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助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research) ]

アフリカの紛争後社会における地域経済の再建 ―住民の生計活動にみられる新たな秩序形成
Reconstruction of Regional Economy in African Post-conflict Society: New Order Building among Local Livelihoods

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

アフリカの紛争後社会については、これまで法政治的領域における新たな秩序形成こそが、長期化した紛争で失われた平和を創造し、平和を維持する国民国家を実現する方途となると理解されてきた。これに対し、本研究では、紛争によって多くの人びとが隣国の農村に逃れた事実に基づき、紛争国周辺農村における農民の経済活動にみられる秩序形成の実態を、日常的な生計活動から具体的に明らかにする。これにより、今日再編されつつある当該地域の国境横断的な地域経済再建を可能とする住民の自律的営為について検討を試みる。以上を通じて、本研究は、必ずしも上からの平和構築に対抗しえない紛争後社会における「下からの」平和構築のあり方について、新地平をもたらすことをめざしている。
 Much research has discussed that in a post-conflict African society, redefining the policy order and legal areas leads to nation building, which in turn ensures peacebuilding through peacemaking and peacekeeping. It is reported, however, that refugees living in border village areas of a post-conflict country have become the main actors contributing to the local economy. This study clarifies the new-order building of local economy from a micro-level viewpoint by focusing on the daily livelihoods of the local people, which explore the autonomous activities that help reconstruct cross-border economic networks. Thus, the study seeks a new horizon of the bottom-up approach to peacebuilding, which is not necessarily correlated to the top-down approach.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

本研究が対象とする課題とは、今日世界的に注目をあつめているアフリカにおける平和構築の再検討である。紛争が長期化したアフリカ社会における平和構築は喫緊の課題とされており、特に難民・避難民となって平和な他地域で生活を再建している人びとをいかに再統合し社会を再編するかが焦点とされる。先行研究では、政治学、国際関係学の分野から、紛争国を対象とした「上からの」平和構築研究が進められている。こうした研究では、紛争中期から終了後にかけて複数のフェーズに区切り、いわば脱歴史的にそれぞれの期間の政治・社会的特徴の事例集積が重ねられ、政策決定の場に反映されてきた。
しかしアフリカの紛争後社会は、実際はより複雑化している。このため、近年では地域研究や人類学などからの「下からの」平和構築へのアプローチも重視されるようになった。しかしながら「下からの」平和構築は、アイデンティティや社会関係の再編、伝統的な紛争解決方法等を取り上げ、紛争から逃れた人びとの日常的な生計活動そのものを真正面から取り上げることは少ない。そこで本研究では、申請者がこれまで明らかとしてきた紛争避難民の生計活動に関する研究成果を踏まえ、先行研究で取り上げることが少なかった、紛争以前からの人びとの生計活動を中心にした生活文化の動態を視野に入れてフィールドワークを実施し、「下からの」平和構築のあり方を提示することを目指した。
申請者が2000年以降現地調査を実施してきた南部アフリカのザンビアは、独立以降50年にわたり平和を保つてきた。一方同国では難民キャンプだけでなく国境の農村部でも、アンゴラをはじめ紛争の長期化した周辺国から多くの難民・避難民を受け入れ、当該社会に包摂してきた。ザンビア農村部を対象とした人類学的研究は、そこに住む紛争避難民がもともと移動性の高い焼畑農耕民であり、紛争による移動も彼らにとっては歴史的に繰り返してきた移動の一形態であるため、避難民らが迅速に「生活再建」すると指摘した(Hansen 1979:1991,Backwell 2002など)。それらは難民・紛争避難民を脱歴史的に捉える、西欧起源の難民保護の在り方へのアンチテーゼを示してきた(北川 1996)が、いずれの研究も移住後の社会関係の再構築に焦点をあてており、紛争前後の彼らの日常的な生計活動そのものの歴史的変化については検討の余地が残されている。
本研究の目的は、これまでのザンビアでの研究成果をふまえつつ、アンゴラに居住していた時期以降より今日まで時間軸を広げ、アンゴラ出自集回の生計活動の変化を解明していくことである。そのため、ザンビアだけでなくアンゴラでの彼らの生活を、現地調査と関連機関における文献調査を実施して明らかにする。また、文献資料や会合等を通じてアンゴラ出自集団の生計変化の特徴を理解することを目指すこととした。調査は以下の3点を中心におこなった。
 I これまで調査を実施してきたザンビア農村での生計活動の変化
 Ⅱ 他のアフリカ諸国での難民の生計活動:Iの結果の特徴をアフリカ紛争後社会の事例と相対的に捉えるため、過去に調査を実施したその他の国の難民の生計活動を明らかにする。
 Ⅲ ザンビアの難民政策等に関する情報収集と成果の還元:IとⅡを総合して、ステークホルダーが現状を多角的に捉えていく基盤づくりに貢献する。他地域で移民・難民研究を行つている研究者らと情報交換をおこなうほか様々な媒体を用いて研究成果を報告する。そのため、以下の方法でIからⅢの調査をおこなうことを計画した。Iについては、1)モノの流入と地域経済の変化、2)人口流出期の村の生計経済の均衡:特に人口が流出した世帯の耕地利用ついて、GPS等による実測調査や農作物生産、食事等の調査をおこない、人口流出前後での村内の生計経済の変化を分析する。Ⅱについては、アフリカや欧米各地の関連機関で資料収集し、分析する。またケニアとナミビアでは難民キヤンプとその周辺地域の調査について、すでにネットワークのあるローカルコンタクトを通じて内諾を得ており、重点的に生計に関する調査を実施する。Ⅲ については、1)大学やUNHCR等すでにネットワークを構築している関係省庁およびNGOにおいて成果を報告した上で情報収集、意見交換等をおこない、今後地域社会でおこる変化等の展望を共有する。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0126
題目(Project Title)
アフリカの紛争後社会における地域経済の再建 ―住民の生計活動にみられる新たな秩序形成
Reconstruction of Regional Economy in African Post-conflict Society: New Order Building among Local Livelihoods
代表者名(Representative)
村尾るみこ / Rumiko Murao
代表者所属(Organization)
立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科
助成金額(Grant Amount)
1,500,000
リンク(Link)
活動地域(Area)