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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  個人研究助成B  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0555
題目
(Project Title)
インドにおける「準児童労働者」に対する教育政策の実質的成果 ―新たな児童労働枠組「準児童労働者」の定義構築を踏まえて
Practical Effectiveness of Education Policy to "Quasi-child Labour" in India: Defining a New Framework of the Child Labour Called "Quasi-child Labour"
代表者名
(Representative)
柄谷 藍香
Aika Karatani
代表者所属
(Organization)
大阪大学大学院国際公共政策研究科
Osaka School of International Public Policy, Osaka University
助成金額
(Grant Amount)
 1,600,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

 インドの児童労働政策は80年代から多角的に講じられてきた。しかし、インドの児童労働政策は目的として児童労働の「廃止」を掲げているにも関わらず、現実的には「廃止」を目指しているものではない。実際のところ、働く子どもに教育を提供するものの、多くの子どもが「労働」と「教育」を共に続けている。しかし、児童労働を創出している地域、そしてより狭義である家庭に児童労働政策が普及したことによって「現代の児童労働者」には「従来の児童労働者」とは異なる点が発生したといえる。いわゆる「従来の児童労働」とは、子どもの労働を「child labour(=有害な労働)」と「child work(=手伝いとしての仕事)」に区別して定義をしていた。しかし、「現代の児童労働」には、「child labour」と「child work」の間を浮遊する、いわば「準児童労働者」とも言うべきカテゴリーに含まれるであろうと思われる子どもが増加していると推定できる。本研究は、新たな児童労働枠組となる「準児童労働者」が受ける教育の実質的な成果を検証すると共に、「準児童労働者」の増加原因を考察し、児童労働の定義を再考することを目指す。


 Child Labour Policy has been diversely implemented in India since 1980s. However, despite being that Child Labour Policy of India sets a goal to "eliminate" child labour, it is considered that this Child Labour Policy does not aim at the elimination of the child labour realistically. As a matter of fact, many children continue both engaged in labour and being educated, though Child Labour Policy provides education to child labourers.
 To date, it seems that Child Labour Policy has been spread not only in the target areas generating extensive child labour but also in the families giving rise to the child labour in a narrow sense. In relation to this, several different aspects have emerged between "the previous child labourer" and "the present child labourer". Furthermore, so called "the definition of previous child labour" has been divided into two categories: one is "child labour = hazardous labour" and the other is "child work = light work". It is, however, assumed that the number of children being involved in a new labour framework, "quasi-child labourers" existing between the two categories of child labour mentioned above, is considerably increasing.
 The goal of this research consists of three parts; (1) the evaluation of the practical results of education that provides to "quasi-child labourers," (2) the cause of the expansion of the "quasi-child labour" and (3) the reconsideration of the definitions of child labour, and will be attained on the basis of the field research in India.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

本プロジェクトは、新たな児童労働の枠組となる「準児童労働者」が受ける教育の実質的な成果を検証すると共に、それらの子どもたちに対する教育は「真に平等な教育」であるといえるのかを明らかにすることを目的とする。それらを踏まえた上で「準児童労働者」がなぜ現在増加しているのかを検証し、児童労働の定義を再考することを目指すものである。
 既存の児童労働は、労働の質と子どもの年齢により定義される。児童労働 “child labour”は、子どもが経済的搾取を受け、危険な労働や教育の妨げとなる労働、身体的・精神的・道徳的に有害となる労働に従事することを指す。なお、ILOによれば、最低就労年齢は原則15歳、義務教育を修了していることが要件となる。これに対して、“child work”に該当する子どもの仕事とは、親の手伝いとして仕事をすることであり、子どもの教育の一環として意味があり、経済的に搾取することにはならないので、児童労働にはあたらないと解釈されてきた。
 以上に掲げたものがいわゆる「既存の児童労働の定義」であるが、「現代の児童労働」には、“child labour”と“child work”の間を浮遊する、いわば「準児童労働者」とも言うべきカテゴリーに含まれるであろうと思われる子どもが増加していると推定できる。「準児童労働者」とは、フォーマル教育もしくはノンフォーマル教育を受ける機会を与えられ、労働と共に教育を続ける子どもであり、これが本プロジェクトの論拠の基本となる児童労働の新たな枠組である。「準児童労働者」は従来のような深刻な“child labour”には該当しないが、親の手伝いとして仕事をするといった“child work”にも該当しない、いわばグレーゾーンに存在する子どもたちである。
 今日のインドには、このようなグレーゾーンに存在する「準児童労働者」が増加していると推定でき、これが統計上の児童労働者の減少に大きく影響していると考える。CENSUS of INDIAの統計結果によると、2001年からのおよそ10年間で、5~14歳の児童労働者数が約34%に減少している。このことから、「準児童労働者」が「児童労働者」として算出されていないことが児童労働者数の大幅減少の原因の一つである可能性があり、また、特に2001年以降の児童労働政策によって「準児童労働者」は生み出されたと推定し、本プロジェクトに臨んだ。
 本プロジェクトにおいては、準児童労働者の労働形態に関する聞き取り調査、ラーニングアウトカムズ調査、世帯調査、以上3つの調査を実施し、準児童労働と従来の児童労働との差異を可視化することを目指した。
 対象地域および対象者は、デリー、マディヤプラデシュ州ジャバルプル、オリッサ州ブバネシュワールおよびカタックにおける、9~15歳の①ノンフォーマル教育を1年~2年継続した上でフォーマル教育へ移行した元児童労働者もしくは現在も児童労働に従事している子ども、あるいは、②フォーマル教育を受けながら労働に従事している子ども、合計1,014名とした。
 本プロジェクトを実施した結果、従来の児童労働と準児童労働の差異は次のようにまとめることができる。従来の児童労働は、家庭から創出されていた点に対して、準児童労働とは、国家の政策・法律によって創り出される、いわば国家が創出した児童労働の新しい形態である。
 上記の概念をインドに当てはめて検討すると、インド政府は児童労働廃止政策の一環として行った教育政策によって準児童労働者を創出した。子どもに普遍的に教育を提供するというインド政府の試みは教育の機会を提供するという意味で一定程度達成できているものと思われるが、労働と教育を共に継続している準児童労働者への教育は定着が難しく、ドロップアウトの可能性が高い。従って、インドにおける教育制度は、すべての子どもに対して真に平等であるとはいえない。
 こういったインドの児童労働政策の負の側面がある点は否めないが、一方で、準児童労働は児童労働を廃止する過程で発生し得る現象でもあり、現在のインドはその過渡期にあるといえる。準児童労働者が、真の子ども期を確保するための政策提言を今後の課題としたい。

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