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助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research) ]

ケニア、ナイロビ国立公園とその周辺の人為的景観下におけるヒョウ(Panthera Pardus)の保全生態学研究
Conservation Ecology of a Wild African Leopards (Panthera Pardus) in Urban Landscape in and around Nairobi National Par

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

世界各地で、「人々の生活」と「野生動物の保全」が対立し、その共存のありかたが問われている。ケニアは、野生動物の観察を対象にした観光立国として知られているが、生物多様性保全のため、「狩猟の全面的禁止」の法令が定められており、人への脅威、家畜や農作物被害に悩む住民との間に深刻な内政問題を引き起こしている。
 本研究は、大都市ナイロビで都市住民や牧畜民の生活圏と隣接するナイロビ国立公園において、ワシントン条約の附属書Iに指定される希少獣であり、観光対象の人気獣「ビッグファイブ」であり、家畜被害における主要害獣であるヒョウを対象にした。
 GPS/GSMシステムを導入し、センサーカメラを設置して、個体数、生息域を明確化する。さらに、糞分析から野生動物と家畜がどのような割合で捕食されているかを明らかにする。ヒョウが高い適応力を持つことは経験的に知られていたが、本研究のように、人為的影響の強い地域で遊動域や採食内容から、人為的環境条件への適応の側面を定量的に調査したものはなく、最終的には人とヒョウの共存をめざしたヒョウの「保全」と「地域住民との軋轢緩和」システムの構築を課題とする。
 In many areas in the world, wildlife conservation conflicts with livelihood of local people, and the coexistence between the two become a serious issue. Kenya has been known as a wildlife sanctuary for tourists and in order to conserve biodiversity, hunting is banned by Kenyan law. However, human-wildlife conflicts such as physical attacks on people, livestock predation and crop raiding are still regarded as high-priority problems in the internal affairs.
 In this study, I focus on leopard which is listed Appendix 1 by CITES and one of the “Big five”, the most attractive animals for tourists. On the other hand, the species causes a serious problem of livestock predation in Kenya. I introduce GPS/GSM system and camera trap to quantify population density and habitat range of the leopard. Moreover, by scat analysis, I will identify and quantify their prey species. It is important to analyze the ratio of livestock and wildlife to mitigate human-wildlife conflicts. The leopard is empirically known as a highly adaptable animal to disturbed environment. There are however, very few quantitative studies on their feeding ecology of leopard in urban landscapes. The goals of this study are to build up the framework of conservation and mitigation for coexistence of leopard and people.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

本調査地である、ナイロビ国立公園は1946年に設置されてから現在に至るまで、ヒョウに関する研究が実施されてこなかった。そのため、個体数、行動域など明らかになっていなかった。ナイロビ国立公園は大都市ナイロビから、わずか7kmしか離れていないにも関わらず、大型哺乳類も生息する世界的にみても稀な、都市に隣接した大変ユニークな国立公園である。また、ヒョウはアフリカ大陸から、東アジアに至るまで広範囲に分布しており、適応能力が高いとことで知られているが、絶滅の危機にさらされているライオン、チータに比べ、保全の優先順位が低いこともありあまり研究されてこなかった現状がある。しかしながら、実際は、科学的根拠のあるデータが不足しており、ヒョウがどのような状況におかれているのか適切な判断ができない状況にある。ヒョウが単独性で、人目を忍ぶ性質であることから、調査が難しいという点も研究があまり進んでこなかった理由の一つである。さらに、毛皮が美しいことから、密猟の対象にもなっており、個体数減少は無視できない問題となっている。

このような経緯から、本プロジェクトに着手した。早急にヒョウの現在おかれている状況を把握しなければ、ナイロビに生息しているヒョウは地域的な絶滅の危機に追い込まれてしまうのではないかという懸念が生じた。実際、都市開発は急激に進み、森が道路や住宅地に変貌してしまったり、もともとはアカシアの木が点在する広大な草原であった所が、宅地用に切り売りされ鉄条網が張りめぐらされたりという事態が起きている。

 

<研究方法について>

1.GPS首輪を用いた、遊動域調査

2.センサーカメラを用いた、個体数および個体識別調査

3.糞分析による食性調査および痕跡調査

4. 地域住民および公園職員などへの半構造的インタビュー(Semi-structured interview)

5.ナイロビ国立公園とその周辺の家畜被害状況、データ収集

予定していた上記5つの方法を用いて本プロジェクトを実施した。

 

<研究から得られた新たな知見、プロジェクトの結果>

調査以前は、公園南側に住むマサイと野生動物の軋轢の問題と、南部の急激な土地利用の変化がヒョウにとって問題であると予想していたが、実際はそれに加えて公園北部に広がる高級住宅街にも、様々な問題が含まれていることが本研究によって明らかになったことは、大きな成果であった。また、ヒョウは家畜に依存して生活していると考えていたが、現時点ではより野生動物を好んで食べていることがわったことも、特筆すべき成果であった。

さらに、本プロジェクトの結果から、今後この地域において、どのような保全活動が必要で、かつ、どの様に野生動物と地域住民と軋轢問題を軽減していくかということが重要となることが分かった。調査の過程から、現在の保全活動が地域住民の生活を犠牲にしたうえで成り立っていることを住民との対話や被害状況から強く感じた。野生動物と地域住民と軋轢の緩衝策の具体案の提示と実施、地域住民の生活水準の向上および、野生動物から直接利益を得るようなシステムの構築をしていかなければ、野生動物と地域住民の共存は実現が困難であると考えることができる。現在野生動物と地域住民と軋轢の緩衝策として補償金制度が実施されているが、支払われる補償金が、市場価格の半分程度であることや、補償金が支払われるまでに時間と労力が費やされることなどから、地域住民の不満は募る一方である。また、補償金を支払う側の資金調達にも無理があり、補償金制度を維持するのは現実的でないこと考えられる。そのため家畜が殺されることに対して補償金を支払うよりも、実際に家畜が襲われる件数を減らすという努力が必要でと言える。そのためにどういう活動をしていけばよいのか、どういう方法を用いればいいのかということが明確になってきた。

本プロジェクトは、調査対象地域に何を還元し、どう活動していくのかということを開眼させてくれた、「私」にとって「ヒョウの保全」にとって欠くことのできない重要な調査となった。現在、本プロジェクトの研究結果を実践的な活動とするために、また、日本の多くの方にアフリカの野生保全の現状と、人々が置かれている状況を知ってもらうために、NPO法人の設立にむけて活動を開始したところである。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0025
題目(Project Title)
ケニア、ナイロビ国立公園とその周辺の人為的景観下におけるヒョウ(Panthera Pardus)の保全生態学研究
Conservation Ecology of a Wild African Leopards (Panthera Pardus) in Urban Landscape in and around Nairobi National Par
代表者名(Representative)
山根 裕美 / Yumi Yamane
代表者所属(Organization)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University
助成金額(Grant Amount)
1,000,000
リンク(Link)
活動地域(Area)