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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  共同研究助成A1  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0762
題目
(Project Title)
福島発 世界へ ―世代を超え未来につなぐ被ばく体験のアーカイブ化とネットワーク構築 ―超学際、超地域、超世代で取り組む協働実践型研究を土台にして

From Fukushima to the World from Past to Future: An Interdisciplinary, Practice-Oriented Project to Build a Global Network of Hibakusha and Archive their Narratives
代表者名
(Representative)
藍原 寛子
Hiroko Aihara
代表者所属
(Organization)
Japan Perspective News
Japan Perspective News, Inc.
助成金額
(Grant Amount)
 7,100,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

東日本大震災に伴う福島県内の原発事故から丸2年が過ぎた。放射能の影響で避難生活を送る住民は避難先生活への適応や除染、賠償などの問題を抱えている。こうした困難は世界各地の「グローバルヒバクシャ」が過去に体験し、今も抱える共通の問題で、自然・社会環境の復旧はもとより、人間復興のための長期的な取り組みと支援が必要なのは言うまでもない。そのためには、国や地域、文化や言語、専門分野、そして何より世代を超えたネットワーキングにより、その体験を共有し、解決策を探り、得られた英知を次の世代にバトンタッチしていく必要がある。福島と宮城南部、原爆投下地の広島・長崎、原水爆実験地のマーシャル諸島の住民から、本企画研究者、福島を含む日本の大学・高校生が被ばく体験を聞き書きし、生きた言葉を未来に語り継ぐことを通じて、地域と年代を超えた交流ネットワークの構築を目指す。同時にそれらの証言を分析して記録化し、映像や文書でアーカイブ化する取り組みを通じて、核被害の実相分析と被ばく地の内外からの支援や活動の可能性について、平和学、環境社会学、教育学、ジャーナリズムの研究者、実践者が専門知を持って研究し、広く世界に向けて発信する。

 More than two years have passed since the Great East Japan Earthquake and the Fukushima Daiichi nuclear power plant accidents that occurred on March 11th, 2011. Today, there are more than 160,000 evacuees living in Fukushima who are confronted with various sociological difficulties, such as adapting to their new evacuated lives, decontamination issues of their hometowns, and managing their livelihood under insufficient compensation.
 Such difficulties being faced in Fukushima today are universal issues that transcend among "the Global Hibakusha", a term coined by researchers for people who have suffered from radiation exposure throughout our history. We must understand the seriousness of such issues, and through extensive study, find effective solutions to these issues.
 Fukushima is currently at a critical crossroad on its path to recovery from the tragic events of March 11th, 2011. As new Global Hibakushas, we must build human networks that go beyond conventional boundaries such as area, generations, languages, and expertise, and use such networks as a means to pass down sustained efforts towards Fukushima's recovery to younger generations.
 In this study, our team will establish an unique network consisting of those from contaminated areas in Fukushima and Miyagi Prefecture; Hiroshima and Nagasaki, where the world's only atomic bombs were dropped, and the Marshall Islands, used as a testing site for atomic and hydrogen bombs in the 50's. 
 At each research site, a group of Japanese high school students, Japanese university students, and Japanese researchers will work fist together to record narrative histories of the Global Hibakusha using voice recording, video, photo, and documentation. 
 Secondly, we will analyze these narrative histories, and create both visual and written archives. The creation of such archives will help in clearly articulating the real situation of the Global Hibakushas and their history to a global audience. 
 Finally, the study will conclude by having specialists and activists of peace studies, environmental sociology, pedagogy, and journalism collaborate together to analyze and examine what types of support are necessary for the Global Hibakusha using these archives, and articulate their findings to a global audience.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

