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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  共同研究助成A2  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0144
題目
(Project Title)
放射能汚染地域の文化保全と避難者の心の救済 ―チェルノブイリと福島
Post-Catastrophe Cultural Psychotherapy: Lessons from Chernobyl and Fukushima
 
代表者名
(Representative)
家田  修
Osamu Ieda
代表者所属
(Organization)
北海道大学スラブ研究センター
Slavic Research Center, Hokkaido University
助成金額
(Grant Amount)
 7,000,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

チェルノブイリ事故で汚染された地域は元来ポレシアと呼ばれ、スラブ民族の故地である(日本の奈良や「やまと」に相当)。原発事故は生活だけでなく古来の民俗文化も破壊しつつある。近年、現地の人類学者は同地の文化財蒐集に取組み、避難者の語りを基に説話や方言等を採録している。そこでの重要な知見は、避難者が自らの言葉で自らの生活や故郷を語ることが心の癒しに繋がるという事実である。福島原発事故で深刻な汚染を受けた福島県東部は豊かな地域文化を持ち、住民の精神的な誇りであった。有機自然農法や生産緑地運動も盛んで、都会人も惹きつけていた。いまそれらは事故と避難により突然失われたが、避難民を取り込む地域文化の保全活動が避難者の精神的支えや心の治癒に繋がるとの報告がある。本研究では、ウクライナの実践的知見に学びつつ、福島原発避難者から地域の豊かな生活文化や生態との係り、及び自分史の聞き取りを行なう。知見をモデル化し、大規模災害からの地域再生の理念と実践につながる新しいヴィジョンを、未曾有の災害を受けた二つの地域が連携して世界に発信する。

 Chernobyl is a part of Polesia, which was eventually contaminated by radioactive substances released from the nuclear accident at Chernobyl in 1986, but is, otherwise, known as the home land of the Slavic peoples. Polesia sounds like as Nara or Yamato for the Japanese. The nuclear catastrophes destroyed not only the lives of the residents, but also the old cultural tradition in the area. The Ukrainian anthropologists have been collecting the folklore from the evacuees these years, and one of the most important findings is that the evacuees psychologically recover themselves through telling about their own lives and local folklores in their own words.
 As parallel, East Fukushima, which is also polluted, has rich folklore, and the residents were proud of it. Moreover, bio-agriculture and green-countryside movements were popular there, and they attracted the young generation. Now these values suddenly disappeared due to the nuclear accident and the following residential evacuation, though it is reported that the evacuees are psychologically salvaged by the preservation actions of folklore and local traditions.
 This research project, learning the active knowledge in the Ukrainian anthropology, carries interviews from the evacuees from the Fukushima accident about the rich tradition, the quality of live, the local ecosystem, and their personal histories. We elaborate the new findings into a model, and create a new vision for the world in order to make the affected area rebirth from the post-catastrophe damages through corroboration of the two tragic areas.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

1)チェルノブイリでのポレシア研究との出会い
チェルノブイリ事故で汚染された地域は元来ポレシアと呼ばれ、スラブ民族の故地である (日本の奈良や「やまと」に相当)。原発事故は生活だけでなく古来の民俗文化も破壊しつ つある。近年、現地の人類学者は同地の文化財蒐集に取組み、避難者の語りを基に説話や 方言等を採録している。そこでの重要な知見は、避難者が自らの言葉で自らの生活や故郷 を語ることが心の癒しと被曝のトラウマ軽減に繋がるという事実である。
2)福島の被災地での地域文化との出会い
福島原発事故で深刻な汚染を受けた福島県東部は豊かな地域文化を持ち、住民の精神的な 誇りであった。有機自然農法や生産緑地運動も盛んで、都会人も惹きつけていた。いまそ れらは事故と避難により突然失われたが、避難民を取り込む地域文化の保全活動が避難者 の精神的支えや心の治癒に繋がるとの報告がある。
3)本研究の課題と目標の達成
本研究では、ウクライナの実践的知見に学びつつ、福島原発避難者から地域の豊かな生活 文化や生態との関わり、及び自分史の聞き取りを行なうことが目的とされた。知見をモデ ル化し、世界に発信することが目指され、さらにこのモデルがさまざまな大規模災害から の地域復興の理念と実践につながるものと期待された。本研究では上記の課題と目標を達成するため、四つの柱を立てた。
① ウクライナでのチェルノブイリ=ポレシア研究の紹介と共同研究
② 福島での「オーラル・ヒストリー」の蒐集
③ チェルノブイリ=ポレシア研究及び福島研究からの知見のマクロ的・ミクロ的総合
④ 知見のモデル化と世界及び後世への発信である。

①について、ウクライナ側は当初予定の研究者以外に二人が加わり、さらにハンガリー研 究者の参加も得て、チェルノブイリ避難地域内での民族学的調査、現地でも全く未開拓だ った集団移転集落の個別農民面接調査を行ない、画期的な成果が生まれた。研究成果は、 札幌、幕張、カナダ、ブダペストなどの国際会議で報告され、報告書等でも発表された。
②について、以下の三点に取り組んだ。
1.飯舘村綿津見神社宮司からの聞取と同神社の例大祭写真記録の作製
2.飯舘村史の再発掘と消滅の危機にある集落史の記録編集
3.仮設住宅での聞取と生活文化の保存・継承活動の調査
③について、②の研究成果を被災者と共有し、心理に精通した東洋医を招いて講演と実践 的健康相談会を開催するなど、実際に被災者の心の癒しにつながる成果を得た。また、こ れは被災者と研究者の新しい信頼関係の醸成をもたらした。
④について、個別論文や著作、国際会議などで成果を報告し、具体的な政策提言としては 『なぜ日本の災害復興は進まないのか:ハンガリーの赤泥流出事故の復興政策に学ぶ』(家 田修著、2014 年、現代人文社)のなかで、新しい住宅復興モデルを提唱した。
 最終成果となる復興モデルは「産業災害と社会のレジリエンス」論としてまとめられ、 2016 年 3 に刊行予定の『歴史としてのレジリエンス』(京都大学出版会)に所収の予定で ある。

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