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助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2) ]

ラオス北部におけるテナガエビの資源管理の実践 ―住民参加によるテナガエビ資源回復への試み
Stock Management Practices for the Indigenous Shrimp Macrobrachium Yui in Northern Laos: An Attempt on Recovery of the Shrimp Stock with Local Community Participation

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

ラオス北部には、大型の在来テナガエビが生息しており、流域住民の主要な現金収入源となっている。ところが近年、乱獲や流域環境の悪化により、漁獲量が大幅に減少しており、流域住民の間で大きな問題となっている。これまで、その問題を解決すべく様々な資源増殖手法が模索されてきたが成功には至っていない。近年我々の調査によって、本種は成長に応じて本流河川森林小河川洞窟河川間を回遊し、8月から9月にかけて洞窟河川で繁殖することが明らかになった。この性質を用いて漁獲規制を中心とした資源管理手法を開発し、ルアンプラバン県で実証試験の準備を行っている。しかし、仮に漁獲規制してもテナガエビを育む生息環境が劣悪であれば、テナガエビ資源の回復は見込めない。本研究課題では、定期定点サンプリングにより、資源動態を把握し、漁獲規制による資源管理手法の有効性を評価するとともに、テナガエビの生息環境として重要な要因を解明し、既存の資源管理策にテナガエビの生息環境保全案を組み込むことで、資源管理システムの充実をはかる。さらに、住民主導の資源モニタリング及び評価システムを構築し、持続可能なテナガエビの資源利用と減少したテナガエビ資源の回復をめざす。
 The indigenous shrimp Macrobrachium yui which can be found in northern Laos is an important source of income for the rural people. However, shrimp catch has decreased year by year due to overfishing and deterioration of aquatic environments by human activities. This has become a big problem in the villages surrounding the shrimp's habitat. Although various measures on the shrimp stock enhancement have been attempted so far in order to solve the problem, it has not been successful yet.
 Our resent field research showed that the shrimp migrates among habitats of main river, forest stream and cave stream during its lifespan and spawns in the inner part of the cave stream during August to September. Based on the ecological characteristics, the stock management system of the shrimp with a focus on fishery regulations was developed. We have just prepared for its pilot study in Luang-Prabang province, Laos. However, even if the fishery regulations are enacted, we are not able to expect recovery of the shrimp stock if the shrimp habitats are degraded.
 In this project, we will first carry out the monitoring on dynamics of the shrimp stock with monthly sampling for evaluation of the effectiveness of the fishery regulations. Subsequently, we will elucidate important habitat factors for the shrimp in order to incorporate conservation measures of the shrimp habitat into the existing stock management system. These research activities are essential for us to make the existing stock management system of the shrimp more complete.
 After completion of this project, the shrimp stock management should be conducted at the initiative of the local government and villagers. We will therefore develop monitoring and evaluation systems on the shrimp stock suitable for the rural people. These systems are likely to contribute toward realizing recovery and sustainable use of the shrimp stock.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

トムヤンクンに使われる“エビ”は本来“テナガエビ”であるように東南アジア地域においてテナガエビは重要な水産資源である。ラオス人民民主共和国(以下、ラオス)においても人気のある食材であり、北部地域ではテナガエビ漁が盛んに行われ、流域住民の貴重な現金収入源となっている。しかし、近年多くの漁場で漁獲量が大幅に減少する傾向が見られ、現地では大きな問題となっている。そこで、我々は漁獲対象となっているテナガエビMacrobrachium yuiの生態的特性を解明することにより、資源回復策を模索してきた。その結果、洞窟河川はテナガエビM.yuiの産卵・抱卵・初期生活史の場であり、その抱卵のピークは8月であることが明らかとなった。そこで、洞窟河川における8月のテナガエビ漁を禁漁とすることによってテナガエビ資源を回復させる試みを現地住民、行政及び研究機関が一体となって検討し、資源管理活動を統括する漁業委員会を立ち上げ2011年8月から漁獲規制によるテナガエビの資源管理を開始した。

