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助成対象詳細

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2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2) ]

思春期に発症した2型糖尿病の子どもへの療養支援に関する研究 ―治療と療養の継続性に焦点を当てて
Research on Therapeutic Support for Children with Type 2 Diabetes Onset in Adolescence: Focusing on the Continuity of Treatment and Therapy

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

子どもの糖尿病には1型、2型、二次性のものなどがあるが、ここ20~30年の間に思春期以後の2型糖尿病が急激に増加している。2型の子どもの約30%に一年以上医療機関を受診していない治療中断がみられ、治療再開時に重症な合併症を発症していることが多いことが報告されている。2型糖尿病の子どもが治療や療養を継続できる支援体制を整えることは急務であり、2型糖尿病の子どもたちを対象としたサマーキャンプの開催や思春期糖尿病外来の創設などにより、治療や療養の継続を支援する試みがなされているところである
そこで、本研究は、A: 思春期に2型糖尿病を発症した成人の体験から、(1) 2型糖尿病の子どもはどのような思いを抱いているのか、(2) 治療中断に至るプロセス、(3) 治療再開に至るプロセス、について質的な研究手法で明らかにすることと、B: アメリカにおける思春期の2型糖尿病の子どもとその家族への指導プログラムの現地調査をとおして指導の実際を把握し、プログラムの治療や療養の中断防止の工夫や有効性を明らかにすることにより、2型糖尿病の子どもの治療や療養の中断を意識した療養支援を検討することを目的とする。
  Childhood diabetes can be classified into Type 1, Type 2, and secondary, etc., but in the past twenty to thirty years there has been a sharp increase in Type 2 diabetes in adolescence and beyond. Approximately thirty percent of children with Type 2 diabetes discontinue treatment and are not under the care of a medical institution for over a year, and it has been reported that when treatment is resumed there are many cases of severe complications. The creation of a support system where children with Type 2 diabetes can receive continuous treatment and therapy is an urgent issue, and there have been attempts made to provide treatment and care, such as by holding summer camps for them and creating an outpatient adolescent diabetes clinic.
 Therefore, the aims of this study are to (A) demonstrate through qualitative research methods from the experiences of adults who had onset Type 2 diabetes during adolescence (1) the feelings of children with Type 2 diabetes, (2) the process leading to discontinuing treatment, (3) the process leading to resuming treatment, and (B) through on-site surveys of educational programs, gain an understanding of how education is actually carried out for children with adolescent Type 2 diabetes and their families in the United States, and by demonstrating creativity and efficacy in preventing the interruption of treatment and care programs, examine the care of children with Type 2 diabetes and therapeutic support which factors in the possibility of care being discontinued.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

子どもの糖尿病には1型、2型、二次性のものなどがあるが、ここ20~30年の間に思春期以降の2型糖尿病が急激に増加している。2型糖尿病の子どもの約30%に一年以上医療機関を受診していない治療中断がみられ、治療再開時に重症な合併症を発症していることが多いことが報告されている。2型糖尿病の子どもが治療や療養を継続できる支援体制を整えることは急務であり、2型糖尿病の子どもたちを対象としたサマーキャンプの開催や思春期糖尿病外来の創設などにより、治療や療養の継続の支援が試みられているところである。

 そこで、本研究は、思春期に発症した2型糖尿病の子どもの治療や療養の中断を意識した療養支援を検討することを目的として、以下の研究を行った。

 A)思春期に2型糖尿病を発症した成人の体験から、(1)2型糖尿病の子どもはどのような思いを抱いているのか、(2)治療中断に至るプロセス、(3)治療再開に至るプロセス、について質的帰納的な研究手法で明らかにする(以下質的帰納的研究とする)。

 B)アメリカにおける思春期の2型糖尿病の子どもとその家族への指導プログラムの現地調査をとおして指導の実際を把握し、プログラムの治療や療養の中断防止の工夫や有効性を明らかにする(以下現地調査とする)。

