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助成対象詳細(Details)

   

2014 研究助成 Research Grant Program  /  A 共同研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D14-R-0637
題目
(Project Title)
「理想の幸福」を用いた幸福概念の多様性に関する研究 ―人々の声に耳を傾ける聞き取り調査を通じて
Commonalities and Differences in the Meaning of Happiness: People's Voices about "Ideal Happiness"
代表者名
(Representative)
高橋 義明
Yoshiaki Takahashi
代表者所属
(Organization)
公益財団法人世界平和研究所
Institute for International Policy Studies
助成金額
(Grant Amount)
 4,000,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

本研究の目的は人々の声に耳を傾ける聞き取り調査を通じて、人々の幸福概念の多様性を捉え、21世紀の目指すべき社会像を捉えることである。
近年、欧州連合、ブータン等において幸福度指標が議論され、幸せへの政策的関心が高まっている。アリストテレスが述べた通り、人が生きる意味は本来幸福にあり、経済指標でなく、幸せに焦点を当てる政策的意義は大きい。しかし、現在の科学的幸福度研究は大規模社会調査に依拠している。このような調査では多様な幸福概念を把握することは不可能である。そこで本調査では「あなたにとって幸福とは何か」だけでなく、現在の幸福の投影元である「理想(イデア)」の幸福を尋ね、自由に回答してもらうことで幸福概念の類似点、相違点を捉えることを目指す。また、21世紀において重要になっている他者、自然とのバランス意識が幸福概念に内包されているかを考察する。具体的には日本(国連報告書43位)と世界的に幸福度が高い欧州のオランダ(同4位)、米州のコスタリカ(同12位)の3カ国を対象に国際研究グループが聞き取り調査を実施し、その声を統計手法も利用して分析・執筆を行い、理想の幸福の重要性を世界に問う。

     The purpose of this project is to capture commonalities and differences in the meaning of happiness through qualitative interviews in order to listen to people's voices and reconsider what kind of society we should achieve in 21st Century. 
     In recent years, policy makers have become more interested in subjective well-being than they were before. The European Commission, UK, Bhutan and Japan started projects to develop well-being indicators. Aristotle mentioned that happiness is the meaning and the purpose of life. Therefore, it is inevitable that policy-makers focus not on economic indicators but on happiness. However, recent happiness studies rely heavily on large sample size, quantitative surveys. This kind of surveys cannot capture variety of the meaning of happiness. In this research, we are going to ask people not only about current happiness but also "ideal" happiness and hear their voices. By analyzing their voices, we challenge to capture commonalities and differences in the meaning of happiness. Moreover, well balance between our own happiness and other's happiness or nature is essential for 21st century. We try to test if our ideal happiness includes balance between others and nature. Our targeted areas are Japan (43nd in UN World Happiness Report) from Asia, the Netherland (4th in UN report) from Europe, and Costa Rica (12nd in UN report) from Latin America. We will interview around 100-200 persons in each country, analyze their voices with text mining and write academic papers. We challenge a new insight of happiness to global debates.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

1.研究目的・背景
 本研究の目的は人々の声に耳を傾ける聞き取り調査を通じて、人々の幸福概念の多様性を捉え、21世紀の目指すべき社会像を捉えることである。
 近年、幸せへの政策的関心が高まっている。アリストテレスが述べた通り、人が生きる意味は本来幸福にあり、経済指標でなく、幸せに焦点を当てる政策的意義は大きい。しかし、現在の科学的幸福度研究は大規模社会調査に依拠している。このような調査では多様な幸福概念を把握することは不可能である。そこで本研究では「あなたにとって幸福とは何か」だけでなく、現在の幸福の投影元である「理想(イデア)」の幸福を尋ね、自由に回答してもらうことで幸福概念の類似点、相違点を捉えること、そして21世紀において重要になっている他者とのバランス意識が幸福概念に内包されていることを考察した。
2.研究方法
 本研究の対象国は日本(2014年世界幸福報告書43位)に加え、世界的に幸福度が高い欧州のオランダ(同4位)、米州のコスタリカ(同12位)の3カ国とした。研究者グループが対象者に直接面談して行う聞き取り調査を実施した。インタビュー対象者を選定するサンプリングは、多様な主体から声を集めるため、層化多段階抽出法とした。結果として日本165名(男性82名、女性78名)、オランダ45名(男性20名、女性25名)、コスタリカ100名(男性36名、女性63名、その他1名)に対して総計235時間52分に渡って幸福について話を聞くことができた。
3.結果
 結果をみてみると、幸福度(平均値)は10点満点で日本7.37点、オランダ7.88点、コスタリカ8.50点となり、先行研究の通りとなった。理想の幸福感(平均値)も10点満点でそれぞれ7.27点、7.60点、8.61点となった。特に注目すべきはコスタリカでは44%が「幸せだけを感じている状態」を理想と考えているのに対して、オランダ、日本で6.5%、10.0%しかいなかった。一方、「幸せと不幸せが半々」を理想と考えるのは日本8.8%、コスタリカ8.0%に対してオランダ2.1%と大きな差があった。また、幸福度と理想の幸福感は国レベルではほぼ同水準であるが、個人レベルでは相関していない(日0.22、オ0.02、コ0.06)。つまり、同じレベルの幸福度を回答していたとしても理想の幸福感の回答は全く違っていることが明らかになった。
また、悲観性と「理想の幸福度」はコスタリカで正、オランダでなし、日本で負であった。この結果は「理想の幸福度」の高低と合致する。相対的に理想の幸福感が低い日本人においては、悲観的でないほど「幸せで良いのだ」という認識が強いと推察される。一方、コスタリカで100%に近い幸福こそが理想だと考える者は、現在の自らの状況を悲観的に捉えがちなことを反映した可能性がある。これらは文化や思考の違いによるものなのか、「理想の幸福度」得点の違いによる中心化傾向を示したものなのかなど、今後の課題として検討すべき点は多い。いずれにせよ「理想の幸福度」そのもののレベルとこれに対する悲観性の影響に国間で一致する順序性を認めたことから、「理想の幸福」を用いて幸福概念を検討する意義の大きさを確認できた。
また、本研究のインタビュー項目の一つに「自分だけでなく、身近なまわりの人も楽しい気持ちでいると思うか」などの協調的幸福感を尋ねたところ、コスタリカ>日本>オランダの順で国差が確認された。Hofstede(2001)の価値観の国文化次元としての個人・集団主義と整合的なことから協調的幸福感は集団主義文化の国で高く維持されていることが示唆された。
 幸福度研究へ一石を投じるため、今後は収集したデータを活用し、より多角的な分析を進め、学会誌等への投稿、ワークショップなどでの成果発表を行う等、積極的な発信を行っていきたい。

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