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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  共同研究助成A2  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0113
題目
(Project Title)
モーリタニア·セネガル川付近における農地開発に向けた取り組み ―河川氾濫制御と水資源開発と伝統的水源管理慣行
Towards the Farmland Development along Senegal River in Mauritania: Flood Control and Traditional Custom of Water Resource Management
代表者名
(Representative)
入江 光輝
Mitsuteru Irie
代表者所属
(Organization)
宮崎大学工学部社会環境システム工学科
Department of Civil and Environmental Engineerring, University of Miyazaki
助成金額
(Grant Amount)
 7,600,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

 サハラ砂漠の西端モーリタニアでは砂漠化が進み農業開発潜在力はセネガル川沿いに限られるが、その水資源を有効活用しておらず、食料生産力は多くの向上の余地がある。一方、同地域では近年の政治的安定で近隣国から人口流入·帰還があり、大規模な食料生産力強化が急務である。そこで、セネガル川に隣接する乾湖のリキズ湖を氾濫水導水により水源化する計画基礎を築き、同時にその水源管理方法について検討し、食料生産拠点としての可能性を検討する。
 本研究ではまず氾濫水導水による乾湖水源化のために地形データおよび河川水文情報を取得し、数値シミュレーションにより貯水可能量を推定する。あわせて現地での圃場水収支を計測し、推定される水源量から開発可能となる圃場面積を試算する。
 一方で既存の氾濫原農業から灌漑農業への速やかな転換に向け、農民の生活向上について社会·経済学的考察を行う。まず現状の氾濫原農業農家の家計実態を把握し、伝統的な水源管理慣行等を踏まえた上で、水源化の実現により灌漑農業への転換する際に必要となる農民への適切な技術導入プロセスについて検討する。この結果を反映して技術面と農村社会経済慣行の両面から水資源システムを再検討し、開発シナリオを練りなおしてシミュレーションを行う。


 The area which has agricultural development potential in Mauritania located at the west end of Sahara desert is limited, only along the Senegal River. However, its water resource is not used effectively and the food productivity has room for improvement. On the other hand, there are refugees and returners from the surrounding countries to Mauritania in these years because of its political stability. The reinforcement of food productivity in this area is urgent issue. In this project, the potential of this area as a food production base will be discussed from the point of view of the plan for using Lake R'kiz, the dry lake lying beside Senegal River as the retention pond for flood control and water reservoir for agriculture in dry season, including its management.
 First, the topographic and hydrological data will be obtained for the numerical simulation of inundation and the storage capacity of the dry lake. In addition, the water balance in farmland will be observed for calculating the arable land based on the comparison with the available water resource.
 At the same time, the quality improvement of farmer's life will be discussed from the social and economic point of view for the smooth shift from conventional recession agriculture to the irrigation agriculture proposed by this water resource development. The current situation of house hold economy and traditional water resource management will be observed. Then appropriate process of technology introduction to the local farmers, which is required for the change of farming style to irrigation agriculture by the development of the new water resource, will be discussed. Reflecting the result of this socio-economic survey, the water resource system will be modified and the development scenario will be rebuilt with the simulation.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

