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助成対象詳細(Details)

   

2014 研究助成 Research Grant Program  /  A 共同研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D14-R-0270
題目
(Project Title)
「差別」の構造化と障がい者差別を黙認しない行動変容プログラムの構築 ―「傍観」「無関心」「記述的理解」からの移行
Structuring of "Discrimination" and Development of the Action Transformation Program to Act without the Tacit Consent for Disability Discrimination: Shift from "Looking on," "Indifference," and "Descriptive Understanding"
代表者名
(Representative)
永浜 明子
Akiko Nagahama
代表者所属
(Organization)
立命館大学スポーツ健康科学部
Faculty of Sport and Health Science, Ritsumeikan University
助成金額
(Grant Amount)
2,500,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

  本研究の目的は、障がい者に対する差別行為を「傍観」「無関心」「記述的理解」の視点から捉え、障がい者に対する差別行為を黙認しない行動を起こすための教育プログラムを構築・検証することにある。
 研究Ⅰでは、差別場面に居合わせた人がとる行動に対する率直な感想、自身がその場に居合わせた場合に取る行動とその理由を分析し、傍観が社会全体の差別を生み出すことを検証する。 
 研究Ⅱでは、発達障がいのある青年と数年以上関わりのある人を対象に詳細な聴き取りを行い、関わりと差別意識の有無や理解と無関心の関係性などを定性的に検証する。 
 研究Ⅲでは、研究Ⅰおよび研究Ⅱの結果から(1)傍観が生む差別、(2)無関心が生む差別に重点を置いた教育プログラムを構築、大学生・一般の人に実施する。さらに、定量・定性的な手法を用いてプログラムの効果検証を行い、内容の改善・修正を行う。 
 本研究で構築するプログラムは、単なる関わりの経験や記述的な理解を促す教育プログラムでは成果を得られていない、差別行為に対し行動を起こすための教育プログラムであり、真の理解、すなわち相互作用・行為としての日常的な関係を構築するために寄与できる。

     The purpose of this research is to regard a discrimination against a person with disability act from a viewpoint of "looking on," "descriptive understanding," and "unconcern." The second one is to develop the educational program for taking the action which does not tolerate the discriminating act to a person with disability. 
     In research I, a candidate watches the scene of discrimination against a person with disability and describes honest impression, action that is predicted when he/she were in the place and its reason. These results are proved that looking on produces discrimination of the Great Society.
     In research II, a detailed interview is carried out for persons who associate with a person with developmental disorder. Then relation with relationship and discrimination consciousness and relation with understanding and unconcern are examined. 
     In research III, the new educational program is developed based on a result of research I and II. The program includes two important contents, (1) discrimination that looking on produces (2) discrimination that indifference produces. This program is provided to university students and persons in a community. Then, the effectiveness of program is examined using quantitative and qualitative methods. Furthermore, the program is improved based on the result and is modified.
     The educational program developed in this research has a purpose to take action for the discrimination act to a person with disability that had only few effects by the conventional program. It contributes understanding a person with disability in true meaning, namely the construction of relationship with a person with and without disability. 

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

■研究の背景
2016年4月1日から施行された「障害を理由とする差別の解消の促進に関する法律」は根強い障がい者差別の表れとも言える。学校では、「道徳」や「人権」教育を通じ、障がい理解や差別を生まないために個への教育に力が注がれてきた。しかし、差別は、集団・他者の視線下での差別行為に対する傍観や無関心から生み出される場合も多く、その内実を知ることは重要である。

■研究の目的
本研究の目的は、障がい者への差別行為を、「傍観」、差別意識の有無、「理解」と「無関心」の関係という側面から明らかにし、障がい者差別行為を黙認しない行動を起こすための教育プログラム開発の基礎資料を得ることであり、以下の3つの研究を設定した。
研究Ⅰ:ビデオ視聴と状況設定したケースを用い、差別場面でとる行動とその理由、差別の判断基準から差別場面における「傍観・無関心」の素因を、定量的調査に基づき抽出する。
研究Ⅱ:グループでの討議や対話から、「無関心・傍観」「理解と行動の乖離」の素因、「個性を標榜する教育」の功罪を明らかにする。
研究Ⅲ:定性的研究により障がいのある人とのかかわりが、障がいに対する意識や価値観、倫理感などの変化に与える影響の有無と、その内実について明らかにする。

■研究の内容・方法
研究Ⅰ:大学生を対象に、①ビデオ視聴(約420名)、②状況設定したケースの検討(約220名)に調査の協力を依頼した。①では、差別場面に居合わせた人の行動を記録した映像を視聴し、自身がとる行動と理由を問う質問紙調査を実施した。②では、複数設定した場面に対する差別の判断基準(差別か否か)を問い、集団討議による状況判断と行動の変容を調査した。
研究Ⅱ:大学生5名×3グループ(約2時間を各グループ25回程度)、一般市民5名(約2時間を5回)による対話を実施し、質的分析方法を用いて、「傍観・無関心」「理解と行動の乖離」、「個性を標榜する教育」に関する要因を抽出した。
研究Ⅲ:障がいのある学生と数年関わった大学教職員と学友に対し、対面式のインタビューを3~4回(1回2時間程度)行い、質的分析により、①かかわりによる意識と価値観の変化、②中立的・積極的かかわりと差別意識との関連を検討した。

■研究の結果および発信対象・方法
研究Ⅰ:障がいのある人への積極的、肯定的かかわりの意識は、男子大学生よりも女子大学生の方が高かった。差別場面に遭遇した時にとる行動は、集団討議前には、「傍観する」と回答し、集団討議後、「傍観しない」と変容した学生の割合は、男女共に20%以上の数値を示した。
研究Ⅱ:「無関心や傍観」に最も影響を与える要因として、自らを取り巻く現実的な「友人」で形成される「小さな社会」と「他者の視線(自身の擁護)」の2つが抽出された。若者に対するプログラム開発では、「してはいけない」から「したくない」といった思考の転換を図ること、「伝授」ではなく、行為や事象、物事の本質を考える具体的な場面を想定し、思考を巡らせる「きっかけ」となるような学習機会が必要であることがわかった。研究Ⅰ・Ⅱの結果から、様々な人々の考えに触れることが、思考を巡らせ、行動を変容するきっかけになると示唆された。
研究Ⅲ:障がいのある学生とかかわりのあった全ての協力者の視点が「障がい」ではなく、「学びたい意欲が強い」学生、「Y(障がいのある学生)はYだから」という「個」であった。一方、「個」として捉えることが障がいがあることによる生きにくさへの理解を阻む一因ともなっており、「障がい」と「障がいのある人」への理解を促すことは、単純な図式によって施せないということが明らかになった。
 これらの結果から、プロジェクトに参加した大学生15名が差別や傍観について考える「きっかけ」となるよう作成した冊子を用い、セミナーを2回実施した。今後もこの冊子を活用した授業・ワークショップを行う。



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