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助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2) ]

ネパールの都市における、産後女性の健康、生活の質改善をめざした、持続可能な水利用管理方法の開発
Development of Sustainable Water Management System for Improving Health and Quality of Life among Postnatal Women Living in Urban Nepal

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

安全な水供給は、生命・健康の維持において必須であるとともに、社会開発、とりわけ女性の社会包摂を促進するうえで重要な要素である。十分な水量と育児時間を必要とする授乳期の産後女性にとって、給水不足が及ぼす心身の健康、生活の質の影響については、これまであまり明らかにされてこなかった。人口増加による慢性的水不足、水源枯渇が深刻なネパール、カトマンズの産後女性を対象に、家庭用水の利用状況と健康状態、生活の質との関連を検証する。同時に雨水の涵養や家庭用排水の再利用による、水源確保の方法を保健セクターと水セクターの視点から検討し、持続可能で女性が主体的に実施できる効率的な水管理方法を開発する。社会地位が低い女性が、水ガバナンスのあり方について、政策策定者や水道事業機関と議論を交わすことで、女性の意志決定が反映された公共政策つくりの布石となることをめざす。給水分野の開発援助として、これまでの上水道整備や水源開発を基盤としたインフラ整備から脱却し、住民が主体となり持続可能かつエネルギー消費の少ない水管理方法という新たな視点によるアプローチ方法を確立していく。
 Access to safe water supply is fundamental to promoting our health and meeting social inclusion and social development objectives. However, it is little known that the association between deficient water supply and health and quality of life in women who play primary role in water management. Kathmandu, the capital city of Nepal, has been facing chronic water deficiency and depletion of water source due to rapid population growth and urbanization. This project aims to; (1) examine the association between domestic water consumption and health and quality of life among lactating women living in Kathmandu, and (2) develop sustainable and efficient water management system through teaching the way of domestic rainwater harvesting and recycling water. Overall goals of this project are that to elicit enhanced women's participation into water governance, and construct new approach integration of public health sector and engineering sector which shifts from constructing large infrastructures to developing sustainable and low energy water management system with community participation.

実施報告書・概要

Summary of Final Report


世界人口の半数が都市に住む現在、世界の最貧国の一つであるネパールにおいても、都市人口が急速に増加している。都市部への急激な人口流入にともない、住宅開発のための伝統的治水場の埋め立て、水資源の枯渇が進み、さらに老朽化した水道管からの漏水により、首都があるカトマンズ盆地では深刻な水不足が起こっている。ネパール政府はこの課題に対し、2000年より大型給水事業(メラムチ給水事業)を開始し、わが国を中心に国際支援を受けているが、未だ事業完了の目途がたたず、住民の水不足に対する不満は増大している。給水不足は、水汲み労働などの水管理を主として行う女性の社会参加の機会を損失し、女性の生活の質(QOL)や健康状態の低下につながると示唆される。特に授乳や新生児のケアのために十分な休息や育児時間を必要とする産後女性は、その影響を最も受けやすい集団と考え、本研究では、産後女性の水利用と心身の健康、QOLとの関連について検証することを第1の目的とした。
カトマンズ市内にある大学病院で出産した産後女性300名を対象に、構成的質問紙を用いた聞き取り調査を実施した(調査期間:乾季にあたる2~4月)。対象者の水利用実態は、77%の家庭で上水道の接続があったが、平均給水時間は6.5時間/週、12.7%の家庭で1日1人当たりの水消費量が20リットル(WHOガイドライン上、健康維持上最低限必要とされる量)未満であった。さらに産後1か月後に対象者を追跡した結果、60%以上の女性が「給水不足により十分な育児ができない」と回答した。給水不足によるストレスは、産後うつ、腰痛、新生児の下痢罹患といった心身の健康との関連はなかったが、QOL低下との関連がみられた。安全な水供給は、女性が快適に育児を行う環境つくりにおいて、重要であることが示唆された。
女性を取り巻く水環境改善には、大型インフラ整備に依存するだけではなく、住民参加型の自立可能、持続可能な給水システムの構築を検討していくことが求められる。そこで雨季(6~8月)に平均300㎜の降雨があるカトマンズ盆地の特性を活かせないかと考え、雨水利用の促進など、代替水利用に関する啓発活動を行うことを第2の目的とした。雨水利用の可能性については、カトマンズ盆地の地下水への雨水涵養量の推定、家庭レベルでの雨水利用可能量の推計および雨水の水質の分析を行った。盆地216地点の土壌調査資料を用い、涵養量の地理分布を示した結果、人口集中の多い中心部は周辺部と比較し、土壌への雨水浸透量が少ないことが明らかとなった。雨水貯水タンク設置し、雨季(7~9月)2か月間の貯水量を測定した結果、家庭レベルでは年間136,000リットルの貯水が可能であると推計された。盆地住民の多くが依存している地下水には、鉄、アンモニア、ヒ素、さらに細菌の含有がみられている。貯水した雨水には、鉄等の化学物質ほとんど検出されなかったが、一般細菌、大腸菌が検出された。鳥の糞尿、空気中の埃が屋根への付着が要因と考えられる。このことから雨水は飲料水、手洗いへの利用には、適切な水処理を必要とするが、洗濯や清掃に適用が期待でき給水不足の緩和に有用と考えられる。
水管理を行う女性が、雨水等の代替水利用に関し、どの程度の知識、態度、実践があるのかを、無作為に抽出した盆地内12地区に在住する女性370名を対象に、質問紙を用いた聞き取り調査を実施した。雨水を実際に利用している人は37.6%、家庭排水の再利用をしている人は3.5%であった。また代替水利用の知識や実践は、給水時間が短い地区に住む女性ほどその傾向は高く、盆地内での地区格差がみられた。限りある水資源保持のためには、盆地全体で代替水利用の促進を啓発していくことが求められる。また雨水を利用しない理由として、「貯水設備の設置が難しそう」「場所がない」「コストがかかる」「安全でない」という意見が挙げられた。本研究で実証された雨水貯水に掛かる費用、安全性や水量などのデータを用い、住民の理解が得られる啓発活動を続けていくべきと考えられる。
本研究では持続的水管理システムの開発として、雨水利用による安定、安全な水環境整備を提案したが、水管理を行う女性の代替水利用の態度や実践の向上を図るための効果的な方法に関する検証が行えなかった。代替水利用が女性の健康やQOL向上にどのように寄与するのかも含め、検討が必要である。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0164
題目(Project Title)
ネパールの都市における、産後女性の健康、生活の質改善をめざした、持続可能な水利用管理方法の開発
Development of Sustainable Water Management System for Improving Health and Quality of Life among Postnatal Women Living in Urban Nepal
代表者名(Representative)
相原 洋子 / Yoko Aihara
代表者所属(Organization)
神戸学院大学
The Faculty of Rehabilitation, Kobe Gakuin University
助成金額(Grant Amount)
2,300,000
リンク(Link)
活動地域(Area)