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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  個人研究助成B  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0292
題目
(Project Title)
資金供給システムにおける新たな思想と実践 ―GLS銀行を中心に
The New Ideas and Practices on Fund Supplying: Focusing on the GLS Bank
代表者名
(Representative)
林  公則
Kiminori Hayashi
代表者所属
(Organization)
都留文科大学
Tsuru University
助成金額
(Grant Amount)
 1,500,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

融資先の企業が引き起こした問題に金融機関が責任を負わないことに対して疑問をもつ人々が現われはじめている。そのような人々は、環境保全を含む倫理的・社会的な事業に対して融資活動を実施する新しい資金供給システムに関心を抱くようになっている。本申請研究課題は、そのような金融NPOのなかでも多大な成功を収めているGLS銀行(「貸すためと贈るための共同体銀行」)に焦点を絞っている。GLS銀行はドイツのボーフムで誕生した銀行で、およそ40年の実績を有している。特徴的な点はドイツの思想家ルドルフ・シュタイナーの影響を強く受けている点で、貸与や贈与に関して独特の考え方をもって銀行を運営している。
 研究内容は、以下の3点にまとめられる。すなわち、(1)GLS銀行の実践の内容の把握と財務分析、(2)シュタイナー思想との関連の深さの把握、(3)GLS銀行と類似の事業の日本における実施可能性の検討である。
 プロジェクトにより解明される「社会の新たな価値」を一言で言えば、「贈与」の新しい意義の発見である。期待される波及効果は、収益性の低い事業の広がりと「意志あるお金」の増加である。

 Questions have been arising against financial institutions sharing no responsibility for troubles caused by their client firms. Those raising such questions have been taking interest in new fund supply systems supporting various ethical and social projects including environmental preservation. Among the NPOs that are introducing such fund supply systems, this research focuses on the case of the GLS bank achieving special success through its 40 years' track record. The GLS bank has been strongly influenced by Rudolf Steiner's ideas and has been managed based on unique concepts of lending and giving.
 The contents of this research will be as below. Firstly, the activities of the GLS bank will be studied, and then its financial statements will be analyzed. Secondly, its relevancy with Steiner's ideas will be examined. Thirdly, possibilities of implementing projects in Japan similar to those of the GLS bank will be considered.
 This research can contribute to the exploration of "New Social Values" through bringing new meanings to the concept of "giving". Its expected ripple effects include the spread of social projects with low profit-making and the increase of "volitional money" in the society.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

研究課題
世界金融危機以降、社会的銀行が注目されるようになってきているが、学術的にまとめられた成果はほとんど見当たらない。特にドイツで40年間の成功実績を誇るGLS銀行についての研究は皆無と言ってよい。本研究は、注目されている分野で研究に対する要請があるにもかかわらず、これまで本格的に取り上げられてこなかったGLS銀行に関する研究の遅れを埋めるものである。
 具体的には、Ⅰ.実践の内容の把握、財務分析、Ⅱ.シュタイナー思想との関連の深さの把握、Ⅲ.日本における実施可能性の検討を本研究の課題とした。

研究方法
GLS銀行の実践内容を調べるために、研究期間中にドイツを二度訪れた。
一回目は2014年3月で、GLS銀行、GLS信託財団にくわえて、社会的銀行協会(Institute for Social Banking)のSven Remer(社会的銀行の専門家)にヒアリングを実施した。
 二回目は2015年3月で、GLS銀行、GLS信託財団へのヒアリングのほかに、GLS銀行創設時のメンバーで何冊かGLS銀行に関する本を出版しているRolf KerlerへのヒアリングとGLS銀行の融資先(シェーナウ電力会社とドッテンフェルダー農場)へのヒアリングを実施した。
 日本における実施可能性を検討するため、みらいファンド沖縄(2013年12月)、女性・市民コミュニティバンク(2013年12月)、名護市役所・沖縄県庁(ふるさと納税について)・辺野古基金(2015年9月)を訪れた。また、全国NPOバンク連絡会に出席する中で、ピースリンク石川(2015年1月)、NPO夢バンク(2015年2月)へのヒアリングに立ち会ったほか、2015年2月のファンドレイジング日本において、あいちコミュニティ財団、コミュニティユース・バンクmomo、京都地域創造基金、西武信用金庫の取り組みを把握した。また、長年にわたって社会的金融について活動を続けてきたA SEED JAPANの代表と2015年6月に意見交換をした。

研究結果
Ⅰ.実践内容の把握、財務分析
 実践内容については、2015年9月19日に環境経済・政策学会2015年大会にて、「社会的銀行における特殊な運営方法」という報告をした。この報告をもとにしてまとめなおしたものを2016年1月頃に一般社団法人環境金融研究機構のHPに掲載していただく予定である。GLS銀行の特徴は、①抵当ではなく個人の才知への信用を重視する、②実体経済を重視する、③貨幣に対する人々の意識を高めようとしている、④多大な財産を持たない人々が何か変革しようとしたときの社会的な場所になろうとしている、⑤公益事業体を支えるための公益銀行を目指していることであり、これらの理念をいかせるような運営方法を模索してきた。具体的には、ダイレクト・クレジット(預金者が融資先を直接選択できる)、預金者による利子の放棄、透明性を高めるためにバンクシュピーゲル(季刊誌)の発行、贈与を扱うGLS信託財団との連携などである。
Ⅱ.シュタイナー思想との関連の深さの把握
 GLS銀行の考え方については、「定常経済における社会的金融機関の役割 -贈与の役割について-」(http://ishes.org/project/sse/news/docs/hayashi.pdf)、pp.1-15、2015年3月、にまとめた。本論文は、幸せ経済社会研究所の懸賞論文で優秀論文を獲得した。詳細は各論文にゆずるが、GLS銀行ではシュタイナーの思想を取り入れながら、貨幣には交換的性質、融資的性質、贈与的性質があり、それぞれの性質を意識することによって経済全体のプロセスを健全に動かしていくことができると考えている。そのなかでも贈与的性質が非常に重要で、GLS銀行はGLS信託財団と協働して、さまざまなプロジェクトを進めていることがわかった。

Ⅲ.日本における実施可能性の検討
 NPOバンクの方をはじめとして社会的銀行の設立を模索してきた方々にさまざまな話をうかがったが、日本でいますぐに社会的銀行を設立することは難しいことがわかった。一方で、そのなかでもコミュニティ財団やクラウドファンディングなど、「意志あるお金」を増やしたり、収益性の低い事業を広めるための活動が徐々になされたりするようになっていることがわかった。

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