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助成対象詳細(Details)

   

2014 研究助成 Research Grant Program  /  B 個人研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D14-R-0011
題目
(Project Title)
近代日本の盲唖学校におけるコミュニティの特質 ―特別支援学校における歴史観獲得のために
The Distinction of the Community in Institution for the Blind and Deaf-Dumb of Modern Japan: Acquisition of Historical Perspective in Special Support Education Schools
代表者名
(Representative)
木下 知威
Tomotake Kinoshita
代表者所属
(Organization)
日本社会事業大学
Japan College of Social Work
助成金額
(Grant Amount)
 1,500,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

本研究は、近代日本における盲唖学校のコミュニティの特質を明らかにする。盲唖学校は、近代日本において盲人と聾者に一般教育・専門教育を行うことで経済的自立を促した学校である。盲学校・聾学校の原素といえるが、学校教育法の改正(平成18年)によって、「特別支援学校」として統合できるようになった。ところが、異なる身体障害をもつ当事者が集うことによる学校管理の困難、障害ごとに形成されたコミュニティが失われることの危機感による反対運動がある。このため、特別支援学校の評価と今後の運営に関する指標が定まっていない。
 そこで、盲唖学校と特別支援学校を関係づける必要があるのではないか。盲人と聾者が共存していた盲唖学校を対象に史料の分析と卒業生のヒアリングを行い、コミュニティの特質を明らかにする。これによって特別支援学校の歴史的視点を獲得し、今後のデザインや運営指針に反映させたい。近代史のなかに盲人・聾者を織り込んだ歴史観を構築し、様々な障害者と周囲の人々の関係のあり方という新たな価値をつくりだすことを目指す。

     This study elucidates the characteristics of community in Institution for the Blind and Deaf-Dumb in Modern Japan. 
     Institution for the Blind and Deaf-Dumb performs general education and vocational education to the deaf or blind persons, encouraging their economic independence. This school is the origin of the School for the Deaf and the Blind in Japan. In 2006, due to the amendment of the "School Education Law", School for the Deaf and the Blind, school for physically handicapped or mentally retarded was integrated into a special support education school.  
     This has complicated school management and establishment of communities since students of different disabilities are put in the same school. Opposition movement by parents, teachers and students of the school and graduates have occurred, yet evaluation of special support education schools has not been determined.
     In order to solve this situation this paper focuses on the form of community, targeting Institution for the Blind and Deaf-Dumb for the planning of special support education schools. This research is conducted by analyzing the student rosters, list of graduates, administrative documents, and alumni bulletin of Institution for the Blind and Deaf-Dumb. Based on the archives, database of the person involved in the Institution for the Blind and Deaf-Dumb will be created. Also, interviews will be conducted to graduates of institution for the Blind and Deaf-Dumb.
     In conclusion, the results of the study will be applied in lectures and workshop in special needs schools. By analyzing special needs schools and Institution for the Blind and Deaf-Dumb from a historical perspective, I plan to find a new perspective and value of the relationship between people with various disabilities.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

(1)盲唖学校・特別支援学校に関する解説
 盲唖学校(もうあがっこう)は、視覚障害・聴覚障害をもつ人が自立生活を営めるよう、一般教育・職業教育を行った学校である。京都盲唖院(明治11年)と東京盲唖学校(明治13年、楽善会訓盲院(盲学校の意)として開校)の2校が主導的な役割を果たし、明治末期には全国で約40-50校が運営されていた。しかし、盲・聾教育法の相違より大正12年に文部省の省令「盲学校及聾唖学校令」が制定されることとなった。これによって、昭和戦後にいたるまで盲学校と聾学校に分離していく。また、戦後の義務化を経て、平成19年に学校教育法の一部改正によって盲・聾・養護学校は「特別支援学校」と統合・改称することが可能となった経緯がある。

(2)課題の所在
 この特別支援学校について、現場からは教育の専門性、コミュニティ、文化的基盤の喪失を危惧する声がある。また、学校にある文書・写真・教材などの歴史的資料の調査・整備不足によって、活用の道筋が乏しく、特別支援学校と盲唖学校の歴史的な関連性を見出しにくいという課題もある。また、盲唖学校に関する既往研究では、障害ごとに区分して研究する、もしくは教育史の視点で分析するものが中心である。

(3)研究の目的と実施した内容
 これらの課題について、本プロジェクトでは盲唖学校がもつ「異なる身体障害者が同じ場所に通学していた」という点に着目し、盲唖学校の基本情報とコミュニティの特質について明らかにし、盲唖学校と特別支援学校の間の歴史的視点を得ることを目的とする。これに応じて、3点の観点から調査分析を行った。
A、代表的な盲学校・聾学校と図書館・博物館などにおける史料調査・収集。
B、盲学校・聾学校における資料の整理状況・運営状況についての聞き取り。
C、盲唖学校に関する人物の経歴と言説の比較分析

(4)得られた知見と成果について
 盲唖学校は大きく分けて、学校単位と師範学校などの一教室単位に区分できる。この背景として、盲唖教育の専門性の高さや地域の需要性が関わっている。
 これに基づく盲唖学校におけるコミュニティは、地域の有力者や人々によるフィランソロピー、慈善観、障害を持つ当事者だけでなく盲唖学校に通学せずに生活をした障害者たちによって形成されていた。単に教員と生徒・家族という学校の関係者で構成されるコミュニティではなく、それを超えた輻輳的なコミュニティが形成されていた。この知見は、近代から現代に至るまでの障害者教育において参照点になるだけでなく、日本におけるダイバーシティにおいて歴史的視点が得られるという新たな価値を提供するものであると考えている。
 成果物としては、論文や研究発表など4件を公表した。今後は、さらにコミュニティについて分析を進め、国内外の専門家から非専門家までの幅広い層に対して発信していきたいと計画している。

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