of nuclear energy utilization, South Korea is faced with the critical problem how such a subject should be resolved as well as in Japan. Comparing with the similarity and difference of local communities and social movements in these two countries, we would like to examine possibilities of solving regional subjects with the cosmopolitan framework beyond national one (U. Beck).

実施報告書・概要

Summary of Final Report

〈研究課題〉

2011年3月11日の東日本大震災、特に原発震災は福島県のみならず日本、さらには近隣諸国を含めたグローバルな問題を提起した。日本の将来の基本的在り方が問われているのである。本研究の目的は、今後の政府や自治体の政策変容を視野に入れつつ、異なる文脈で展開をみせる地域社会の住民の生活意識の変容を、第1に原発の「反」「脱」「維持」という論点から、第2に地域コミュニティの持続的な「発展」「再生」という論点から、明らかにし、「原発」問題に対する地域社会の側からの解決策を提示することである。調査対象地は原発立地地域のなかで唯一国策であるプルサーマル導入に対する住民投票で異議申し立てを行った新潟県刈羽村と柏崎市である。併せて第3に、原発推進政策に対する世論の変化のなかで原発に今後どう対応するかという課題や、地域コミュニティの抱える課題等で日本と共通の課題を抱える韓国の地域社会や社会運動との共通性や相違点を比較検討し、ナショナルな枠を越えたコスモポリタン的な枠組み(U.Beck)でローカルな課題の解決可能性を探ることを課題とした。


〈研究方法〉

第一に、柏崎・刈羽地域の原発建設計画前後の経緯、プルサーマル導入に関する住民投票運動、原発震災前後について、推進派、反対派、中間派のリーダー及び行政担当者に詳細な聴き取り調査を行った。なお、対象者は2002年の同原発のトラブル隠しをきっかけに推進派・反対派・中間派を含めた討論の場として設けられた「透明性を確保する地域の会」(以下「地域の会」)(本年11月末で定例会137回、運営委員会は144回に及ぶ)の運営委員及び柏崎市が原発との関係についての将来構想を描くための重要な取り組みとしている「これからの柏崎とエネルギーを考えるシンポジウム」の実行委員等である。

第二に以上の立地地域住民を対象とした生活意識、コミュニティ意識、地域開発のありかた等について調査票調査を行うとともに、併せて福島第一原発事故以降、事故時の地域防災計画策定義務対象自治体の範囲が、30キロ圏に拡大したことを受けて、同原発関係住民として長岡市民対象に同様の調査を行い、比較検討を行った。また、それらの意識形成に地方・全国メディアが果たす役割も検証した。 第三に以上の作業と並行して、韓国を対象とし、地域リーダー、行政関係者への詳細な聴き取り調査を行い、原発立地地域・建設予定地域に焦点をあて、地域社会の住民の生活意識・生活構造、社会構造の「揺らぎ」(の可能性)を考察し、日本の事例の相対化を図った。


〈研究結果〉

同地域においては従来から、「推進派」「反対派」の激しい対立と、そこから距離を置く多数派(無関心層)という構図が存在しており、「原発」問題には触れないということが規範となっていた。しかしそれを避けて地域の将来を構想することはできず、大きな障壁となってきた。その意味では「地域の会」という立ち位置の異なる住民が一堂に会し、2002年以降現在に至るまで「原発」を焦点にして議論を交わしてきたこと(継続してきたこと)の意味は大きい。この基盤の存在が次へのステップを生みだすための重要な装置となっている。今回の「地域の会」を中心とするリーダーがほぼ共通して、多様な立場の市民が柏崎市の現状を見据えた上で討論を交わせる場の存在の重要性と、将来を構想しうる可能性をどのように高めていくかという認識に至っていることは注目すべきである。福島第一原発事故を受け止めつつ、地域社会の持続的可能性を現実化するための展望が一定程度開かれていると見ることが出来る。また、柏崎市としても、福島第一原発事故を日本の原子力政策の大きな転換期として捉え、立地地域である同市の将来展望を「持続可能なまち」としての発展=原子力に大きく依存しない経済産業構造の構築にあるとし、そのために「多様な考えに基づく」柏崎の将来構想を、原発をタブー視せずにエネルギーについて考える場として「これからの柏崎とエネルギーを考えるシンポジウム」(テーマを多様な住民(推進派、反対派、地域団体代表、学識経験者)により構成される実行委員会が検討する)を設定し、原発問題をタブー視せず、議論を交わせる仕組みを構築しようとしている。エネルギー政策が、民主党政権における「2030年代に原発稼働ゼロ」から政権交代によって「原発を重要なベースロード電源」とし原発の早期再稼働への積極的姿勢を示すなど揺れ動く中で、立地自治体が、その将来構想を描けないでいる。その中で、本事例のように原発立地自治体において「持続可能なまち」に向けて住民たちが討論空間を練り上げるとともに、そして、それを基底とする政策立案へと動き始めていることのもつ意味は大きい。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0018
題目(Project Title)
ポスト福島第一原発事故における地域コミュニティの持続的「発展」「再生」の可能性
Possibilities of Sustainable "Development"and "Reconstruction"in Local Communities Facing with the Fukushima Daiichi Nuclear Disaster
代表者名(Representative)
渡邊  登 / Noboru Watanabe
代表者所属(Organization)
新潟大学人文学部
Faculty of Humanities, Niigata University
助成金額(Grant Amount)
7,000,000
リンク(Link)
活動地域(Area)