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助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーA: 共同研究1  Category A: Joint Research (1) ]

ヴェトナム農村における住民参加型WebGISの構築と「コミュニティ課題の空間的見える化」に関する研究
The Study on Application of Participatory WebGIS to "Spatial Visualization of Community Problems" in Rural Vietnam

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

本プロジェクトはヴェトナム農村のコミュニティ課題を住民レベルで発見し、理解し、そして内面化できる「コミュニティ課題の空間的見える化」スキームの確立を行う。具体的には「空間的シームレス」を特徴とするWebGISを用いたマルチスケールでのコミュニティ課題を空間的に把握するシステムと、それを活用するための「空間リテラシー」の構築を中心に、(1) 空間リテラシーの構築訓練プログラムの実施、(2) コミュニティ課題把握のためにローカライズされたWebGISシステムの運用テスト、(3) 一定期間継続した住民参加型WebGISの運用、(4) WebGISの端末を用いたワークショップの開催、(5) ミクロスケールの「コミュニティ課題」のインターローカル性の学術的検討、からなるスキームを確立する。
本プロジェクトは対象地域を北部のゲアン省、中部のクアンナム省、南部のビンズオン省とし、ミクロスケールのコミュニティ課題がインターローカルには共通性があるか否かという点について検討を行うことで、共通の課題を持つ地域が協働で解決に向かうインターローカルなネットワーク構築に必要な根拠を科学的に提供することとなる。
 This project aims to establish the scheme on "Spatial visualization of community problems" for finding, understanding and internalizing community problems in rural Vietnam. This scheme includes followings;
(1) Developing "spatial literacy" training program for rural people.
(2) Developing and testing a localized WebGIS system for comprehending community problems.
(3) Continuously operating Participatory WebGIS system during a given period of time.
(4) Holding a workshop with the use of WebGIS.
(5) Discussing "inter-locality" on community problems.
 For discussing "inter-locality" on community problems, this project will set three research areas in Nghe An Province (Northern Vietnam), Quang Nam Province (Central Vietnam) and Binh Duong Province (Southern Vietnam). From the result of discussion, this project will contribute outcome, which is scientific foundation for collaborative "inter-local" network between regions that have common problems about communities.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

経済成長とともに都市化が進むベトナム農村では、自然環境の側面でも社会経済環境の側面でも様々なコミュニティ課題が生じている。これらの課題は複合的に絡み合いながら、ミクロスケール、マクロスケールの双方で発生しているが、「どこで」、「どのように」、「どの程度」の課題が生じているのかを住民レベルで空間的に把握する方法は確立していない。それを踏まえ、本プロジェクトはコミュニティの課題を住民レベルで発見し、理解し、そして内面化できる「コミュニティ課題の空間的見える化」スキームの確立を目指すことを目的とした。具体的にはWebGISを用いたマルチスケールでのコミュニティ課題を空間的に把握するシステムと、それを活用するための「空間リテラシー」を構築することとした。
 ベトナムでは住民参加型WebGISはいまだ確立していないが、その主因としては①貧弱な情報インフラに適合するWebGISの未構築、②WebGISやそのベースとなる地図などの空間ツールを使いこなす基本的能力(空間リテラシー)を住民が持ち合わせていない、などが挙げられる。特に後者についてはこれまで地図などの空間情報の秘匿性が高かったことが遠因としてある。空間情報の一般利用に向けた環境は整いつつあるが、依然として一般住民の「空間リテラシー」は極端に欠如している状況にある。したがって本プロジェクトでは、ローカライズしたWebGISシステムの構築というハード面もさることながら、空間リテラシー構築のためのトレーニングプログラムというソフト面の開発にも重きを置いてプロジェクトを進めた。
 ベトナム農村住民の空間リテラシーの構築に関しては、最初にその実態を把握するためアンケート調査を実施した。その結果、GISに係るコンピューターやデジタルマップのリテラシーのみならず、実際の生活空間と正確な地図とをマッチングさせるリテラシーが予想以上に欠落している現実が見られたため、図のようなスキームに基づくトレーニング開発を行った。地域住民は現実の生活空間であるコミュニティを認知して理解するためのメンタルマップ(認知地図)をもっている(図の点線の関係)。しかしながらそれは個々人固有のものであるためGISなど「正確な」地図の上で情報共有する際には、メンタルマップと「正確な」地図との間でマッチングできる必要があり、その部分のトレーニングのためにメンタルマップGISを開発した(図のAの矢印)。さらに「正確な」地図と現実の生活空間を結びつけるためには「正確な」地図を使いこなすための地図リテラシーが求められ、その部分のトレーニングをマップリーダー研修を参考に構築した(図のBの矢印)。
 このスキームを経て、クワンナム省ビンライン行政村、ビンクイ行政村、ソンビエン行政村およびトゥアティエンフエ省フールオン行政村において、WebGISを用いて具体的なコミュニティ課題を共有する試みを進めた。未利用の地域資源をどのように活用するかを考えるテーマや、子供たちによる地元の河川環境の理解促進を考えるテーマなどのワークショップを開催し、その結果をESRI社のStory Mapの仕組みを利用したWebGISを構築して、公開、共有をした。これらのワークショップではフィードバックシートや交流会を通じて参加者の意見を吸収することにつとめ、本プロジェクトの意義をコミュニティの現場から構築することを試みた。
 さらに本プロジェクトの学術的側面との批評を仰ぐため、ベトナムにおける2本の論文の公表をはじめ、最終段階には日本地理学会においてシンポジウムを開催して、メンバーによる本プロジェクトに関するプレゼンテーションを踏まえて、特に地理学の側面からの学術的位置づけの意義や課題についてコメンテーター、フロアからの意見を得ることができた。
 本プロジェクトの目的は、当初、ベトナム人にはWebGISという技術導入であると認識されていた。しかしワークショップなど現地での活動を重ねていく中で、住民自らがもつ地域に関する認識や情報を共有するツールとしての意義の確立が目的であることを最終的には理解してもらえた。参加した若手行政職員から地域の未来に対して、自分たちがどのようなことができるのか自分たちで考えていってみたいという積極的な意見を聞くに至り、全体としては未だ広がりに乏しいベトナムの農村における住民参加型地域づくりの萌芽の一端に寄与ができたと確信をした。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーA: 共同研究1  Category A: Joint Research (1)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0064
題目(Project Title)
ヴェトナム農村における住民参加型WebGISの構築と「コミュニティ課題の空間的見える化」に関する研究
The Study on Application of Participatory WebGIS to "Spatial Visualization of Community Problems" in Rural Vietnam
代表者名(Representative)
筒井 一伸 / Kazunobu Tsutsui
代表者所属(Organization)
鳥取大学地域学部
Faculty of Regional Sciences, Tottori University
助成金額(Grant Amount)
7,500,000
リンク(Link)
活動地域(Area)