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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  個人研究助成B  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0102
題目
(Project Title)
東アフリカ農村における植林の受容と継承 ―技術普及の動態的プロセスへの視点
Dynamics of the Diffusion Process of Afforestation Technique in the Village of East Africa
代表者名
(Representative)
黒崎 龍悟
Ryugo Kurosaki
代表者所属
(Organization)
福岡教育大学教育学部
Faculty of Education, Fukuoka University of Education
助成金額
(Grant Amount)
 500,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

多くのアフリカ諸国では市場経済の急速な浸透を背景に森林環境の保全/管理と地域経済の活性化の両立が緊急の課題となっており、その対処手段として多くの植林プロジェクトが実施されてきた。植林はその有益性を実感するまでに長い年月が必要とされるため、植林の普及には住民が継続的な植林の担い手になるかどうか、どのようにして技術が次世代へと継承されていくかを明らかにする視点が不可欠であるものの、こうした問題意識に基づいた調査研究や実践活動はこれまでにほとんどされていない。本企画では、東アフリカ・タンザニア南部の農村を対象に、植林技術が地域社会に普及するプロセスを実証的に明らかにする。特に個人レベルの植林行動を長期的視点で追い、どのような動機やタイミングで植林が実践され、どのようなネットワークによって植林技術が伝達・継承されているのかに着目する。本企画から得られる第一の成果は、植林技術が普及する動態的プロセスの解明である。そして、この成果を通して汎用性や即効性を強く志向する開発プロジェクト一般が内包する問題を提起し、迂遠のように見えても、地道な実態把握によって得られる地域住民の主体的な動きに学ぶことの重要性を広く学界、現地社会、市民社会に発信していく。

 For many Sub-Saharan African countries where market economy develops rapidly, it is urgent issue to satisfy both conservation/administration of forest environment and activation of rural economy. Governments and donors have coped with this issue by conducting afforestation projects. Although it is necessary for the effective extension of afforestation techniques to monitor whether the rural people who accept the afforestation techniques utilize them continuously and how the techniques are succeeded to the next generation, few research have clarified these aspects. The purpose of this project is to clarify how afforestation techniques diffuse in a rural village of southern Tanzania. The project focuses on questions emerging from its individual practices from a long term perspective; what are the motivation driving afforestation practices, by what timing does the people plant trees, and which kind of network helps to diffuse the techniques. The expected outcome of this project is the detail of dynamic diffusion process of afforestation. In addition, based on this outcome, the project points out the problem found in many development projects/programs which prioritize to seek replicability and instant result. This project tries to suggest the importance of learning lessons from popularly-led movements, the actual conditions of which can be brought to light from long-term field researches, for the effective management of development projects/programs.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

背景:多くのアフリカ諸国において植林技術は植民地時代に導入されたが、その普及は各国政府や援助ドナーにとって今日も主要な課題である。特に近年では市場経済の急速な浸透によって現金収入の必要性が高まるなか、多くの住民が農地・放牧地の拡大や薪炭の生産に収入源を頼る傾向にあるため、森林環境の保全/管理と地域経済の活性化の両立が緊急の課題となっている。こうした状況への対処手段として植林プロジェクトが各所で実施されている。しかしながら、これまでのプロジェクトで成功とされるものはきわめて少なく、その要因解明が多くの研究者によって進められてきた。その代表的な成果が「木を植える側の論理」への着目であり、住民の植林への多面的なニーズへ配慮することの必要性が指摘されてきた。この指摘は従来の硬直的なトップダウン型の植林プロジェクトの見直しに貴重な一石を投じた。しかし、植林はその有益性を実感するまでに長い年月が必要とされるため、植林の普及のためには、住民が継続的な植林の担い手になるかどうか、どのようにして技術を次世代へと継承していくかを明らかにする視点から学ぶことが不可欠であるものの、こうした問題意識に基づいた調査研究や実践活動はこれまでにほとんどなされていない。
 本プロジェクトの目的:本プロジェクトでは、タンザニア南部の農村を対象に、植林が地域社会に受容され継承されていくプロセス(普及のプロセス)を長期的視点に立って検証することを目的とした。特に個人レベルの動向に着目し、どのような機会や動機のもとに住民が植林技術を習得・実践し、またどのような形で、いかなるネットワークを通して次世代へと技術が伝わるのかを明らかにした。
 方法:本企画の実施内容は現地調査と国内研究会を柱とした。現地調査はタンザニア南部ルヴマ州ムビンガ県K村を対象とし、第1回目の渡航(2013年12月)では個人世帯を対象にした半構造化質問票とインタビューによる調査をおこない、植林の有無・回数・時期・実施した時の年齢・動機、技術の伝達経路、ライフ・ヒストリーなどの詳しいデータを収集した。第2回目の渡航(2014年8月)では、調査結果をもとに現地でワークショップを開催することで、現地社会へと研究成果を発信する機会とし、また地域住民と行政官(森林官)が連携するためのきっかけとした。
 国内研究会については、アフリカ研究者らとの研究会を2回(2013年11月23・24日と2014年5月26日)共同開催して途中経過・成果報告をおこない、研究内容を練り上げた。
 結果:調査村ではイギリス委任統治時代に植林技術が持ち込まれ、村人は徐々に植林を受容していき、1950年代頃から積極的に植林を始める村人が現れ、2000 年以降には植林に取り組む人数が目に見えて増加していた。
 まず、個人レベルの植林に注目すると、先行研究が指摘するように、村人が植林をする動機はさまざまであることには間違いないが、ここで新たに明らかにしたことは、個々人の動機が時間(成長)とともに変化することである。こうした内的な要因と政策や開発支援などの外的な要因が組み合わさることで個人は植林を繰り返し、継続的な植林の担い手になることが明らかになった。そして、植林技術の継承は、植林技術の伝わる複数の経路が形成されていたことに支えられていた。それは、(1)熱心な先駆者を起点とする経路、(2)熱心な植林の実践を引き継ぐ村人の影響、(3)親子関係・親族関係の経路、(4)農民グループ活動の影響、(5)繰り返し植林をする村人の影響、の5つであったことが明らかになった。このように、対象地域では技術伝達の経路が地域社会内に網の目のように形成され、また、国家レベルの土地法改正の動きや県レベルの関連政策の影響、村レベルの条例整備、経済成長を背景とした建材需要の高まりが大きな後押しとなってほとんどの村人が植林技術にアクセスできる環境が整っていることが考えられた。
 植林を含む環境保全計画を根づかせるためには、まず植林の波及の詳細なプロセスをモニタリングし、小規模であっても地域社会の実態に基づいた継続的な支援にフィードバックしていく必要があると考えられる。そして、そうした支援においては、植林技術の移転の他、住民のニーズを注意深く考慮しながら植林のインセンティブをもたらす諸活動(養蜂や水源保全を必要とする水力製粉機・小型水力発電の運営等)をあわせて導入していくことが、将来的に住民の植林技術への多様なアクセスを形成し、植林技術の普及を促す要因になる可能性があると考えた。

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