本課題では、1)その漁獲規制後の漁獲量及び個体群構造の変化を明らかにし、漁獲規制の効果を評価すること、2)漁獲規制の効果を上げるために、テナガエビの生息環境要因を明らかにした上で、テナガエビの生息環境保全策についても検討すること、3)村の社会経済動向を把握した上でテナガエビ漁の役割を明らかにし、漁業委員会の正式認可を目指し資源管理体制を整えることを目的としている。

漁獲規制の効果を評価するために、漁獲規制前と後の流下幼生の出現数を比較し、1998年から2011年までの漁獲データをもとに漁獲予測モデルをつくり、漁獲規制開始後の2012年-2014年の予測値と実測値との比較から漁獲の増減を評価した。さらに、2007年-2014年までの定期定点サンプリング及び室内実験データからテナガエビの資源解析を行い、個体群内に占める成体と稚エビの割合の変化から個体群構造に対する漁獲規制の効果を評価した。その結果、漁獲規制施行後の漁獲量において実測値は推定値よりも25%ほど高い値を示し、また、個体群の年齢構成が成体よりに変化していることが示された。2011年から始まった漁獲規制は個体群構造を安定化させ、漁獲量を増加させる効果があるものと評価された。

テナガエビを中心とした水域内の生物相互間作用を明らかにするために、4つの水域で水生生物を採集し炭素-窒素同位体比分析及び胃内容物の観察を行った。また、シュノーケリングによってテナガエビを観察し、生息地点と調査区間全体の環境特性を比較することでテナガエビの微生息環境要因を明らかにした。その結果、本テナガエビは捕食-被食関係を通じてXuang川流域の生態系構造を支える重要な種の一つであると考えられた。そして、微生息環境要因として、底質内のこぶし大の石の存在と水深の深さが重要であった。2007年-2013年までの定点モニタリングの結果、テナガエビの生物量は川幅及び底質の砂の割合と負の関係にあることが、逆に水深及び底質のこぶし大の石の割合と正の関係にあることが示された。テナガエビの乱獲は食物網を通じて魚類など他の水産生物にも大きな影響を与えるとともに、河床の人為的環境改変や陸域からの過剰な土砂供給はテナガエビの生息域を減少させる結果につながると考えられた。

本課題によって、テナガエビは水域生態系を介して現地住民の家計を下支えしていることが確認され、テナガエビ資源の重要性が示唆された。2011年8月より始まった漁獲規制によるテナガエビの資源管理手法に漁獲量及び個体群構造に一定の効果が見られたため、10月10日の現地会義においてテナガエビ漁業委員会は住民及び郡行政府からのコンセンサスを得て正式に設立され、今後漁獲規制は継続されることになった。また、テナガエビの生息環境要因に関するデータにもとづき、1)「洞窟河川における採掘及び取水禁止」、2)「本流河川及び森林河川の河床環境・水位を激変させる大規模な違法開発の禁止」、そして3)「河畔林の保全」について議論され、漁業規則法にこれらテナガエビの生息環境保全策に関する条項を盛り込むことも決議された。このように今後は漁業委員会を通じて現地住民が主体的に資源管理活動を行うようになる。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0529
題目(Project Title)
ラオス北部におけるテナガエビの資源管理の実践 ―住民参加によるテナガエビ資源回復への試み
Stock Management Practices for the Indigenous Shrimp Macrobrachium Yui in Northern Laos: An Attempt on Recovery of the Shrimp Stock with Local Community Participation
代表者名(Representative)
アルン・クントンバン / Aloun Kounthongbang
代表者所属(Organization)
ラオス水生生物資源研究センター
Living Aquatic Resources Research Center (LARReC), Aquaculture Unit
助成金額(Grant Amount)
4,900,000
リンク(Link)
活動地域(Area)