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助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research) ]

冷戦下の日本・アジア・アメリカにおける社会民主主義の連鎖と相関 ―民主社会主義・米国リベラル・フィランソロピー
Social Democracy in International History: Cold War, Philanthropy and Democratic Socialism

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

グローバルな資本主義の展開は国家間あるいは国民国家内で経済格差を拡大させてきた。そういった流れに対し「グローバルな社会民主主義」の必要性が近年議論されている。しかし、これまで社会民主主義は福祉国家をもたらす思想として一国史の枠組みの中で議論され、国際関係に関する理念として考察されることは少なかった。社会民主主義の一形態である「民主社会主義」を事例に、冷戦下の日本・アジア・アメリカにおける社会民主主義の国際的連関を解明することが本研究の目的である。具体的には、1950~60年代における、日本の民主社会主義者、米国のリベラル、フィランソロピー、それら第三者のアジア研究・政策をめぐる交流と協働を、関係国の資料を渉猟することによって検証する。国際関係史でこれまで重視されてこなかった米国民間財団の資料を活用するだけでなく、関係者へのインタビューも行う。冷戦下の「インターナショナルな社会民主主義」を考察することで、現在模索されている「グローバルな社会民主主義」を考えるための一つの参照点を提示したい。また、アジア太平洋地域のあり方や日米関係・日本アジア関係についての議論に貢献することにもなるだろう。
 This project will examine how social demcracy in Asia, Japan and the US interacted with each other in the cold war era. My research will be focused on Japanese democratic socialists and American philanthropists and liberals, both of whom promoted Asian studies in Asia-Pacific. Analising "international social democracy" in the cold war years will contribute to current discussion on "global social democracy".

実施報告書・概要

Summary of Final Report


課題をとりあげた経緯
 近年のグローバル資本主義や新自由主義の展開に対し、グローバル社会民主主義の構築が世界的な課題となっている。一方で、社会民主主義は、酒井哲哉が指摘するように、これまで国家論に関わる概念とされ国際関係思想とは無縁とされてきた。社会民主主義がもたらした福祉国家は、所得再分配によって階級闘争を防止して国民的連帯をもたらすものであり、ソビエト共産圏に対抗するものとして戦後の西側陣営に広く共有されたプロジェクトであった。そして、それは、新川敏光が述べるように、国内のフォーディズム的蓄積体制だけでなく「埋め込まれた自由主義」ともいうべき国際経済秩序によって支えられてきた。第二次世界大戦後の自由主義体制は、自由主義を標榜しつつも、国際機構によって資本の国際移動が規制された「管理された自由主義」であった。そういった国際的枠組みは、国際経済を国際機関やテクノクラートによって制御させようとした点で社会民主主義的であるといえよう。つまり、戦後の国際的な政治経済秩序を検証するうえで、社会民主主義という概念は無視できないのである。
 申請者は、戦時期の植民政策学者で戦後アジア研究の推進者となった経済学者・板垣與一(1908 - 2003)の1940年代における思想と行動に焦点をあてた博士論文を、オーストラリア国立大学に提出した。博士論文の研究の過程で、東南アジア軍政から復員した板垣が戦後に「民主社会主義」を主唱したために、1950年代に入ってアメリカ反共リベラルの注目・支援を受けたことを発見し、社会民主主義の反共形態ともいうべき民主社会主義を戦後日米関係の視点から検証する必要を自覚した。また、申請者の博士論文を、「興味深い主題」を対象として「示唆に富んでいる」、「出版に値する」と高く評価した審査員(ヴィクター コシュマン・コーネル大学教授やローラ ハイン・ノースウェスタン大学教授)から、戦時期の知識人と戦後の民主社会主義の連関について、さらなる研究が必要との指摘を受けた。そのような経緯から、分析対象を拡大し戦間期以降の日本の社民主義者によるアジア関与とアメリカのリベラルによる戦後日本への介入を立体的に描き出す作業の重要性を認識した。

研究の課題
 申請者は、板垣與一ら経済学者の戦時期と敗戦直後における東南アジアへの関わりについて研究を行ってきた。引き続き社会科学者のアジア関与を主題としつつ、今後は社会民主主義の一形態としての民主社会主義とフィランソロピーに焦点をあてる。そして、分析対象を時間的にも空間的にも拡大する。民主社会主義は社会民主主義から階級闘争などのマルクス・レーニン主義的性格を排除し、議会制民主主義による社会改良を重視するものである。日本において民主社会主義は1960年に社会党右派を源流に結成された民社党の中心的思想であった。その理念は、民社協会に継承され、旧同盟系労組の勢力を通じて現在の民主党に影響力を及ぼしている。
 民主社会主義を議論するにあたり、研究の時期区分を冷戦・55年体制確立前後から60年代末とする。この時期は、先進資本主義諸国が経済成長を遂げ福祉国家を実現する「社会民主主義の黄金時代」にあたる。研究の地理的範囲については、日本・アジアだけでなくアメリカを加え、冷戦期国際秩序におけるアメリカの覇権を考察の視野に入れる。また、経済学者だけでなく猪木正道ら民主社会主義を主唱した政治学者も分析の対象とする。具体的に検討する事例は以下:1)ロックフェラー財団の助成による板垣與一の訪米(1957-58)とそれを機に始まった米国リベラル知識人との交流:2)1960年代前半におけるフォード財団と猪木正道らによる京都大学東南アジア研究センター設置の動き、の二点である。
 アメリカ版社会民主主義ともいうべきニューディールを戦後に世界的規模で推進しようとした米国リベラル・民間財団がどのような意図と期待をもって戦後日本の文化政治に介入しようとし、東南アジア進出を提唱した日本の民主社会主義者・社会科学者がそれをどのように受け止めたか、そしてそれらの間でみられた作用・反作用の帰結を議論する。国際志向が高く東南アジアへ強い関心を持つ日本の民主社会主義者とアメリカのリベラル、そしてフィランソロピーを事例に冷戦下における社会民主主義の連鎖と相関について検証することが本研究の課題である。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0351
題目(Project Title)
冷戦下の日本・アジア・アメリカにおける社会民主主義の連鎖と相関 ―民主社会主義・米国リベラル・フィランソロピー
Social Democracy in International History: Cold War, Philanthropy and Democratic Socialism
代表者名(Representative)
辛島 理人 / Masato Karashima
代表者所属(Organization)
京都大学文学部
Faculty of Letters, Kyoto University
助成金額(Grant Amount)
1,300,000
リンク(Link)
活動地域(Area)