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助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2) ]

地域における犯罪者の再犯防止プログラムの構築に関する研究 ―犯罪加害者家族支援によるアプローチ
Joint Research for Developing a System to Prevent Repeating Crime Activities by Convicted Criminals in Japan

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

NPO法人World Open Heartは、2008年からこれまで日本において支援する機関が存在しなかった犯罪加害者家族を支援する活動を行っている。先行研究によれば、犯罪加害者の「家族」は、犯罪者が更生するにあたって重要な役割を果たしていることが実証されている。犯罪者が更生しやすい環境を整えるためにもまず、その家族を支援する仕組みが必要である。本研究においては、犯罪加害者家族支援の再犯防止効果を検証し、事件発生から犯罪者が社会復帰するまでに関わるさまざまな専門家、活動家が協力し、事件発生から犯罪者が社会復帰するまでの包括的・継続的な再犯防止プログラムを構築することを目的とする。
  World Open Heart (WOH) is a non-profit organization for supporting social minorities. It is working since 2008. WOH's activities specialize in supporting for family members of criminals. There were no such organizations doing these activities in Japan. Family members of convicted criminals had been forgotten victims for a long time in our country.
 According to different researches, conducted in the United States and England on prisoner's families, "family" takes important roles for recovery of the criminals. Therefore we need special supporting system for family members of criminals. In this research, we would like to show "families functions" in recovery of criminals and find community resources for assisting the families. We would like to establish networking system for preventing repeating crime activities by convicted criminals in Japan.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

1.研究課題
 本研究では、日本において、2008年に始まったばかりの「加害者家族支援」の社会的意義について明らかにすることを目的とする。特に、海外の先行研究で注目されている家族支援の再犯防止効果について実証することを試みる。
 罪を犯した人々に対して、国選弁護人制度や矯正施設、保護観察といった制度が敷かれているのに対して、犯罪被害者は、刑事手続きにおいても蚊帳の外に置かれ、必要な情報も与えられず、損害の補償や傷ついた心のケアを受けられる仕組みが欠けていた。そこで、2004年、日本においても犯罪被害者等基本法が制定されたことによって、被害者やその家族の権利が明文化され、全国的な支援体制が整備されるようになった。こうした「加害者の更生」と「被害者の回復」という犯罪が起きた後に行われるべき大きな社会的課題の影に隠れて、見落とされてきた問題が「加害者家族」への支援である。
 従来、犯罪者の家族支援の重要性は、受刑者の更生の支え手という観点から主に論じられてきた傾向にある。受刑者の出所後の受け皿として、家族が適切な役割を果たしうるという研究は、受刑者への調査やその家族への調査によって実証されてきた。(小柳武「犯罪抑止要因としての家族」犯罪社会学研究第14号(1989)23-41頁.佐藤典子「受刑者の受け入れ環境の実態と問題点」犯罪社会学研究14号(1989)4-22頁.)
 受刑者との外部交通(面会や文通)に焦点を当て、家族との関わりが受刑者に与える影響に関する研究はさまざまな国において行われていたが、このような受刑者の延長線上に存在する家族像は、NPO法人WorldOpenHeartに支援を求めている加害者家族の実態とは必ずしも一致するわけではなく、家族が社会において、どのような困難に直面しているかという加害者家族の実態は明らかとはされてこなかった。
 本研究は、再犯防止に関して、従来のアプローチとは逆に、「加害者家族」を主体として、家族を支援する過程を通じて、家族の回復が加害者の更生に与える影響について調査を行うものである。
2.研究方法
 国内で唯一の加害者家族支援団体であるNPO法人WorldOpenHeart(以下WOHと略す)に繋がった相談者のなかで、了解が得られたケースについて、事件発生直後から、刑事手続きの各段階に沿って、継続的に家族を支援するとともに、家族支援が与える加害者本人への調査を行った。加害者本人へのアプローチは、家族への同行支援や直接の文通、面会、また、弁護人を介して行った。
 さらに、2008年12月から開始したWOHにおける加害者家族の相談データ(252人)を基に、一定の加害者家族の傾向として、生活状況や加害者本人との関係、相談の主訴や事件後の生活の変化などについて明らかとしている。
3.再犯防止効果の実証
 本プロジェクトによって得られた結果によれば、家族関係の修復は、罪を犯した人々の更生の過程で不可欠な要素であり、家族の存在が更生に与える影響は大きいといえることが明らかとなった。しかし、家族が、罪を犯した人々の更生の支え手となりうるためには、事件によって傷ついた家族のケアと、更生の支え手となるべく家族への「適切な支援」が行われなければならない。 事件に巻き込まれた家族は、捜査機関からの圧力や報道被害、近隣住民からの嫌がらせなど、重大な人権侵害を受けることもある。さらに、事件による転居や失業、示談金や損害賠償の用意など、家族が背負う経済的負担は大きく、就労や転居といった生活面での支援が必要となる。更生の支え手としての援助に至るまでにはまず、家族が安全に日常生活を送ることができるようになるための支援を要する。そして、家族の存在が事件にどのような影響を与えているのか、事件そのものの分析によって、加害者本人へのアプローチを検討することになる。弁護人や心理の専門家、ソーシャルワーカーなど多分野の専門家による総合的支援が必要であり、事件発生直後から刑務所出所後までの家族と加害者本人への長期的・継続的な伴走型支援によって、加害者が同じ過ちを繰り返さない状況が実現されている。阿部恭子編著・草場裕之監修『加害者家族支援の理論と実践―家族の回復と加害者の更生に向けて―』として研究成果をまとめている。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0652
題目(Project Title)
地域における犯罪者の再犯防止プログラムの構築に関する研究 ―犯罪加害者家族支援によるアプローチ
Joint Research for Developing a System to Prevent Repeating Crime Activities by Convicted Criminals in Japan
代表者名(Representative)
阿部 恭子 / Kyoko Abe
代表者所属(Organization)
(特活)World Open Heart
World Open Heart
助成金額(Grant Amount)
5,000,000
リンク(Link)
活動地域(Area)