助成対象詳細 | 公益財団法人トヨタ財団

公益財団法人トヨタ財団

助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research) ]

多文化地区における社会関係資本の可能性 ―ニューカマー第二世代への教育支援の体系化に向けて
The Possibility of Social Capital in Multicultural Area: Toward Structured Educational Support for Newcomer 2nd Generations

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

ニューカマーの定住に伴って多様化しているといわれる第二世代の教育問題だが、未だに体系だった支援策は練られておらず、現場ごとの対応に任せられているのが実状である。こうした現状を踏まえ、本研究では、様々なエスニックグループが混住する多文化地区を対象に、そこで作られる社会関係資本がニューカマー第二世代の教育支援にあたって、いかなる役割を果たすものなのかを明らかにする。社会関係資本とは、あるネットワークに帰属する者同士の相互作用によって作られる資本である。ここでは、(1) 一つのエスニックグループによって作られるネットワーク、(2) 日本人が中心となった支援ネットワーク、(3) 様々なエスニックグループが協働して作り上げるマルチエスニックなネットワーク、以上三つのネットワークから作られる社会関係資本がニューカマーの子どもの教育資源としていかなる機能を持つのかを検討していく。これによって、ニューカマーの定住に伴って複雑化する第二世代の教育問題を読み解く枠組みを提示すると同時に、彼らへの教育支援の体系化へ向けた実践的貢献を志向する。
 The educational problem of newcomer 2nd generations has become more multifaceted with their settlement in Japan. However, the educational support for them hasn't structured yet, therefore each teacher and volunteer have to handle these problems on their own.
 To remedy this situation, this research clarifies the role of social capital for educational support in multicultural area, which several ethnic groups live together. Social capital is the capital that is formed by the interaction of the members who embedded in same networks.
 This study discusses the functions of three kinds of networks, (1) the network that is formed by the one ethnic group, (2) the network that is formed by Japanese supporter, (3) the network that is formed by multi-ethnic group, as educational resources. This research will propose the framework to understand the educational problem of newcomer 2nd generations and contribute to the structured educational support for them.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

  ニューカマーと呼ばれる新来外国人が増加してから20年以上が経過しているが、未だに体系だった支援策は練られておらず、現場ごとの対応に任せられているのが実状である。さらに、近年では定住化に伴って教育問題の多様化が指摘されているが、こうした定住に伴う教育問題の多様化を読み解くための枠組みも十分に提示されていない。
 移民の定住過程を把握するモデルとして有効な移民過程論(Castles and Miller 1996)によれば、移民は定住が進むにつれ、エスニックネットワークを形成し、ホスト社会でのハンディキャップを乗り越えようとする。ネットワークから生み出される社会関係資本は、人的資本が乏しい移民の教育資源ともなり、子どもの学業達成やアイデンティティ形成に有効に働くともいわれる。だが、日本のニューカマー教育研究は、こうした社会関係資本と子どものアイデンティティ形成との関わりについてほとんど触れてこなかった。これは、ニューカマー教育研究の視点が学校という枠内に傾斜してきたことに起因する。つまり、これまでの研究は、ニューカマーの子どもが人間形成を行う際の主な準拠点を日本の学校に求めており、かれらが対面する社会的文脈の多様性にはほとんど目を向けてこなかったがため、エスニック社会で作られるネットワークは死角となっていたのである。
 こうした現状を踏まえ、本研究では、様々なエスニックグループが混住する多文化地区を対象に、そこで作られる社会関係資本がニューカマー第二世代の教育支援にあたって、いかなる役割を果たすものなのかを明らかにすることを課題とした。社会関係資本とは、あるネットワークに帰属する者同士の相互作用によって作られる資本である。具体的には、1)一つのエスニックグループによって作られるネットワーク、2)日本人が中心となった支援ネットワーク、3)様々なエスニックグループが協働して作り上げるマルチエスニックなネットワーク、以上三つのネットワークに注目した。
 1)に関しては、エスニックネットワークの拠点となっている場(フィリピン系エスニック教会、ネパール系食材店・レストラン、韓国系エスニック教会、中華系廟・寺院、タイ系レストラン)における参与観察とインタビュー調査を行った。また、母国とのトランスナショナルなつながりも視野に入れ、フィリピンでの現地調査も行った。これは、かれらが日本で形成するエスニックネットワークは、来日時にどのようなネットワークに組み込まれていたかに大きく左右されると考えたためである。2)については、対象地区で行われている放課後学習支援室にて、ボランティアとして活動しながら、参与観察とインタビュー調査を行った。この学習支援室でのフィールドワークは、6年間継続して行っている。3)に関しては、1)、2)のネットワークを見る過程において、マルチエスニックネットワークが形成されているかどうかを調査した。
 得られた知見は、下記の通りである。[1]広く様々な人が関わる弱い紐帯のネットワークか、メンバーが固定化されている閉鎖的で、強い紐帯を持ったネットワークかによって、ネットワークの持つ機能が異なることが示された。弱いつながりのネットワークでは、広く日本社会で子どもを育てるために必要な情報や、進学に関する情報交換が行われていた。一方、固定されたメンバーが定期的に集まる教会を中心としたネットワークの場合は、子どもの学習に関する情報交換だけでなく、具体的な子育て、教育支援が行われていた。特筆すべきは、親の持つネットワークに子どもを組み込み、教会に参加させることによって文化や言語を継承していた事例が見られたことである。すなわち、教会などを中心に形成される閉鎖的なネットワークは、親の文化・言語を子どもに継承するという機能を持っていた。
 [2]日本人が中心となった支援ネットワークは、広く日本社会に適応するための具体的な情報を提供するとともに、親に代わって三者面談や学校見学等についていってくれる日本人ボランティアとの出会いを提供する機能も持っていた。こうした日本人ボランティアとのつながりによって、高校卒業後の就職が決まるという例もあり、支援ネットワークからもたらされる社会関係資本が子どもたちの日本社会への適応へとつながっていることが分かる。
 [3]中華系の廟・寺院や学習支援室などにおいて、マルチエスニックなネットワークの萌芽が見られた。しかし、大人同士の間で作られるマルチエスニックネットワークは、中華系の廟・寺院の他に見当たらず、中華系の廟・寺院にいたっても、継続的な関わり合いはほとんど見られなかった。一方、学習支援室は、学校というあらゆるエスニックグループの子どもが集う場の延長上にあるため、マルチエスニックなネットワークが築かれ易かった。親たちが母語を介在にネットワークを形成していくのに対して、子どもは日本語を介してネットワークを作る場合が多いことがマルチエスニックネットワークの形成に関係している。マルチエスニックネットワークに関しては、今後の課題として、さらなる調査を進めたい。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0985
題目(Project Title)
多文化地区における社会関係資本の可能性 ―ニューカマー第二世代への教育支援の体系化に向けて
The Possibility of Social Capital in Multicultural Area: Toward Structured Educational Support for Newcomer 2nd Generations
代表者名(Representative)
三浦綾希子 / Akiko Miura
代表者所属(Organization)
中京大学国際教養学部国際教養学科
School of International Liberal Studies, Chukyo University
助成金額(Grant Amount)
1,000,000
リンク(Link)
活動地域(Area)