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助成対象詳細(Details)

   

2014 研究助成 Research Grant Program  /  A 共同研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D14-R-0225
題目
(Project Title)
文化としての看取り ―介護老人福祉施設における「より良い看取り」実現への取り組み
Promoting "End-of-life Care Culture" in Facilities for the Aged in Japan by Means of "Mutual Action Research"
代表者名
(Representative)
小山千加代
Tikayo Koyama
代表者所属
(Organization)
新潟大学大学院保健学研究科
Graduate School of Health Sciences, Niigata University
助成金額
(Grant Amount)
 2,000,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

人生の終焉の迎え方は、人々が最期に搬送された場所や暮らしている場所の「看取りの文化」に左右されると思われる。本企画は、改定介護保険法制定までは看取りの機能を持たなかった介護老人福祉施設においても、利用者個々の人生の終焉を引き受け、施設ならではの看取りの文化が醸成されることを願って行われる研究であり、看取りの蓄積が少ない施設において、「より良い看取り」を実現しようとするものである。対象とする施設は「看取り介護」の質を高めたい希望のある介護老人福祉施設1か所で、研究者と現場の実践者とが協働し、研究チームを組織して、相互作用しながら現場に変化をもたらすアクションリサーチの手法を用いる。研究の目的は「より良い看取り」実現への取り組みに際して、チームおよび組織にもたらされた意識的・行動的変化の過程を解釈学的・弁証法的に分析し、記述することである。換言すれば、意識的・行動的変化の過程を経て、生活施設ならではの文化に根差した「より良い看取り」が実現すると考えて行われる研究である。
 その理論的基盤はロジャーズ、ニューマンの「統一体的かつ変容的パラダイム」に依っている。
 本研究は、研究者と実践者が人間の尊厳とは何かを問い、施設ならではの看取りを実現しようとするものである。その根源的な問いに基づいた普遍的な価値としての「看取りの文化」を提示する。

     "How people face death" may be affected by the "end-of-life care culture" at the place where they are transported in their final moments or where they live. This study was conducted in the hope of achieving the following aims: (1) Individual users facing death will be accepted even at facilities covered by public aid providing long-term care to the elderly, that had previously not offered end-of-life care until the revised Long-Term Care Insurance Act came into effect; (2) an end-of-life care culture unique to each facility will be fostered; and (3) The "better end-of-life care" at facilities with little experience offering "end of life care", will be provided. The study was conducted at the facility which is covered by public aid providing long-term care to the elderly, and is aspired to improve its "end-of-life care". The researchers and practicing staff at the facility collaborating to form a research team and using the "action research" method to bring change to on-site care through mutual interaction. The aim of this study was to perform interpretive and dialectical analysis and describe the process of perceptive and behavioral changes brought about by the team and organization in an approach to achieve "better end-of-life care". In other words, this study was conducted in the belief, that "better end-of-life care" rooted in the culture unique to community facilities can be achieved through the processes of perceptive and behavioral change. This theory is based on "Rogers-Newman's unitary-transformative paradigm".
     The present study may not only contribute to nurturing the end-of-life care culture unique to each facility, but also become a basis for improving social evaluation of care sites and offering suggestions for coordination, between care and nursing, as well as, between researchers and practitioners.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

1. 課題、また、その課題をとりあげた理由・経緯 : 研究課題は「文化としての看取りー介護老人福祉施設における「より良い看取り」実現への取り組み」である。本企画は、改定介護保険法制定までは看取りの機能を持たなかった介護老人福祉施設においても、利用者個々の人生の終焉を引き受け、施設ならではの看取りの文化が醸成されることを願って行われた研究であり、看取りの蓄積が少ない施設における「より良い看取り」の実現を目指した。対象とした施設は「看取り介護」の質を高めたい希望のある東京都内の介護老人福祉施設1か所で、研究者と現場の実践者とが協働し、研究チームを組織して、相互作用しながら現場に変化をもたらすアクションリサーチの手法を用いた。研究の目的は「より良い看取り」実現への取り組みに際して、チームおよび組織にもたらされた意識的・行動的変化の過程を解釈学的・弁証法的に分析し、記述することである。換言すれば、意識的・行動的変化の過程を経て、生活施設ならではの文化に根差した「より良い看取り」が実現すると考えて行われた研究である。理論的基盤はロジャーズ、ニューマンの「統一体的かつ変容的パラダイム」に依っている。
2. プロジェクトで実施した研究の内容・方法 : 研究者が現場の介護福祉施設職員と協働して行う実践研究として、まずは施設の研究窓口となる施設長および介護・看護課長と研究の目的・方法について打合せを重ね、①「勉強会チーム」を組織した。チームは、施設長、看護師、介護士、相談員、栄養士、機能訓練指導員(PT)など、約15名で構成され、勉強会の開催は月に1度、勤務内15:30-16:30(17:00まで)とし、施設の会議室で実施した。テーマは「生活の場としての施設におけるより良い看取り」である。このチームは施設において「サービス向上委員会」の位置づけで活動計画が立てられた。②平成27年9月より「看取りの勉強会」を開催し、平成28年11月の12回目を最終回とした。なお、平成29年3月まではサービス向上委員会として施設職員のみで「勉強会」が開催されており、次年度の施設における活動計画においても「勉強会」の継続が盛り込まれている。③7回目までの「勉強会」で概ね「看取りへの願い」が表明され、8回目以降の「勉強会」で、「看取りへの願い」実現のための具体的方法が話し合われた。各階で少しずつ看取りの事例が始まってからは、事例報告として検討し、互いにケアの改善点を提案し合うようにした。④現場の動きが止まることはないが、12回目の「勉強会」を研究終了の区切りとした。
3. プロジェクトの結果及び今後の課題など : 7回の「勉強会」において、【食事をはじめとした日常生活援助の工夫をしよう】【今まで通りの関係を大切にしてケアをしよう】【チームがまとまり個々看取りの不安をやわらげよう】【看取りをよくするために勉強を続けよう】【個々の立場で出来ることを考えよう】【他の人のケアもあるが、気にかけてそばに行こう】という「看取りへの願い」が表明された。その後は実践事例を重ねていった。1〜12回目に至る「勉強会チーム」の意識と行動の変化の過程を辿ると、【互いに意見を出し合うことが大切】という他職種の個々の思いを知って自らが触発される局面、【皆で考えることが嬉しい】という願いを表明することへの意味を感じる局面、【手立てが見つけられない】という看取りへの思いは高いが具体的な方策が語れない局面、【実践の中で知恵を出し合う】という事例を通して、具体的方策を導き、改善に努める局面として捉えられた。これらの成果は日本老年看護学会において発表した。今後は論文として発表し、介護保険施設の役割・機能の可能性と現場に残された問題への政策・制度への提言に結びつけることが課題と考えている。


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