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助成対象詳細

Details

2012 研究助成 Research Grant Program   [ カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research) ]

「遊び仕事」としてのニホンミツバチ伝統養蜂が地域生態系保全に果たす役割
The Role Played by Traditional Apiculture of the Japanese Honey Bee as "Asobi Shigoto (Playful Work)" in the Conservation of the Local Eco-system

企画書・概要

Abstract of Project Proposal

 人と自然の関わりを捉える枠組みとして、マイナー・サブシステンスの概念が注目されている。マイナー・サブシステンスは、直訳すると副次的生業であるが、野山で山菜やキノコを採取したり、水辺で魚介類を採取したりといった行為には「遊び」の要素が多分に含まれることから、最近では「遊び仕事」と訳されることが多い。自然との知恵比べを楽しみながら、その恵みを上手にいただく「遊び仕事」の営みは、自然のしくみや秩序を巧みに利用することで成立し、生命の循環に配慮した持続可能なスタイルでなければ継承されない。そこには、真に豊かで持続可能な社会を築くためのヒントが隠されているように思われる。本研究では、長崎県対馬市で継承されてきた「遊び仕事」としてのニホンミツバチ伝統養蜂に着目して、人と自然との関わり方に焦点を絞ったフィールド調査を行う。さらに、得られたデータを解析することにより、時間的、空間的に蓄積されたローカル・ノレッジを抽出し、ニホンミツバチ伝統養蜂が地域生態系の保全・再生に果たしている役割を明らかにする。本研究は、現代社会の中では見えにくくなってしまった人と自然との関わりを可視化する試みでもある。

 The concept of minor subsistence is attracting interest as a framework for understanding the relationship between man and nature. Although the direct translation of minor subsistence into Japanese is "fukujiteki seigyo" (auxiliary livelihood), recently it is often translated as "asobi shigoto" (playful work) since such activities as collecting edible wild plants and mushrooms in the hills and fields or fish and shellfish at the water's edge comprise a considerable element of "play". The work of "asobi shigoto (playful work)", which is the enjoyment of the contest of wits with nature and the skillful taking of its bounty, is made viable by the skillful utilization of the workings and organization of nature and is not passed on to successors unless it has a sustainable style which gives consideration to the circle of life. There does seem to be hidden a clue for building a truly bountiful and sustainable society. In this study, attention is directed to the traditional apiculture of the Japanese honey bee, as "asobi shigoto", which has been successively passed down in Tsushima City of Nagasaki Prefecture, to conduct a field survey focused on the way in which man and nature relate to each other. Furthermore, by analyzing the data obtained, the local knowledge which has been accumulated in time and space will be extracted to understand the role played by the apiculture of the Japanese honey bee in the conservation/regeneration of the local Eco-system. The present study is also an attempt to visualize the relationship between man and nature which has become difficult to see in modern society.

