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助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーA: 共同研究1  Category A: Joint Research (1) ]

ベトナムにおける教育格差改善のための小・中学校改革推進方策に関する研究
Research into Strategies for Primary and Lower Secondary School Reform to Improve Equality in Education

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

本プロジェクトは、1986年にドイモイを開始して以降、成長著しいベトナムを対象とする。ドイモイによる経済成長は、都市部を中心とする人々の生活水準を向上したが、同時に社会・経済上の格差をもたらすことにもつながっている。農村や少数民族地域での社会・経済発展上の課題は多く、学校教育もその主要な問題の一つである。とくに、単に学校に入学させるだけでなく、いかに質の高い教育機会を継続的にすべての子どもに対して保障するかは喫緊の課題である。本研究では、べトナムでの小・中学校改革の推進方策について明らかにし、実践的な政策提言を行うことを目的とする。研究課題は、(1) ベトナムの小・中学校における教育実践改革、(2) 改革を実施するためのマネジメント、(3) 地域社会による学校改革支援の3点を推進する要因の分析である。研究プロジェクトの実施にあたり、べトナムの研究者と実践家が共同参加し、この学校改革の分野で「学びの共同体」を提唱し、研究・実践の両面で先駆的な貢献を果たしてきた日本の研究者と実践者も参加する。
 In Vietnam, which is the target of this project, has been growing her economy since the commencement of Doi Moi, the market-oriented economic reform, in 1986. Although the economic growth by introduction of Doi Moi certainly improved the living standards of people in the urban areas, it also expanded the gap between haves and have-nots in socio-economic terms. In the rural areas or ethnic minority areas, there have been many problems in their social and economic development and schooling education is one of those serious issues. Particularly, it is crucial and urgent how to assure not only just the school enrolment rates, but also classroom teaching and learning process with high quality for every single child.
 The present study is to discuss strategies for primary and lower secondary school reform in Vietnam and to draw policy proposals. To be concrete, the research task is to clarify factors to promote (1) reform of pedagogical practices in Vietnamese primary and lower secondary schools; (2) management for school reform at both levels and (3) supports by local societies for school reform. The research team consists of researchers and practitioners in both Vietnam and Japan, based on their past collaboration since 2006. They have been conducting both practices and researches into a school reform approach, called as 'lesson study for learning community', which attracts strong attention by educators and scholars both in Japan and abroad.

実施報告書・概要

Summary of Final Report


1.1.   本プロジェクトの課題

東南アジアでは、21世紀型の知識集約型経済を志向し、分権化や市場経済推進が行われているが、その一方で経済的・社会的格差が広がりがちである。学校教育もまた、例外ではない。学校教育における格差は、第一に就学の機会の格差、第二に教育活動の質という点で発生する。東南アジア諸国では、第一の課題は相当解決しているが、第二が依然として深刻である。

多くの東南アジア諸国では一斉型授業が支配的であり、与えられた命令を忠実に遂行する労働者を育成したが、これからの知識基盤社会には合致しない。東南アジア諸国も、こうした実践や硬直的な学校のあり方から脱皮を図っている。だが実際にはこの脱皮は困難である。個々の家庭が教育産業に出費し補っているが、社会経済的に優位な層のみに限られている。ゆえに、経済資本・教育資本の格差は、拡大している。この状況は、社会正義という点で問題であり、また国家経済全体から見ても、労働力の変換を阻害している。公教育において社会・経済的背景によらず、個々人に質の高い教育を保証することで、協調的で創造的な人材育成を行うことが重要である。

そこで本プロジェクトは、教育格差を克服するための公教育改革のパイロット作りに必要な条件を明確化することにした。事例としてベトナムを取り上げる。本プロジェクトのメンバーは、5年以上の交流を通して、中央レベルの研究者や政策策定者、地方教育行政関係者、学校関係者と実践を通じて知見を共有してきた。また、少数民族の教育問題について、複数のNGOとの協同も始まりつつあり、少数民族の学校並びに村落についても、本プロジェクトの調査対象とした。


1.2.   研究の方法

第一に、授業実践改善のために、直接に学校を訪問し、教師たちと授業を観察・省察しあうアクションリサーチを行った。その際、観察する授業の中で、子どもがどのような点で困難を抱えていたか、学びが途切れたか、という点に焦点を当て、その要因を省察し合った。加えて、事例をビデオにて収録し、問題点の分析を、授業分析に関する日本の第一人者である村瀬を中心に、談話分析という観点からも行った。

第二に、学校改革実践について、教師、学校幹部、地方教育行政関係者に対する面接調査を合計41名に対して行った。また、質問票を作成し、サーベイを849名に対して行った。第一年次の面接調査では、どのような要因が存在するかを、自由に面接者から引き出すことを目的として行った。面接結果をまとめた後、第二年次に、学校効果論、あるいは効果的学校論などの学校改革に関する国際的な先行研究と照らし合わせ、また日本における「学びの共同体」の識者からの見解も参考にしつつ、質問票を作成し、サーベイを実施した。そして第三に、学校改革に関する地域社会や親に対する面接調査を合計15名に対して行った。また、質問票を作成し、サーベイを102名に対して実施した。第一年次の面接調査では、どのような要因が存在するかを、自由に面接者から引き出すことを目的として行ない、面接結果をまとめ、課題点を明らかにした。第二年次には、先述の面接調査結果と、学校改革と地域社会参加に関する国際的な先行研究とを照らし合わせ、また日本における「学びの共同体」の識者からの見解も参考にしながら、質問票を作成し、サーベイを行なった。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーA: 共同研究1  Category A: Joint Research (1)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0199
題目(Project Title)
ベトナムにおける教育格差改善のための小・中学校改革推進方策に関する研究
Research into Strategies for Primary and Lower Secondary School Reform to Improve Equality in Education
代表者名(Representative)
齊藤 英介 / Eisuke Saito
代表者所属(Organization)
シンガポール国立教育学院
National Institute of Education, Singapore
助成金額(Grant Amount)
6,200,000
リンク(Link)
活動地域(Area)