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助成対象詳細(Details)

   

2013 研究助成 Research Grant Program  /  共同研究助成A2  
助成番号
(Grant Number)
D13-R-0843
題目
(Project Title)
既存建築を使い続けていくための諸制度見直し研究
Towards a Proposal to Improve the Legal System for the Continual Use of Historical Buildings

代表者名
(Representative)
鰺坂  徹
Toru Ajisaka
代表者所属
(Organization)
鹿児島大学大学院理工学研究科
Graduate School of Science and Engineering, Kagoshima University
助成金額
(Grant Amount)
 3,100,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

 JR東京駅の例を筆頭に、近年、歴史的建造物を使い続けながら保存していこうという関心が高まってきている。一方で、防災面の強化、建築基準法の適用の厳格化などにより、歴史的建造物の増改築や用途変更などがますます難しくなってきている。建築は使い続けていかないと朽ち果てていくものであり、現代社会において、保存再生は機能性の向上や用途変更等の改造が不可欠である。
 そうした社会的状況に対して、我が国の諸制度は「新築」の建築物に対して適用されることを前提に作られているため、消防法や建築基準法など審査や運用に、様々な見直しが求められている。我が国の文化遺産である歴史的建造物を使い続け、文化の継承を図るためにも、先進的欧米事例も参考とし関連する諸制度全般を見直し、関係省庁に要望書として提言したい。
 提言に当たっては、法制度の専門家である弁護士会の専門委員の協力を仰ぎ、より具体的で、実効性のある要望書としてまとめる。まとめた要望書は、シンポジウム等で広く社会に問いかけ、さらには国交省、文化庁、総務庁等の関連省庁に提出し、改善を働きかけていく予定である。



 In recent years, as in the leading example of the JR Tokyo Station, there is a growing interest in "living heritages", historical buildings that have been preserved while utilized. On the other hand, it is becoming more difficult to add on to or refurbish such historical buildings, or change their use because of the need for disaster prevention and the strict application of the Building Standards Act. If buildings are not continuously used, they will deteriorate. In modern societies, in order to preserve and restore historical buildings, it is essential to improve their functions, change their use, or repair them.
 To respond to such circumstances, it is necessary to review, in various aspects, the examination rules and the actual application of the Building Standards Act and the Fire Service Act from the point of view that the existing legal system in Japan including these laws has been legislated on the premise that    it should be applied basically to "new" buildings. In order to promote the continual use of historical buildings that are the precious heritage of Japan and to preserve Japanese culture for the next generation, we will refer to cases in Europe and the U.S. and will review the related legal systems in general. Subsequently, we will submit a proposal to relevant ministries and agencies to improve the laws.
 In submitting the proposal, we will consult with expert advisors of the Tokyo Bar Association, legal experts of the relevant laws, and create a practical output. We will widely ask the general public for its opinions at symposiums, etc. In addition, we will submit the proposal to associated ministries and government offices such as the Ministry of Land, Infrastructure and Transport, the Agency for Cultural Affairs, and the Ministry of International Affairs and Communications. In this manner, we will aim to specifically improve the laws related to historical buildings.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

なぜ日本では歴史的な建築物が使い続けられないのだろうか。今でも、まちの記憶のひとつとなっていたランドマーク、文化財と言ってもおかしくないような歴史的建築物が、建て替えられている。欧米の保全型都市計画のもとでは、建て替えが規制され、「記憶を重ねるまち」が醸成されそのまちにしかない景観が来訪者を迎えてくれる。しかし、日本の景観は、次々と建て替えられ「記憶を亡くしたまち」になり、どこもちぐはぐで同じようなまちなみになりつつある。この背景には、都市や建築をとりまく制度が影響している。そこで、日本建築家協会再生部会の建築家と東京弁護士会歴史建造物部会の弁護士が、専門分野を越えて協力し、既存建築を使い続けていくために何が問題となっているのかを改めて見直し、諸制度の問題を明らかにすることを目的に研究に着手した。まちと建築に関わる諸制度としては、直接的には、都市計画法、建築基準法、消防法、文化財保護法等がある。バリアフリー、緑化、省エネルギーといった建築を取り巻く法律・条例や、間接的には税法上の問題や憲法で定められている財産権まで波及する。既存建築を使い続ける際に最も大きな問題となっている建築基準法について重点的に調査研究を実施した。
 現在の建築基準法とその関連法規は、戦後1950年に施行されたが、大震災や高度成長にともなう建築物の高層化大規模化により、幾度も改正されてきた。その結果、建築基準法が施行される以前の建築や、竣工時の基準法に適合していた建築が、最新の建築基準法に適合しないといった問題が生じている。これらの建築を「既存不適格建築」と称している。建築基準法では、新築だけでなく、大規模な改修増築・用途の変更の際に確認申請が必要となり、建築物を最新の建築基準法に適合させなくてはならない。「既存不適格建築」は、竣工後に増改築を行わず、建てられた状態で使い続けるならば問題は生じないが、改修・増築や用途を変更する際に現在の建築基準法に適合させる必要が生じる。この増改築や用途変更の確認申請が既存建築にとって、致命的な問題を引き起こす。現在の耐震基準に適合させるため耐震壁やブレースが必要のため外観が変わり使いにくくなり、また防火シャッター、防火戸等で防火区画する必要が生じてしまうといった事象である。歴史的な既存建築がもっていた大切なオーセンティシティが失われてしまい、まったく別の建物のように改修されてしまうことを目の当たりにする。場合により、遡及すべき改修工事費が嵩み、改修しても意味が無いからと解体されてしまう事例もあるほどである。                                                                                   注1
 一方、国宝や重要文化財といった文化財の場合建築基準法三条により建築基準法を適用されない。  また、都道府県や市町村の指定文化財も建築審査会の同意を経て、同様に建築基準法建築基準法が適用されない。今、建築基準法三条が、歴史的な既存建築を再生するための「伝家の宝刀」となる可能性がある。しかも1993年の改正により、地方自治体が「その他条例」を定め、現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物=「保存建築物」を指定し、特定行政庁が建築審査会の同意を得れば、建築基準法を重要文化財と同様、建築基準法を適用除外にできるようになった。しかし、調査の結果、残念ながら、「伝家の宝刀」状態でなかなか使われていない。現在、「その他条例」を定めて建築基準法の適用除外を実施しているのは、京都市、神戸市、萩市、横浜市、福岡市等で、運用実績があるのは京都市(2件)、神戸市(1件)、萩市(1件)と非常に限られており、対象も公共建築が多い。その理由としては、建築審査会の同意基準が不明確であること、適用除外した建築で事故が生じた時の責任の所在、自治体に条例作成と保存建築物を指定する余力のないことが揚げられる。過去の判例から考察すると、竣工時が適法で適切な管理が行われていれば、関係者に責任が及ぶ可能性は低く、社会通念上適切な同意であれば責任を問われる可能性は低い。同意基準は詳細まで規定すると基準法と同じことになるため、安全確保を基準法と異なる代替策により同意し、人命確保と火災を局所にとどめることを目標とした基準を作成することが運用をより普遍化すると考えられ、保存活用計画もより簡便な書式を手本とすることが望まれる。この調査研究から、「その他条例」を都道府県で定めて全国で適用できる体制を構築し、適用除外の事例を積み重ねていくことが、歴史的な既存建築を使い続けていくための諸制度の見直しの第一歩として有効であると考察する。
注1:登録有形文化財を除く
 

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