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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  共同研究助成A2  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0151
題目
(Project Title)
変貌するアジアにおける家族の危機 ―新しい家族・社会像の模索と政府の役割
The Socio-Economic Transformation and the Crisis of the Family in Asia 
代表者名
(Representative)
エステベス・安部・マルガリータ
Margarita Estevez-Abe
代表者所属
(Organization)
シラキュース大学マックスウェル政策大学院政治学部
Maxwell School of Citizenship and Public Affairs, Syracuse University
助成金額
(Grant Amount)
 6,000,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

 日本を始めとするアジアの多くの国において家族の形態は急速に大きく変容しつつある。しかし、北欧諸国などと異なり、アジアにおいては家族形態の変化に政策的対応が追いついていない。家族は国民福祉においても最も重要な基本単位の一つであり、東アジアにおける急激な少子化などは、家族と家族観の変容が如何に重大な社会問題であるかを示している。本研究は、家族形態の変容と家族観の変化の「ずれ」、さらには家族の実態や家族観と政策との「ずれ」という二種類の「ずれ」を実証的に検証することを通じて、家族の形態および家族観の変容が社会全体に与える影響を解明する。最終的には、家族に関する諸課題の解決に資する科学的資料を提供し、持続的発展可能な社会を実現するための政策を提言することを目標とする。具体的には、アジアにおいて家族の形態及び家族観は如何に変容してきたのかを詳細なデータを用いて分析し、家族の形態と家族観の「ずれ」が生じる条件と、「ずれ」の社会的結果を検証する。また、「ずれ」の解決に向けての各国政府の対応の差異に注目し、政府の対応を促す要因を検証する。本研究は社会学と比較政治学の学際的研究プロジェクトである。


 The shape of the family is in the process of dramatic transformation in many Asian countries including Japan. Yet, unlike in Nordic countries, politics has not caught up with the rapid transformation of the family. As the family is one of the basic units of national welfare, recent drops in the fertility rates in Asia, for instance, underline the severity of potential social problems that changes in shapes and notions of the family can bring about. Our project empirically investigates the societal consequences of "mismatches" between the realities of families and people's ideas about families, and also of those between the realities and ideas of families, on the one hand, and national policies, one the other hand. Our goal is to provide social scientific data for thinking about solutions to cope with the changing needs of the family; and also to contribute to the debate on what a sustainable model of society might look like. More specifically, we will identify how realities and ideas of the family have changed in Asia, explore when and how "mismatches" might emerge between people's notions and realities of the family, and examine the consequences of such mismatches. We also compare how different governments have addressed these mismatches, and investigate the factors behind different policy responses. Our project is an interdisciplinary one that involves sociology and comparative politics.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

日本を始めとするアジアの多くの国において家族の形態は急速に大きく変容しつつある。平均寿命の延長による高齢化のみならず、三世代同居世帯の減少による核家族化、核家族における子供の数の減少、女性の高学歴化と就業率の上昇、離婚率の上昇、そして若者の婚姻率の低下は、これらの社会が大きな歴史的な転換期にあることを示唆している。
 北欧諸国は類似の社会変容を早くに遂げ、それに伴い国民の家族観も政府の政策も変化してきた。しかし、経済発展と社会変化のテンポが非常に速かったアジア地域においては、家族形態の変化に政策的対応が追いついていない。政府による福祉サービスの供給が遅れるアジア地域では、家族は国民福祉においても最も重要な基本単位の一つであり、家族の形態および家族観の変容が社会全体に与える影響を解明することは重要な社会的課題である。本研究は、アジアにおいて家族の形態及び家族観がどのように変容してきたのかを詳細なデータを用いて明らかにし、さらには実際の家族の形態と個人が持つ家族観のずれがどのような結果をもたらすのかを検証することを目的とする。
 本研究は、過去30-40年間のアジアの家族の形態と家族観の変容を検証し、その変容の背後にある要因を検証した。家族の形態は各国の政府統計を収集することによって測ることとし、家族構造(核世帯、三世帯同居世帯、単身世帯割合)、年齢別人口の時系列推移、出生コホート別出生率、出生率推移、初婚と初産年齢、末子年齢別母親就業率、離婚・婚姻率、国際結婚割合などの指標によって計測した。各国における家族観・家族像はワールド・バリュー・サーベイ(World Value Surveys)などの既存の国際的サーベイデータの家族に関する質問項目を使い、家族観・家族像の過去30年間の変遷についての詳細な検証を行った。
 既存のサーベイデータは必ずしも家族についての質問項目が多くないことから、独自のサーベイを実施することによって、家族観や家族の実態についての詳細な調査も行った。日本、台湾、韓国のフィリピン人団体の協力を得て、上記3カ国に住むフィリピン人に質問用紙を配布、回収する方法でサーベイを実施した。調査票では、主に外国人と結婚して配偶者の故郷に住むフィリピン女性が、どのような家族観を持ち合わせているのか、移住先の家族観と祖国の家族観の違いは何か、移住先で義理の親の介護などに携わっているか、移住先(日本、韓国、台湾)での適応度(例:就業実態、 帰化の有無)などについて質問した。3カ国で回収した約900人の回答から見えてきたことは、 フィリピン人女性が移住先で形成している家族の形態には国によって大きな違いがあり、また彼女たちの移住先での適応度も異なるということであった。
 例えば韓国においては、8割以上の回答者が「結婚」を目的として入国しており、同居家族も配偶者と子供、そして義理の親というパターンが大多数であった。そして、義理の老齢家族構成員の介護に従事している回答者の割合が一番多いのも韓国であった。台湾では「就労」目的の入国が圧倒的に多く、義理の家族の介護に従事する割合も低い。日本においては、配偶者と同居していない回答者が半数近くを占める一方、フィリピンの家族を呼び寄せて同居している回答者、家族の介護に従事する回答者がそれぞれ10パーセント程度見受けられた。移住先での適応度については、家庭で使用する主な言語が現地語であるのは3カ国共通であったものの、現地語を使って日常生活を送ることのできる程度は国によってかなりの違いが見受けられた。
 本研究の将来的な目標は、実際の家族の形態と個人の持つ家族観の「ずれ」がどの程度起きているのかを検証し、さらにその「ずれ」の帰結を分析することである。「ずれ」の帰結は、主観的幸福度や生活満足度、あるいは結婚率、離婚率、自殺率、希望する子どもの数と実際の子どもの数との違いなどによって測ることを予定している。そして、最後のステップとして政策的介入がどの程度家族観の「ずれ」による社会問題の縮小に寄与できるのか、なぜ国によっては政策的対応に遅れがあるのかを検証する予定である。

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