助成対象詳細 | 公益財団法人トヨタ財団

公益財団法人トヨタ財団

助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research) ]

思春期を対象とした食と心を結ぶ教育プログラムの構築と評価 ―Body, Eating and Mind: BEAMプロジェクト
Development and Evaluation of an Education Program for Eating and Mind among Adolescents: Body, Eating and Mind (BEAM) Project

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

BEAMプロジェクトは思春期の心と身体を育てる健康的な食習慣形成をめざすものであり、BEAMは「Body, Eating and Mind」および「心からの笑顔」を意味する。思春期には食行動への影響要因が拡大し、保護者の目の届かない場面が増え、友人やメディア等の社会的影響を受け不健康な行動が増加するが、食教育は小学校を中心に展開されるため、思春期における「食が大切なのは知っている、けど…」という状況を変えるべく、継続した食教育の展開が急がれる。本プロジェクトでは、食習慣へ影響を与える外的要因に対し子ども自らが主体的に対処するスキルを身につけ、また、食が持つ心の健康への役割を実感し、自ら食環境づくりを実践することにより、生涯にわたる健康的な食習慣の基礎を築くという新たな食教育プログラムを構築する。一年目に国内外の実践例のレビューによりプログラム案を作成、実施に向けた事前研修、事前調査を行う。二年目にプログラムを中学校にて実施し、望ましい食習慣、メディアリテラシー、ダイエット行動、やせ願望、健全な自尊心、についてアンケート調査、および生徒が撮影した写真の観察によるプログラム評価を行う。
  Adolescents’ unhealthy behaviors are likely to increase without parents’ attention during this life stage. Simultaneously, social factors such as friends and the media grow rapidly in influence on adolescents eating behaviors. However, nutrition education has been provided mainly in primary schools. The current nutrition education in Japan is not sufficient to maintain healthy eating behaviors through adolescence. To change the situation, "I know eating is important for us, but..." it is urgent to develop a program of continuous nutrition education with an appropriate approach in junior high schools and high schools.
 BEAM project aims to establish healthy eating habits in order to foster vigorous body and mind among adolescents. BEAM is an abbreviation for "Body, Eating and Mind" and also comes from "Smile with obvious pleasure". In the BEAM project, a new comprehensive nutrition education program will be developed focusing on active engagement with learning for lifelong healthy eating habits. The program includes four dimensions; (1) improvement of self-esteem and body image as the basis of healthy behaviors, (2) acquirement of skills to deal with external factors towards eating behaviors, (3) understanding the importance of eating for mind, and (4) to make a better eating environment by themselves.
 In the first year, relevant studies are identified from both the Japanese literature and the international literature. This literature is utilized to develop a draft of the program. Trainings for teachers and preliminary surveys will be conducted at participating schools. In the second year, the program will be implemented in junior high schools. The effects of the program on healthy eating habits, media literacy, diet behaviors, drive for thinness and self-esteem will be evaluated with pre-post questionnaire surveys and observations of photos taken by students.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

【背景・経緯】

生活習慣の変化および心身の成長を経験する思春期は、朝食欠食やダイエット行動などの不健康な食行動があらわれ始める時期となる。活動範囲や交友関係が広がり社会的影響を受けやすくなる一方、自立への過渡期であることから、自身で食生活管理ができる力を身につけることが欠かせない。早期からの健康的な食生活の形成は、わが国の喫緊の医療課題である成人期以降の生活習慣病予防としても重要といえる。しかし中学生期は、朝ごはんを食べるより寝ていたい、やせたいから食べない、流行のおやつにはまるといった子どもの食に対する優先度や志向が変化する時期であり、単に知識を伝えるだけでは好ましい食行動形成には至らない。とりわけ思春期の不健康な食行動として懸念されるのが女子のダイエット行動である。思春期女子の多くがやせたいという理由で食事制限を含むダイエットを行う。思春期のダイエットは成長に必要な栄養素の供給を妨げるだけでなく、後の摂食障害や肥満のリスクとなりやすい。思春期のダイエットは心身の成長にとって百害あって一利なしであるが、ダイエットの要因は知識不足、低い自尊感情、メディアの影響など様々であり、食を取り巻く要因を包括的に考慮した対応が求められる。早期から思春期の特性を踏まえた食健康教育の充実がのぞまれる一方、中学生期以降食や健康について学ぶ機会は充実していない。本プロジェクトでは、思春期の子どもたちが社会的影響に対処する力、食生活管理力を身につけることにより、不健康な食行動を予防し健康的な食行動形成を目指す教育プログラムを中学校教育に位置づけて実施することとした。加えて、子ども自身の力を高めることは重要であるが、中学生期の食生活の中心はやはり家庭にあることから、家庭の理解と支援は欠かせない。学びを活かす受け皿がなければ定着がのぞめないことから、保護者向け食育サポート講座を並行して実施し、子どもの学びを保護者へ伝え、家庭での実践へつなげる取組もあわせて行った。

