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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  個人研究助成B  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0685
題目
(Project Title)
独立後南スーダンにおける若者組合の「再編」と多様性の中で育まれる「共同性」に関する人類学的研究 ―若者のヴィジョン構築と地域社会の再建にむけて
An Anthropological Study on the Reorganization of Youth Associations and Their Cooperative Roles in Post-independent South Sudan: Toward the Reconstruction of Local Communities through Fulfilling the Vision of Youth
代表者名
(Representative)
橋本 栄莉
Eri Hashimoto
代表者所属
(Organization)
日本学術振興会
Japan Society for the Promotion of Science
助成金額
(Grant Amount)
 1,600,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

 アフリカ紛争後社会に生きる若者は、教育や就職、地縁・血縁関係など多くの困難に直面している。本企画の目的は、南スーダンの地域社会において「再編」されてきた若者の組織の調査を通じて、紛争後社会で築かれる連帯と「共同性」について明らかにすることにある。南スーダンの村落社会では、古くから年齢組という発達した若者の組織が存在していた。年齢組は内戦時には人々の動員に利用される一方で、平和構築や戦後復興の取り組みの際、社会を再建する大きな力となった。年齢組は社会変化とともに「再編」され、現在は「若者組合」として各都市や村落部に点在している。本企画では、現代の若者組合の機能とネットワーク形成のあり方を解明するとともに、南スーダンの歴史の中で年齢組が「再編」されてゆく過程や、その中で育まれる新しい「共同性」のあり方を明らかにする。これにより、若者たちのヴィジョンがいかに地域社会全体を盛り上げてゆくのかを探求する。悲願であった独立を達成した南スーダンで、若者が地域社会全体に働きかけてゆく力を追うことは、不安定性を生きる現代社会の若者と地域社会の協働の可能性を探る手がかりともなるだろう。


 In post conflict societies in Africa, youth are faced with a variety of difficulties in areas such as education, employment, and local and kinship relations. The aim of this project is to elucidate the dynamics of solidarity and cooperation rebuilt and promoted among youth associations in post conflict local communities in South Sudan. In fact, traditional communities in this region are well known for elaborated youth organizations based on age-set system. During the civil war, these age-sets played an important role in agitating people to fight. On the other hand, when it comes to peace-building, these youth organizations have been recognized as a useful system to rebuild the communities. These age-sets have been reorganized in accordance with social changes and now, as "youth associations", are spreading in the towns and villages. This project will investigate the functions and construction of networks of these associations. In particular, I will focus on the historical process of the reorganization of the associations and "new" styles of cooperation. By doing so, I will explore how the vision for the future built among youth associations affects the whole local communities. I will also hope that this case study of the vision and the constructive role of South Sudanese youth will contribute toward reconsidering the important and positive role youth can play in any local community in this precarious world.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

■本プロジェクトの目的:本プロジェクトの目的は、南スーダン共和国で発展してきた若者を中心とする組織が「再編」されていった過程を明らかにするとともに、同組織を通じて育まれる新しい「共同性」のあり方を検討することにある。本プロジェクトでは、南スーダンとウガンダの難民コミュニティにおける参与観察から、現代の若者組合(Youth Association)の機能とネットワーク形成のあり方、および紛争後社会に生きる若者や難民たちが抱える葛藤や困難が、同組織を通じていかに解決されているのかを解明した。
■プロジェクト課題設定の経緯:長年に渡る内戦の末、南スーダン共和国は2011年に多くの地域住民の期待の中で独立を達成した。しかしその後も政治的対立に起因する民族紛争や反政府軍による反乱が各地で相次ぎ、2016年の現在でも平和到来の兆しはみえない。アフリカ紛争後社会の再建にあたり、これまで首長などの伝統的権威の力が取り上げられてきた。その一方で、現代では若者間で形成されている新しい強固な連帯がもう一つの紛争解決のかなめとして注目されつつある。アフリカの紛争後社会に生きる若者は、教育や就職、地縁・血縁関係など多くの困難に直面している。紛争後の南スーダンに暮らす若者にとって、若者組合とは、ライフコースの多様化に伴う人生の選択や悩みを同世代の人びとと分かち合い、決断してゆく場でもある。不安定な社会状況の中、彼らはどのように新たな連帯を築き、現実的な問題に立ち向かおうとしているのだろうか。また、ここで育まれる若者間の新しい「共同性」は、地域社会の再建や国家形成においてどのような力となってゆくのだろうか。南スーダンで若者が地域社会全体に働きかけてゆく力を追うことは、アフリカの文脈を超えて、同時代の不安定な社会情勢のなかを生きる若者と地域社会の協働の可能性を探る手がかりとなるに違いない。以上の問題関心から、紛争後社会の諸問題の解決方法の提示と、現代社会が備える「新たな価値」の解明を最終的な目標・波及効果として掲げ、本プロジェクトの課題を設定した。
■研究方法
【1】現地調査(2013年12月、2015年1~3月、2016年8~9月)
都市部で発達した若者組合(南スーダン)や難民コミュニティで形成された相互扶助組織(ウガンダ)において参与観察やインタビューを行い、主に次の三点の課題、 (1) 現代南スーダンの若者たちが築く新たな社会関係の解明、(2) 若者組合の歴史的「再編」過程の解明、(3) 若者組合を通じて育まれる「共同性」と地域社会全体の復興の関係を探究した。
【2】地域間比較研究のためのワークショップの開催(2016年10月)
アフリカの紛争後社会の若者の地域間比較研究を目的としたワークショップを開催し、南スーダン、ウガンダ、ルワンダ、シエラレオネ、難民定住区など、それぞれの地域で異なる状況を生きる若者たちのヴィジョンがいかに地域社会全体を盛り上げてゆくのかを検討した。
■研究から得られた新たな知見:本プロジェクトによって見出された「社会の新たな価値」とは、紛争後社会を生きる人びとが背景の異なる他者と共生するために発達させてきた、様々な知識や実践をつなぎ合わせながら目の前の現実に対処するという接合的な知の様式と、それを実践する力、および実践を可能にする人間関係の形成方法であるといえよう。例えば、それは本プロジェクトによって明らかとなった次の点にも見出すことができる。
(1)現代の若者組合は、伝統的要素と近代的要素とを接合させながら形成された組織であり、さまざまな背景を抱える若者を巻き込みながら地域社会を再生する試みが観察された。(2)なかでも難民定住地における相互扶助組織は、国家間問題から、国内問題、民族関係、難民が日々抱える悩みなどさまざまなレベルの問題に対処すべく、分散型のリーダーシップにもとづき運営されていた。(3)組織には一見して多種多様な価値観が混在しているが、ひとつの地域的シンボル(故郷でもあり現在の居住地も意味する「家」の形象)を軸として求心力を獲得し、それは人びとが新たな土地で「共同性」を見出すための支えとなっていた。
■プロジェクトの結果
①プロジェクトの結果は、各種学会、シンポジウム、招聘講義において研究発表を行った。発表時に得たフィードバックを活かして成果を論文としてまとめ、各種学術雑誌に投稿予定である。
②2016年10月に代表者が主催したワークショップ「アフリカ紛争後社会と<若者>」の成果は、それぞれの発表を論考にして学術雑誌に投稿予定であり、その後論文集として出版予定である。

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