 A)質的帰納的研究では、思春期に2型糖尿病を発症した成人を対象とした。成人は記憶の強調や浄化などを行っており、現実を反映していない可能性があるが、思春期の子どもを対象とすることは療養生活への影響が懸念されることなどから、思春期に2型糖尿病を発症した成人を対象とした。3名から研究への同意が得られ、半構成的インタビューを行い、質的記述的に分析した。今後、研究参加者の増加が必須であるが、(1)2型糖尿病の子どもはどのような思いを抱いているのかについては、次のことが明らかとなった。a)食事療法が一番つらいこと、b)食事療法を守れなくなり血糖コントロールが不良な自分をいかに立て直すか葛藤を続けた経験があること、c)非肥満型の2型糖尿病の子どもは、発症に不良な生活習慣が関係していないにも関わらず、2型糖尿病という病名のために生活習慣が不良であると周りの人に思われることが嫌で、病気を限られた人にしか話していないことなどが明らかとなった。このような思春期の子どもに対して、医療従事者や親はどのように支援するのかという療養継続への課題は明らかとなったが、(2)治療中断に至るプロセス、(3)治療再開に至るプロセスについては、研究参加者全員が外来受診継続中であったために明らかにすることができなかった。

 B)現地調査は、Children’s National Medical Center(111 Michigan Avenue, NW Washington, DC 20010 USA)にて行った。糖尿病外来と入院病棟において、糖尿病の子どもと家族への教育プログラムと療養支援の実際を見学した。病棟では、夜間に糖尿病性ケトアシドーシスによる昏睡で救急外来を受診し、1型糖尿病と初めて診断されそのまま入院となった8歳の女児と家族に、翌朝より開始された教育を見学することができた。患児と両親のために、個別性を考慮した1冊の分厚い説明書(アメリカ糖尿病協会のプログラムに準拠している)と1冊の書籍が用意され、これに基づいてeducator nurseにより教育が行われた。保険制度に基づいて、教育が行われたその日に退院が予定されており、1日中行われた教育が終了するやいなや、患児は退院していった。教育内容は、家庭で生活する上で即必要となるインスリン注射、血糖測定、食事・運動療法などの最低限の知識と技術、疾患についてであった。退院した患児や家族が家庭で困ったときにすぐ対応できるよう、24時間いつでも相談できる専用電話が設置されており、患児や家族の安心につながっていた。日本とアメリカの保険制度の違いが、プログラムに基づいた教育に如実に現れていたが、子どもと家族が家庭で困らないようにという基本的な考え方は同様であった。

 思春期の2型糖尿病の子どもに出会えなかったが、糖尿病外来で思春期の1型糖尿病の子どもの診察を見学できた。診察した医師は、「親は思春期の子どもに血糖管理を任せているが、子どもは自分の血糖コントロールについて関心がない」と、思春期の子どもの療養の継続の困難さについて言及した。日本の思春期の2型糖尿病の子どもに通じるところがある。また、アメリカでも日本と同様に療養継続の支援は模索中であったが、カウンセリングが一部開始されていた。

 以上の2つの研究結果から、思春期の2型糖尿病の子どもに対して、医療従事者や親はどのように支援するのかという療養継続への課題を明らかにすることができた。今後、思春期の2型糖尿病の子どもの療養に関するさらなる研究により、具体的な支援を明らかにする必要がある。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーA: 共同研究2  Category A: Joint Research (2)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0767
題目(Project Title)
思春期に発症した2型糖尿病の子どもへの療養支援に関する研究 ―治療と療養の継続性に焦点を当てて
Research on Therapeutic Support for Children with Type 2 Diabetes Onset in Adolescence: Focusing on the Continuity of Treatment and Therapy
代表者名(Representative)
沖本 克子 / Katsuko Okimoto
代表者所属(Organization)
岡山県立大学保健福祉学部
Faculty of Health and Welfare Science, Okayama Prefectural University
助成金額(Grant Amount)
3,300,000
リンク(Link)
活動地域(Area)