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助成対象詳細

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2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーA: 共同研究1  Category A: Joint Research (1) ]

原発災害を契機とした「国内植民地」構造再編の把握 ―「公害」の経験を参照軸とした新たな農業・農村研究の構築
Understanding the Restructure of the "Domestic Colonies" Resulting from the Nuclear Catastrophe: Construction of a New Agriculture and Rural Areas Research that Takes the Experience of "Kogai (Industrial Pollution in Modern Japan)" as its Frame of Reference

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

福島原発事故によって、日本の資本主義経済が国内「植民地」構造に依存し、その矛盾を東北農村へ押しつけてきた歴史が露となった。本研究は、(1) この構造が事故後、どのように再編されつつあるのかを実証的に把握し、(2)「公害」の経験から蓄積された思想的成果をそこへ重ね合わせることで、(3) これからの農業・農村をめぐる新たな研究の地平を模索するものである。
 東北~常磐地域はこれまで、食糧農産物・都市労働力・鉱物資源等の供給地として大都市を支えてきた。だが現在、汚染地域にとどまり農業を続ける農家は、汚染物質をまき散らす「加害者」として囲い込まれ社会から周縁化される事態が起きている。この構造は実は「公害」の歴史において経験されてきたことでもあった。原発に関するこれからの議論は、除染や廃棄物処理など科学技術的側面での議論はもちろんのことだが、これら歴史的な従属構造への反省から出発しなければならない。
 本研究は、従来の農業・農村研究の抜本的見直しを念頭に、共時的な現地調査と、通史的な思想・理論の蓄積検討を行うことで、新たな国内「植民地」構造が再生産される現状を問い直し、未来への社会構築の新たな視座を提示するものである。
  The Fukushima nuclear power plant accident has revealed the dependence of Japanese capitalism on domestic "colonies" and the history of the imposition of contradictions arising from this on the rural areas of the Tohoku region. This research will (1) aim at the empirical comprehension of this restructuring following the nuclear accident, (2) reflect the philosophical achievements that have accumulated through the experience of "kogai", and (3) seek a new perspective for the future of agriculture and rural areas.
 Up to now, the Tohoku-Joban region has supported Japan's large cities as a supply base providing agricultural food products, an industrial labor force and mineral resources. At present, however, the situation has arisen whereby the farmers who have remained in the contaminated areas in order to continue to farm have been marginalized by the society they are surrounded by as "perpetrators" who are scattering contaminated material. This structure is, in fact, exactly what we have experienced during the history of "kogai." Future discussions regarding nuclear power plants will naturally include such scientific and technological aspects as decontamination and the disposal of nuclear waste, but these discussions must first begin by reflecting upon the historical structure of subordination of the rural areas to the cities.
 While aiming at a radical review of previous research on agriculture and rural areas, this research will challenge the current situation in which a new domestic "colonial" structure has been reproduced and present a new perspective for a future social structure through synchronic field work and an historical investigation of the accumulation of thought and theory."

実施報告書・概要

Summary of Final Report

東北・常磐地域はこれまで、食糧農産物・都市労働力・鉱物資源等の供給地として大都市を支えてきた。3・11による原発災害は、日本の資本主義経済がこうした国内「植民地」構造に依存し、その矛盾を東北・常磐農村へ押しつけてきた歴史を様々な形で露わにした。
 本研究は、
(1)この構造が原発災害後、どのように再編されつつあるのかを実証的に把握し、
(2)「公害」の経験から蓄積された思想的成果をそこへ重ね合わせることで、
(3)これからの農業・農村をめぐる新たな研究の地平を模索するものである。
 具体的には、福島県・岩手県・秋田県などの東北地方や、首都圏や高知県での現地調査・聞き取り調査による共時的な現状把握と、日本近現代史における「社会的災害」に取り組んできた諸学問の成果を積極的に読み込む通史的な歴史的思想展開の再読を通じて、新たな国内「植民地」構造が再生産される現状を問い直し、未来への社会構築の新たな視座を提示することを試みる。
 この課題に応じて各メンバーは以下のような研究を行った。
・    福島県における土壌スクリーニング活動に関する参与観察(中田)
2013年4月より、福島県JA新ふくしま管轄内の全農地を対象にした放射能測定プロジェクトにボランティアで参加しつつ、測定スタッフのライフ・ヒストリーを中心にした聞き取り調査を行った。
・    岩手県北内陸部における戦後開拓地に関する研究(中田)
岩手県県北において、満州から引き揚げてきた人々が、再び国内の開拓農村へと送り込まれていくプロセスを聞き取り調査した。
・    高知県旧窪川町における戦後の農村開発と原発計画に関する研究(猪瀬)
インタビュー・資料収集により、同町における戦後農村の変容を、1980年以降に表面化する原発計画をめぐる町内諸アクターの動きと関連づけて調査した。また、原発反対運動にかかわった医師やジャーナリストへのインタビュー調査と資料収集を、兵庫県と山口県で行った。
・    岩手県陸前高田市の地域開発と震災後の「復興計画」に関する研究(友澤)
同市における高度経済成長期の地域開発に関する友澤のこれまでの研究を基盤に、震災復興過程を含めた聞き取り・資料調査を行った。同時に、下記秋田の研究との比較を念頭に、足尾銅山鉱毒事件が現代に遺す問題についても聞き取り・資料調査を進めた。
・    秋田県北部の旧鉱山地域に関する研究(高村)
小坂町・大館市の産業廃棄物処理場への放射性物質を含む廃棄物の搬入の社会問題化と、これへの反対運動とその背景について、文献及びインタビューによって調査した。
・    千葉県東葛地域における放射能汚染に対する意識と地域史調査(原山)
ホットスポットとなった千葉県東葛地域をめぐって、これまでも一部首都圏自治体の廃棄物最終処分場となってきた秋田県との関係性を踏まえ、放射能汚染に関する都市民の意識の多様性、その差異によって引き起こされる人口流動と新たな分断の諸相を調査した
・    戦後日本における農村女性政策と地域への影響(岩島)
主に京都府旧久美浜町を対象にした資料調査と聞き取り調査により、1950"60年代における「農村女性」を対象とした政策とその地域社会への影響について、女性をめぐる政治の言説の変遷を把握した。
 上記の諸研究によると、各地域での震災と原発事故の影響や高度経済成長期の経験はあまりにも多様であり、類型化をこばむもので、たとえ原発や開発計画に対する明確な反対運動であっても、決して「人類を脅かす核に反対」とか「経済成長至上主義に反対」というような抽象的な理念からのみ理解することはできない。また社会科学や自然科学といった、開発の背景となる学知もまた、その力が作用する地域社会の脈絡を抜きにしては理解できないというのが、本研究の結果である。
 アウトプットの面では、二回のワークショップを開催し、メンバーが関わる地域の人々と意見交換の場を持つことができた。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーA: 共同研究1  Category A: Joint Research (1)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0796
題目(Project Title)
原発災害を契機とした「国内植民地」構造再編の把握 ―「公害」の経験を参照軸とした新たな農業・農村研究の構築
Understanding the Restructure of the "Domestic Colonies" Resulting from the Nuclear Catastrophe: Construction of a New Agriculture and Rural Areas Research that Takes the Experience of "Kogai (Industrial Pollution in Modern Japan)" as its Frame of Reference
代表者名(Representative)
中田 英樹 / Hideki Nakata
代表者所属(Organization)
明治学院大学国際平和研究所
International Peace Research Institute, Meiji Gakuin University
助成金額(Grant Amount)
2,900,000
リンク(Link)
活動地域(Area)