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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  共同研究助成A1  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0053
題目
(Project Title)
自然資源の持続可能な保全に向けた制度設計 ―(仮称)土壌保全基本法の制定に向けた制度設計
Institutional Design for Sustainable Conservation of Natural Resources: Institutional Design for Enacting a Soil Conservation Act
代表者名
(Representative)
村田 智吉
Tomoyoshi Murata
代表者所属
(Organization)
国立環境研究所地域環境研究センター
National Institute for Environmental Studies
助成金額
(Grant Amount)
 5,700,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

 我々はサステイナビリティというキーワードで大気・水等の公共財の持つ資源的価値を保全するために様々な法整備を行っている。しかし、我が国には土壌資源の保全に関する包括的な法律は存在しない。そのため、環境アセスメントをはじめ、国土のグランドデザインを作成するにあたり、土壌資源を有効に利活用しながら持続的に保全するという考え方が現れていない。本研究では、他国の先行事例を踏まえ、我が国の多様な地勢条件に適した土壌保全のあり方は何かという、自然資源の構成要素のうち最も社会的認識の欠如が懸念される土壌と社会との関係に新たな枠組みを提示する。具体的成果として、仮称―土壌保全基本法の素案を作成する。この土壌資源に対する保全の枠組みを示すことで、産業分野の関心が高まるとともに、社会全体に土壌資源の持続的保全に対する新たな価値が醸成される。また更なる展望として、ローカルなサステイナビリティのための我が国の制度をひな型に、共通した環境要素をもつモンスーンアジアというレジョナルなサステイナビリティに対し、各国へ制度面からの提言を行うことにより、我が国が持続可能な社会形成にリーダーシップを発揮することが出来る。



 Any country, regardless its system of governance, legitimates natural resources conservation such as air, water, and soil as public goods. However, we yet enact a comprehensive soil resource conservation act in Japan. It shadows that we could not design a blueprint of nationwide landuse with a concept of sustainable utilization of soil resources. In this connection, we propose our research topic, which purposes preparing an institutional framework of sustainable soil conservation under diversified geographic conditions in Japan. While we refer precedent countries enacting a soil conservation act, we consider soil-human relationship, which has often been ignored in the society among that of natural resources. The expected research result would be a draft of comprehensive soil conservation act. We think that publishing the draft would be a significant eye-opener for our society to explore an innovative viewpoint of sustainable soil conservation. We also expect a further ambitious perspective of our research outcome, which reminds us of the common environmental feature, so-called Monsoon Asia. We can call for a cooperative dialogue among them, referring to the proposed framework, to take an initiative to develop a framework, of region wide sustainability in the context of soil conservation.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

背景と目的
我々はサステイナビリティというキーワードで大気・水等の公共財の持つ資源的価値を保全するた めに様々な法整備を行っている。しかし、我が国には土壌資源の保全に関する包括的な法律は存在し ない。そのため、環境アセスメントをはじめ、国土のグランドデザインを作成するにあたり、土壌資 源を有効に利活用しながら持続的に保全するという考え方が表れていない。本研究では、他国の先行 事例を踏まえ、我が国の多様な地勢条件に適した土壌保全のあり方は何か、という、自然資源の構成 要素のうち最も社会的認識の欠如が懸念される土壌と社会(人)との関係に新たな枠組みを提示する ことを目的に、具体的成果として(仮称)土壌保全基本法の草案を作成することを目指した。
研究の実施方法
本課題を進める上で、次の3つのサブテーマ構成とした。 1) 先行事例のレビューワーク 土壌保全を謳った制度を有する諸外国の先行事例についてレビューワークを行った。具体的には、各 国・各地域に存在する土壌保全に関係する憲章、法令、行動計画などについて、成立の経緯、社会背 景、成立後の運用状況について検証を行った。2) 土壌保全施策に関し成文化した事例をもつ諸外国との制度設計における意見交換 制度設計事例のある諸外国の研究者や制度担当者との意見交換会(ワークショップ、シンポジウム、 現地訪問)を実施し、制度設計作業や背景となった経緯・諸課題についての情報収集を行った。 3) 土壌保全基本法の草案作成作業 
サブ1)、2)を踏まえ、我が国に適した土壌保全制度、すなわち土壌保全基本法の草案を作成した。また、本課題の進行をより円滑に効果的に進める目的で、「土壌調査インベントリーフォーラム (Soil Survey Inventory Forum)」という団体名称を設け、各種の活動を実施した。
研究活動の結果
1)先行事例のレビューワーク
まず世界的に最もコンセンサスを得ているFAO発布の世界土壌憲章(1982;2015)の内容について検 証した結果、 旧憲章(1982年)においては、食糧増産に向けた最適な土地利用が土壌の保全に資す る、という基盤的思想だったものが、新憲章(2015 年)では、持続可能な地球環境のための土壌保 全、という思想に変化していた。いわゆる生命(特に人命)中心的な思想から共生の思想に転換され ていた。欧州の第6次環境行動計画のテーマ戦略であるThematic Soil Strategy (2006)においても 土壌保全思想の根底は地球共生的な内容であった。その他、アジア地域についても検証を行った。
2) 土壌保全施策に関し成文化した事例をもつ諸外国との制度設計における意見交換 1)でも触れたとおり、世界の潮流として、食糧増産のための土壌保全から地球環境の保全を見据え た共生の発想に向かいつつも、一方で、各国における土壌保全の枠組みについては、元来分布する土壌の地勢的、理化学的条件や、歴史・文化的背景、国家の行政組織体系、現在の経済発展状況などに 左右される傾向がきわめて強いことなどが各国との意見交換によって明らかにできた。
3) 土壌保全基本法の草案作成作業サブテーマ1)、2)で得た知見を踏まえ、(仮称)土壌保全基本法を作成した。その概要について、 まず本草案における土壌とは、地球上の有限の資源であり、私たち社会の公共財であるとともに、そ の保全の枠組みの中で、エネルギーや食糧を含む地産地消を可能とするための賢明な利用がもとめら れ、それ故に、地域産業や地域文化を支える重要な地域資源とみなすことができる。このような基本 理念のもと、社会と土壌の関係の枠組みを土壌保全基本法として提言した。
今後の展開
世界の土壌保全にかかる様々な社会的背景、思想を比較検証しつつ策定した仮称-土壌保全基本法 は、今後社会実装にむけてさらなる前進を図る必要がある。さらに多くの土壌保全関係者にこの枠組 みの理解を促すとともに、国内各自治体に対し、これを一つのひな型に、制度面からの提言を行い、 我が国の土壌資源の保全が、より持続可能な社会への発展につながるよう活動を進めていきたい。
 

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