本研究で対象とするモーリタニア国は近年の政治的安定もあって周辺国からの帰還民、避難民 の流入により人口が増加し、食料需要が増大している。一方で同国は大部分が沙漠で、農業生産 力は水資源の存在する南部国境のセネガル川沿いに限られ、同地域の農業基盤整備が必要とされ ている。しかし、同地域では季節的な河川水位増加に伴って生じる河川氾濫が農業生産物や農民 の生活に被害を与えている一方で、河川水位の低くなる季節には灌漑が行えないために生産力が著しく低下するといった治水、利水の双方に障害があり、開発が遅れている。本研究ではセネガ ル川に隣接し、現在乾湖となっているリキズ湖を遊水池として使用し、地域の治水・利水の機能 向上を図ることを提案し、それが地域に及ぼす影響を氾濫数値シミュレーションの試行と現況の 農村の水源管理方法および経済状況に関する聞き取り調査により検討する。
 まず、数値シミュレーションにより現況における氾濫域の再現を試みたところ、特徴的な傾向が確認できた。すなわち、セネガル川は非常に平坦な地を流れ下る河川であるため、多くの蛇行や過去の流路変更が太古から繰り返されてきたが、旧河道の軌跡である支川が本流部と合流する地点において支川の上流部に向かって逆流が生じており、特に出水時にはその逆流が主たる要因で氾濫域が広がることが確認できた。支川上流に向かう逆流は出水時のみならず、低水時にも生じていることがシミュレーションによる数値実験および現地調査により確認できた。また、本流 河道と支川ともに蛇行しているため、両者が極端に接近している地点において出水時に接合し、相互に流況に影響を及ぼしている可能性が示唆された。乾湖への導水を検討するにあたっては、これらの特徴をよく考慮した導水路設計が求められる。
 一方、聞き取り調査では、農業集団を3種類に分けてその水資源管理方法および生活状況等について整理した。同地域ではCooperative,Graduate,Privateと呼ばれる3種類の農業主体が存在する。Cooperativeは土着民が形成する農業組合で、最も古くから存在する。Graduateは政府 が農業振興政策の一環として行っているもので、以前中国資本で開発された灌漑区を大学卒資格を持つ者に貸し出し、その者が農民を雇用して運用する。Privateはやや投機的な性質を持ち、避難民であるマリからの外国人やモーリタニア人が運営している。Cooperative、Graduateと同 様にPrivateも政府系銀行からの融資を受けられるが、それに加えて積極的に投資を行い、農地 を展開している。本研究では対象とするセネガル川河畔域のほかに、別途セネガル川上流の支流域でダム建設により大規模な水資源と灌漑区が新たに開発された地域の入植者に対しても比較 のために調査を行った。対象地域ではGraduateの用水にかけるコストが最も低かった。これは灌漑設備が整えられている環境であるためである。次に用水コスト低かったのはPrivateで、最も多額の費用を費やしていたのがCooperativeであった。Privateは生産性を重視する傾向があり、農地の分布を見るとセネガル川本流沿いの水へのアプローチがしやすい、しかし洪水氾濫のリスクが高い場所が多い。Privateはここ数年で数が増加傾向にあるが、ここ数年は氾濫が生じ ていないためにそのリスクを認識されないままに利水の利便性のみに着黙して展開している。
一方で、Cooperativeは以前からの氾濫の経験があるため、比較的本流からは離れて小さな支川などから水を引いている。その分だけ水資源の季節的安定性は低く、用水路から農地への導水 のために重油ポンプを重用し、その燃料代に応じて水利用コストも上昇していると考えられた。このことから、Graduate が展開している農地のような、もしくは本研究で提案する乾湖遊水池化のようなある程度集約的な利水設備がなければ、農民個々は利水の不便さか氾濫リスクのどちらかを選ばざるを得ない状況になっていると考えられる。特にCooperativeが費やすポンプの燃料費は多大で、集約的な灌漑網を整備して水利費を徴収してもその費用のほうが燃料費を下回ると予測される。また、比較のために調査を行った上流部のダム灌漑区の入植者は1世帯の構成員数が少なく、資材入手の困難性もあって一人当たりの農地面積と生産効率が非常に低かった。これは水資源の整備のみで農業生産性を向上させることは難しく、資材供給や収穫物 集積のための組織作りも重要であることを示している。
 数値シミュレーションにより支川への逆流も氾濫拡大の一つの要因となっていることが確認された一方で、聞き取り調査からは本流近傍に比べれば氾濫リスクは低いが利水の利便性に問題があることが明らかとなった。したがって、乾湖遊水池化にあたってはこの支川域を対象として治水、利水の機能を向上することが望ましく、あわせて入植者の組織づくりなどにも配慮 を要すると考えられた。

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