HOME

助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  共同研究助成A2  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0011
題目
(Project Title)
子ども同士の支え合いで実現する心豊かな学校・地域づくり ―いじめやこころの不調に手を差し伸べられる児童・生徒の育成
Development of Warm-hearted School-community Environment through Mutual Support of Children: Education of Students to Make Them Able and Willing to Help Peers Suffering from Bullying and Mental Difficulties
代表者名
(Representative)
佐々木 司
Tsukasa Sasaki
代表者所属
(Organization)
東京大学大学院教育学研究科
Graduate School of Education, The University of Tokyo
助成金額
(Grant Amount)
 6,000,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

本研究の目的は、精神障害やいじめに苦しむ仲間に対して、温かい心と正しい知識をもとに支援の手を差しのべられる児童・生徒を育成し、心豊かな学校づくり、さらには多様な人間が各自の特長を活かして支え合う豊かな地域と社会づくりに貢献することである。2年の研究期間でより具体的には、精神不調やいじめ被害が最も深刻となる思春期の子どもとその保護者を対象とした総合的精神保健教育プログラムを開発し、精神障害とは何か、いじめとは何か、苦しむ仲間を救うために自分達で出来ることは何か、心の健康のために役立つことは何かについて、生徒達の実践的学習を進める。これを通じて、互いの支え合いに根ざす豊かな学校と地域・社会づくりを促進する。プログラムの開発と実施は、悩み苦しむ児童・生徒を守るために日々奮闘中の養護教諭に、その養成大学の教員、学校保健と精神医学・心理学の研究者がそれぞれの知識と専門性を活かしてタイアップし、さらにいじめ対策プログラムの実践経験者と連携して進める。また養護教諭の現場感覚と経験を活かすことで、出来るだけ多くの学校で養護教諭を含む学校教員によって実施可能なプログラムの開発を目指す。


 Aim of the present study is to contribute to the development of warm-hearted school-community environment, where diversity of individuals is accepted for mutual support of the school-community members. This will be realized through the education of children to cultivate them willing and able to help peers suffering from mental difficulties and bullying, on the basis of warm heart and correct knowledge on mental issues. During the two years of the study specifically, we are going to develop comprehensive and practical programs of mental health education for adolescents and parents. By practicing the programs, they will learn what mental disorders are, what bullying is, and what they can do to help peers who are suffering from those problems. The programs also help improve the students' health. Through the education, the development of warm-hearted and mutually supporting school-community environment will be realized. The programs will be developed and practiced through cooperation of "Yogo" teachers at school-sites (mostly equivalent to "school nurses", but they also have license to teach school courses on health that are within or out of governmentally-determined curriculum), university teachers who train the student (or candidate) to be the "Yogo" teachers, and researchers of school mental health, psychiatry and psychology. NPO members who have been trying to develop and practicing anti-bullying program for years also participate in this study. All members cooperate through their unique expertise. A feature of the programs will be that they can be practiced by school-teachers including the "Yogo" teachers, not only by mental health professionals. This will help the programs prevail in a larger number of schools. Extensive experiences and expertise of the "Yogo" teachers at school sites may help realize this unique feature of the program.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

子ども達の心の健康とその向上は今日喫緊の課題である。このために必要な相互扶助の気持ち を養い、かつそれを可能とする知識と技能の習得を進め、互いに支え合える学校および地域のコ ミュニティー形成を進めることが、本プロジェクトの最終目標である。この目標に向けて、精神 保健に関わる研究者、養護教諭養成系大学の教員および学校現場の教員が協働で、互いに密接に 関連する2つのテーマに関する教育プログラムの開発・評価・普及を進めた。その一つは、子ど も達とその周囲の大人の「精神保健リテラシー」を高め、自分と周りの精神不調に出来るだけ早 く気付き適切な対処がとるための知識と意識を育て、無知から生ずる精神不調・精神疾患への偏 った先入観を除くとともに、精神的ストレス・精神不調をかかえた友人に対して適切な支援を行 える子ども達を育てることを最大の目的としたプログラムである。またこれによって、学校の教 職員、子ども達の保護者の精神不調・疾患に対する知識と意識が向上し、偏見が軽減されること で、学校を中心としたコミュニティー全体での助け合いが促進されることを波及効果として期待 してプログラム開発を進めた。もう一つのテーマは、いじめ防止プログラムの開発である。いじ めは子ども達の精神不調や精神疾患に強くかつ長期に影響すること、また精神不調や精神疾患が いじめ行動に影響することが知られており、この2つのテーマは密接に関連するものである。実 際のいじめ防止プログラムでは、心の不調に対するいじめの大きな影響とともに、自分たちの行 動を「傍観」から「助ける子ども」へと変えていくことがいじめ防止の鍵であることを理解する ための授業の開発と、学校で保健室を預かる養護教諭がどのようなステップでいじめ防止に貢献 できるかを理解するためのテキストの作成・普及をはかった。
 これらの目標に向けて2年間の助成期間で実際に行えたことは以下の通りである。まず精神保 健リテラシーについては、小学校高学年、中学生、高校生向けのそれぞれの授業と、そのための 教材開発を行い、複数の学校でこれを実施して、子ども達の知識と意識向上に対する効果の検証 を進めた。教材はアニメ教材の作成と、授業実施のための指導書作成を、東京藝大の教員、卒業 生の協力を得て行った。またプログラムの紹介とともに精神保健リテラシー向上のために学校教 員を対象とした講義および学校保健委員会での保護者対象の講演を実施した。またいじめ防止授 業の紹介を含めた学校関係者向けのセミナーを夏季に合計4回、東京、熊本、岐阜にて実施した。 いずれの講義、講演、セミナーでも、今回開発した精神保健リテラシー教育は好評で、現在多く の学校がプログラムの実施を希望しており、教員・保護者への啓発を含めた継続発展が期待され る。またこれまでに実施した学校での効果検証では、精神不調・精神疾患に関する知識と相互支 援に対する意識が、授業実施3か月においても実施前より有意に向上していることが示された。 ただし行動の変容については、さらに長い期間が実証に必要なことがこの間明らかとなったた め、今後より多くの学校で検証を進めるとともに、プログラム内容のさらなる工夫も進めていく 考えである。いじめ防止プログラムについては、小学校4年生向けに合計3校時で実施できる授 業プログラムを開発し、夏季のセミナーで学校関係者に紹介し好評を得ている。実施校はまだ限 られているが、子ども達の理解と反応は極めて良好で、いじめの発生・持続を防ぐための主役を子ども達自身が務めること(「傍観者」から「助ける子」への行動変化)の重要性に対す る大きな理解が得られた。なおこの授業がさらに効果を発揮するには、学校コミュニティー全体 での防止体制作りが重要であり、今後それに向けた学校教員・保護者との連携システムの構築と、 それに必要なイベントの開発等をさらに進める。なおこのプログラムの実施方法と授業で用いる 資料、ならびに保健室でのいじめ防止活動のあり方を記したテキストを作成し、今後多くの学校 への配布を行う予定である。本プログラムの目標にむけた活動はこの2年間着実に進められてき たと確信しているが、最終目標への到達にはさらなる時間と工夫が必要であり、今後もさらに研 究活動を継続していく考えである。

ホームページへのリンク ◆トヨタ財団WEBサイト内関連記事