助成対象詳細 | 公益財団法人トヨタ財団

公益財団法人トヨタ財団

助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research) ]

戦後沖縄/日本における沖縄戦・米軍基地と開発をめぐる歴史学的検討
Historiographical Examination on the Development in Okinawa and Japan after World War II, Related to "the Battle of Okinawa" and "U.S. Military Bases"

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

本研究は、戦後沖縄/日本における重要な争点となってきた「沖縄戦」と「米軍基地」をめぐる諸問題の形成過程について、沖縄と本土を共通の俎上に乗せ、「開発」を媒介項として明らかにする。「沖縄戦」については、南部戦跡の観光地化など慰霊観光が「観光開発」を進める上で重要な役割を担ってきた。そして、「米軍基地」については、基地存続を前提として基地自体の建設や経済振興などの「経済開発」が行われてきた。戦後沖縄における「開発」は、「沖縄戦」と「米軍基地」と密接に結びつく形で行われてきた。そして、そこには戦後初期から本土側の関与が存在していた。先行研究は、本土や米国側の影響を前提としつつも、あくまで沖縄側の分析が中心であるため、沖縄と本土との乖離の歴史過程を明らかにするには限界があった。さらには、沖縄側の分析についても運動史に重点がおかれ、革新側とみなされる組織や人物への分析は活発な一方、「開発」のような保守側とみなされる側面は十分に分析がなされてこなかった。以上をふまえ、本研究は「観光開発」と「経済開発」の歴史過程を中心に、戦後沖縄/日本における沖縄戦・米軍基地と開発をめぐる歴史学的検討を行う。
 After World War II, Problems on "the Battle of Okinawa" "U.S. military bases" between Okinawa and Japan (the mainland) has become a significant issue. This research considers attention to the "development" of both Okinawa and the mainland, to clarify the process of their formation.
 About "the Battle of Okinawa", it was important in advancing the "tourism development", was "memorial tourism," such as the Southern battlefields touristy. And about "U.S. military bases", "Economic development" such as Economic Promotion and the construction of the base itself has been done assuming continuation the base. "Development" in postwar Okinawa, has been closely connected "U.S. military bases" "the Battle of Okinawa". In addition, the mainland has been involved from Early Postwar.
 Prior research assumes the impact of mainland and the United States. However, the analysis is centered only on Okinawa, to clarify the process of divergence between the history of Okinawa and the mainland is difficult. In addition, aspects that are considered conservative, such as "development" have not been analyzed sufficiently. Because the history of the movement has been important, analysis of the person or organization of the progressive has been investigated.
 Based on the above, this research emphasizes the process of "economic development" and "tourism development", and examines to history on the development in postwar Okinawa and Japan, related to "the Battle of Okinawa" and "U.S. military bases".

実施報告書・概要

Summary of Final Report

1-1. 研究の背景

東西冷戦終結後、その代理「戦争」としての55年体制は崩壊し、政界再編が繰り返されるなかで本土側の保革対立軸は消滅していったが、沖縄は同様の道を辿らず、依然として保革の枠組が残存している。一方、在日米軍基地の根拠とされてきた冷戦が終結してもなお、米軍再編によって更なる基地存続・強化が図られようとするなか、1995年の沖縄米兵少女暴行事件を機に発生した基地反対運動は、復帰後初めて保革を越えた「島ぐるみ」県民大会を実現させた。だが、その後、負担軽減が一向に進まない閉塞感のなかで、沖縄では「独立」論も含めた多種多様な自立論が提起される。

そして、近年、沖縄戦における「集団自決」をめぐる歴史教科書問題(2007年)、普天間基地移設問題(2010年)、オスプレイ配備問題(2012年)を焦点として、「島ぐるみ」県民大会が開催された。その最大の特徴は、蓄積された自立論を背景として、沖縄県民の怒りが明確に日本(ヤマト)に向けられるようになってきたことである。沖縄と本土との間に存在する溝は、「沖縄戦」「基地問題」をめぐる認識のズレとして表れたのである。その歴史的前提を検討することは、歴史学にとって重要な現代的意義を持つと考える。

1-2. 研究の目的

本研究の目的は、戦後沖縄/日本における重要な争点となってきた、「沖縄戦」と「米軍基地」をめぐる請問題について、沖縄と本上を共通の俎上に乗せ、「開発」を媒介項として明らかにすることである。

従来の研究は、本土や米国側の影響を前提としつつも沖縄側の分析が中心のため、沖縄と本土との乖離の歴史過程を明らかにするには限界があった。さらには、従来の沖縄戦後史研究は、運動史に重点がおかれる傾向にあるため、「革新」側とみなされる組織や人物への分析は活発な一方で、「開発」のような「保守」側とみなされる側面には、十分に分析がなされてこなかった。だが、沖縄保守がこれまで担ってきた役割を踏まえれば、そうした偏った分析では全体像の把握は困難であるし、そもそも「観光開発」や「経済開発」は保革の立場を超越した沖縄側の共通の要求であつたことこそが見直されなければならない。その上で、本土側との関係性を改めて検討する必要がある。

1-3. 研究の方法

戦後沖縄/日本における経済開発について、「沖縄戦」「米軍基地」を論点として再検討するという意図のもと、改めて先行研究の調査・整理を行った上で、史資料収集を実施する。そして、「沖縄戦の慰霊空間と観光開発」と「米軍基地をめぐる経済開発」について、それぞれ以下のような3つの時期区分(①~③および④~⑥)を設定し、歴史学的実証研究を行う。

沖縄戦の慰霊空間と観光開発一一①1950年代の援護と慰霊/②1960年代の慰霊空間の整備/③1970年代の摩文仁をめぐる相克

米軍基地をめぐる経済開発――④恒久基地化のなかの経済復興/⑤長期経済計画のなかの沖縄/日本/⑥第一次沖縄振興開発計画と海洋博

1-4. 研究の成果

本研究を開始するにあたり、当初念頭に置いていたのは、戦後沖縄の経済開発が基地固定化に寄与した側面を重視することであった。だが、研究を進めるなかで、確かに「基地経済」形成は基地固定化に寄与するのだが、その一方で、沖縄の政財界では、基地への依存度を低下させることを意図して、戦後初期から一貫して「自立経済」が希求されていたことが明らかとなった。また、1950年代以降次第に規模を拡大させ、復帰後に基幹産業となっていく観光業の基盤形成において、沖縄戦の慰霊が重要な役割を果たした。

沖縄側の一貫した「自立経済」への願望は、1950年代には第一に米国からの自立を意識したものだつたが、1960年代になると復帰を前提として日本本土からの自立が意識されるようになる。復帰前後には、中国や東南アジアヘの経済進出も前提としつつ、重化学工業の新興に望みをかけようとし、その中で「国益」よりも「県益」を重視するが、本上側の「本土経済の一環」、「一体化Jという圧力によって挫折をしていく。そして復帰後、「本土経済の一環」に取り込まれる中で、3K経済(基地、公共事業、観光)が形成されていくのである。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0746
題目(Project Title)
戦後沖縄/日本における沖縄戦・米軍基地と開発をめぐる歴史学的検討
Historiographical Examination on the Development in Okinawa and Japan after World War II, Related to "the Battle of Okinawa" and "U.S. Military Bases"
代表者名(Representative)
櫻澤  誠 / Makoto Sakurazawa
代表者所属(Organization)
立命館大学経営学部
College of Business Administration, Ritsumeikan University
助成金額(Grant Amount)
1,700,000
リンク(Link)
活動地域(Area)