【方法】

思春期の食健康プログラムの検討:国内外の思春期(主に中学生)を対象とした食健康教育プログラム教材を収集し、本プロジェクトの趣旨に合うものを中心に選定した。そのなかで使われている枠組、授業内容を参考にし、3学年分の全12回の授業構成を検討した。発表や議論を行うなど子ども主体の参加型授業であること、「~できる」という自己効力感を育てる内容となるよう作成した。長期休暇の課題等を工夫し、授業がない時期でも意識を維持できるよう年間を通じた取組とした。

中学校でのプログラムの実施と評価:大阪府下公立中学校2校または1校(実施年度によって異なる)にて実施した。比較対象として同地域の中学校2校を設定した。本プロジェクトの優先課題である「心身の健やかな成長」について取り扱う保健体育科と連携し、担当教諭を中心に実施した。評価は実施前後のアンケート調査による前後比較、およびワークシート等の分析により行った。

保護者向け食育講座の実施と情報配信:2校の保護者を対象として保護者向け食育サポート講座を「朝食」「昼食」「夕食」をテーマとして各校3回ずつ実施した。各講座内容は、現在の食生活の振り返り、中学生に必要な栄養についての講話、レシピ紹介と試食とした。評価は前後のアンケート調査とワークシートの分析により行った。また講座内容を一部通信として全校生徒を通じて配布した。

【結果】

食健康プログラムの実施:現時点で前後比較結果が得られた実施校男女において、食生活の問題点抽出の自己効力感の改善がみられた。さらに女子では目標設定、実践に関する自己効力感についても改善がみられた。実施校では大多数が授業後に自身の食生活で実践し、実施校男女の食知識・態度が向上し、健康的な食行動は実施校では維持されたが、対照校では悪くなる傾向がみられた。両校ともダイエットに変化はなかったが、対照校のみ身体不満が増加し、実施校では不健康なダイエットや食行動につながるとされる思春期に特徴的な自身の体型への不満増加を抑えることができた。

保護者講座:栄養バランスや野菜の量に好ましい変化がみられ、保護者の子どもの食生活支援に対する態度および実践に効果が得られた。子どもへの食生活支援だけでなく、保護者自身の食生活改善に対する意識の変化も見られ、保護者への働きかけが家族全体の食生活改善に波及する可能性が示唆された。親子間の食をきっかけとしたコミュニケーションは増えたが、今後はさらに親から子への伝達を促すアプローチが必要である。加えて、講座不参加の保護者への働きかけは欠かせないことから、メールツールなどを利用したより届きやすい情報共有方法の検討を進めていく。

本プロジェクトは思春期の子どもの食生活改善と健全な心身の成長の支援に一定の貢献ができたが、思春期の中学校における食健康教育の取組は緒についたばかりである。前向きにたくましく生きる力としてさらに子ども自身の食生活管理力の向上をめざし、支援できる環境を広げながら取組を継続し、より多くの子どもたちに届けられるよう進める予定である。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-0988
題目(Project Title)
思春期を対象とした食と心を結ぶ教育プログラムの構築と評価 ―Body, Eating and Mind: BEAMプロジェクト
Development and Evaluation of an Education Program for Eating and Mind among Adolescents: Body, Eating and Mind (BEAM) Project
代表者名(Representative)
早見 直美 / Naomi Chisuwa
代表者所属(Organization)
大阪市立大学大学院生活科学研究科
Graduate School of Human Life Science, Osaka City University
助成金額(Grant Amount)
1,700,000
リンク(Link)
活動地域(Area)