実施報告書・概要

Summary of Final Report

1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミット以来、世界的に持続可能性・未来可能性への関心が高まっている。日本でも、里山に象徴されるような「人と自然との関わり方」の再評価が盛んに行われており、とりわけ、「マイナー・サブシステンス」の概念に注目が集まっている。マイナー・サブシステンスは、直訳すると“副次的生業”であるが、野山で山菜やキノコを採取したり、水辺で魚介類を採取したりといった行為には“遊び”の要素が多分に含まれることから、最近では「遊び仕事」と訳されることが多い。自然との知恵比べを楽しみながら、その恵みを上手にいただく「遊び仕事」の営みは、自然のしくみや秩序を巧みに利用することで成立し、生命の循環に配慮した持続可能なスタイルでなければ継承されない。そこには、真に豊かで持続可能な社会を築くためのヒントが隠されているように思われる。
 代表者は、自然体験を重視した環境教育スタイルを模索する中で、「遊び仕事」の概念と出会い、日本の農山漁村に残る「遊び仕事」と環境教育とをうまくつなぎ合わせ、地域に残る伝統技術や文化を巻き込んだ形の環境教育プログラムの開発および実践に取り組んできた。「遊び仕事」として着目したのが、対馬(長崎県)で営まれている「ニホンミツバチの伝統養蜂」である。対馬はニホンミツバチだけが生息する唯一の島として知られ、ニホンミツバチを介した「自然と人間との共生関係」をつぶさに見ることができる稀有なフィールドである。
 本研究の目的は、長崎県対馬市で継承されてきた「遊び仕事」としてのニホンミツバチ伝統養蜂に内在する豊富な知識・技術・知恵・文化を抽出し、それが地域生態系の保全・再生に果たしている役割を明らかにすることにある。これは、現代社会の中では見えにくくなってしまった「自然と人との関わり」を可視化する試みでもある。最終的には、得られた成果を対馬の生態系保全、および、地元児童への環境教育に還元したいと考えた。
 研究の方法としては、以下の3つのアプローチをとった。
 (1)環境民俗学的アプローチ
 四季を通して伝統養蜂の流れを理解するため、可能な限り頻繁に対馬を訪れ、フィールド調査を実施した。春(巣箱の設置)、初夏(分蜂群の捕獲)、夏(天敵の駆除)、秋(採蜜)、冬(巣箱の製作)など、季節に応じて養蜂作業を継続的に観察する「参与観察」、および、養蜂家から直接話を聞く「聞き取り調査」を行った。そこから、「遊び仕事」としてのニホンミツバチ伝統養蜂に内包されている知識や技術、知恵などを抽出した。
 (2)保全生態学的アプローチ
 「伝統養蜂が成立している要因は、対馬の豊かな自然生態系が保たれていることにある。逆に、対馬の豊かな自然生態系があるのは、伝統養蜂が貢献している」との仮説のもと、徹底したフィールド調査を行った。地域自然に関する記述的研究を行い、島嶼という閉鎖生態系の中でニホンミツバチが豊富に暮らしていけるための環境条件を明示することで、ニホンミツバチを伝統的な手法で飼うという行為が、対馬の自然環境の保全・再生にどうつながっているのかを明らかにした。
(3)環境教育学的アプローチ
 遊び仕事としてのニホンミツバチ伝統養蜂は、自然を学び、自然と遊ぶ、豊かな自然共生型ライフスタイルを創出、実現することにも貢献できると期待される。ニホンミツバチの伝統養蜂に内包される知識・技術・知恵などを取り入れた環境教育プログラムを作成し、実践することによって、自然と人間が対等に向き合う等身大の共生の場を提供し、生活技術を学ぶことができる体験型環境教育を行った。
 上記の研究により、以下のような成果が得られた。
[1]伝統養蜂に内包されている知識や技術、知恵などを抽出することができた。
[2]対馬の自然生態系の保全・再生に対する、伝統養蜂の貢献を示すことができた
[3]伝統養蜂に内包される知識・技術・知恵などを取り入れた環境教育プログラムを作成、実践することができた。
[4]これらの成果は、冊子『ニホンミツバチが暮らす島 対馬の伝統養蜂をめぐる旅 』にまとめられ、対馬の伝統養蜂の未来を担う地元の子どもたちへ配布された。

プロジェクト情報

Project

プログラム名(Program)
2012 研究助成 Research Grant Program   【カテゴリーB: 個人奨励研究  Category B (Individual Research)】
助成番号(Grant Number)
D12-R-1138
題目(Project Title)
「遊び仕事」としてのニホンミツバチ伝統養蜂が地域生態系保全に果たす役割
The Role Played by Traditional Apiculture of the Japanese Honey Bee as "Asobi Shigoto (Playful Work)" in the Conservation of the Local Eco-system
代表者名(Representative)
溝田 浩二 / Koji Mizota
代表者所属(Organization)
宮城教育大学附属環境教育実践研究センター
Environmental Education Center, Miyagi University of Education
助成金額(Grant Amount)
1,500,000
リンク(Link)
活動地域(Area)