本プロジェクトは東日本大震災から2 年8 ヶ月が過ぎた2013 年11 月にスタートした。発災直後 から自然災害と原発事故の問題、健康や環境への影響、避難や防護や除染の問題が議論されてきた が、3 年目に入った当時は、さらに長期化する15 万人以上の避難者の避難生活の実態が十分に把握 されず、支援が不足しているという問題が深刻な問題の一つとして把握され始めていた。国際社会にも 大きなインパクトを与えた福島第一原発事故をどう理解し、長期化する被ばく問題にどう向き合っていく かは喫緊の課題であった。私たち研究グループは、この問題に対して、各自がもつ専門性を融合し、さ らに国境を超え、そして若い世代が参加して知と体験のネットワークと、そのプラットフォームを構築す ることを目標に、研究と実践の両面からプロジェクトを開始した。

無力な存在ではなく、未来への叡智を築く者として―知とネットワークの蓄積
 本プロジェクトでは、まず、原発や核の被災地の市民や被災者が、国や地域、年代も言語も超 えて対話の回路を開くことにより、失われた自信と尊厳を取り戻すだけでなく、新たに獲得し、 エンパワーしていくことを目指した。特に、本メンバーが参加しているグローバルヒバクシャ研 究会(本共同研究の主要研究者竹峰が共同代表)が打ち出す、世界中に多数存在している核、放 射能の被害者を「グローバルヒバクシャ」ととらえる視点を援用し、福島はもちろんのこと、マ ーシャル諸島共和国、広島、長崎でそれぞれ聞き書きを行った。
 マーシャル諸島共和国には2014年3月の「ビキニ被ばく」60年のメモリアルの式典参加を含 め、大学生・大学院生4人、本プロジェクトメンバー2人が参加して、現地の方々の被ばく体験 を伺うとともに交流を深め、ネットワークを広げた。その後、個人研究等で大学院生1人、プロ ジェクトメンバー2人が同地を再訪した。こちらから訪問するだけでなく、マーシャル諸島から ヒバクシャや支援活動をしている人を招いて、彼らの体験知を若者世代とともに共有し、市民レ ベルでのネットワーク構築を図った。 
 福島では5回の聞き書きを実施するとともに、広島でも2回、長崎でも1回、現地で聞き書き 調査を実施した。
 以上の聞き書きは、本メンバーの4人だけでなく、福島の学生、福島出身の学生、東京の学生 も参加して実施した。また福島県内の一般市民、高校教員、新聞記者、他大学の研究者らとも協 同して進め、ネットワークを拡げながら、常にオープンな場で、自由に議論する時間を設けた。

超学際、超地域、超世代で取り組む協働実践型研究-多角的検証と分析を実現
1. 超学際的研究 研究メンバーの専門性、領域を超えて、多様な知恵を連携させ、原発事故の その後の持続可能な社会、多様性のある柔軟な未来型共生社会の実現を目指すための道筋を 探った。主に社会学等における被爆地の生活史調査などの手法や核実験被災地の地域研究、 公害問題をめぐる環境社会学の視点、平和学的視点などを参照しつつ、「聞き書き」を実施し、一人ひとりの被ばく体験から、3.11に伴う原発事故がもたらした被害像を浮か び上がらせる研究を行いつつ、対話を重ねた。この実践を通して、原発事故や放射能汚染といっ た複雑な問題に向き合い、解決に向けた方途を探る「対話の場」の持つ可能性と今後の課題を抽 出した。
2. 超地域的研究 原発事故被災地である福島と、原爆被災地広島・長崎、そして核実験被災地 であるマーシャル諸島の住民の参加と協力により、「グローバルヒバクシャ」という概念の もと、同じ「核」による被災地・被災者という共通認識の確認とともに、この問題に今後ど のように向き合っていけばよいのかについて継続的な対話を積み上げていくためのネット ワークの形成に取り組んだ。その過程で、それぞれの地域がもつ課題の共通点や差異を確認 しつつ、この問題の背景にある国際的な構造についての認識や探究が不可欠であることも確 認できた。
3. 超世代的研究 福島原発事故を経験した高校生、大学生の若者世代から、80代までの高齢 世代を含め、世代を超えて、過去、現在、そして未来を見据えた聞き書きを行った。また福 島や避難先に暮らす子育て世代の人々、留まって放射能汚染の被害と闘う生産者など様々な 立場で原発事故と向き合う人々の相互交流を一定図ることができた。

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