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助成対象詳細(Details)

   

2014 研究助成 Research Grant Program  /  B 個人研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D14-R-0993
題目
(Project Title)
生物多様性に基づく災害リスク削減の可能性の検討
Disaster Risk Reduction Based on Biodiversity Conservation
代表者名
(Representative)
森   章
Akira Mori
代表者所属
(Organization)
横浜国立大学環境情報研究院
Graduate School of Environment and Information Science, Yokohama National University
助成金額
(Grant Amount)
 1,500,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

人間社会を支えるにおいて、生物多様性の重要性はもはや概念的なものだけでは無くなりつつある。一方で、災害対応の分野では、生物多様性や生態系の保全による減災・防災の可能性が強調されつつあるが、その背景にあるプロセスはブラックボックスのままである。今後の気候変動に伴い極端気象の頻度や強度が増加する可能性がある。そこで本研究では、日本の国土の2/3を占める森林における樹木多様性と土砂災害リスクとの関係性を解析することで、「生物多様性に基づく災害リスク削減の可能性」を検証する。日本の国土整備は、現在重要な過渡期にあり、森林再生が大きな社会的課題でもある。ここで得られる知見は、国土の再整備のあり方を問う中で、工学的なインフラだけに頼らない、自然をベースにしたアプローチの礎となると期待される。さらには、本研究では、気候変動と土地利用のシナリオも考慮することで、環境変動下での今後の土地利用のあり方、生物多様性や生態系の保全の意義について示唆を提示する。このような分析は、世界的なフレームワーク(例えば、国際連合や国際自然保護連合など)においても、政策立案と実行上、有益な情報となり得ると期待している。

     There is a growing number of evidence showing that biodiversity is of fundamental in supporting humanity. However, less is known for how conserving ecosystems and biodiversity is effective for disaster risk reduction (DRR). Currently, there is a high probability of increasing intensity and frequency of weather extremes under the changing climate. In this regard, this study focuses on a possible linkage between tree diversity and erosion control in forest ecosystems in Japan. This study hypothesizes that there may be a reduced probability of soil erosion, flood and landslide in a watershed that have higher tree diversity. Knowledge gained from this study will benefit society that is required to reconsider land-use and land management. The study of biodiversity-DRR gives an important opportunity to global society including numerous international frameworks and governments to evaluate the possibility of nature-based solution to face uncertainty in the current era of global change.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

「生物多様性」に対する関心の高まりが著しい。生物多様性保全の取り組みは、さまざまなセクターや国際的枠組みなどでも多く見られるようになってきた。さらには、生物多様性の損失を防ぎ回復させることには、自然保護としての倫理的な価値だけでなく、社会にとっての実利的な意義を有することも明らかになりつつある。人間社会が自然より得る公益としての「生態系サービス」を保全するにおいて、生物多様性が必要であることが実証されつつある。

人間社会を支えるにおいて、生物多様性の重要性はもはや概念的なものだけでは無くなりつつある。一方で、災害対応の分野では、生物多様性の保全による減災・防災の可能性が強調されつつあるが、その背景にあるプロセスはブラックボックスのままである。そこで本研究では、日本の国土の2/3を占める森林における樹木多様性と土砂災害リスクとの関係性を解析することで、「生物多様性に基づく災害リスク削減の可能性」を検証した。

日本においては、木材需要をまかなうために、拡大造林がかつて広く行われた。その際、全国で洪水や土砂崩れが多発したことが経験的に知られており、その理由として、単一種の造林により土砂浸食や保水機能が低下したことが類推されている。この背景には以下のようなプロセスが考えられる。たとえば、地中における根の張り方は、樹種によって異なる。深く根を張る樹種もいれば、鉛直方向に根系を拡張する樹種もいる。ゆえに、林地に多様な種がいる方が、地下部のあらゆる場所に根を張ることとなり、土砂流亡を防ぐかもしれない。さらには、スギあるいはヒノキ林のような単一の針葉樹林は林床が暗く、下層植生が育たない。ゆえに、雨滴は土壌に直接打ち付けられることで、土壌浸食を促進させる。このようなメカニズムによって、樹種多様性の高い森林が流域の上流部分にある方が、洪水や土砂災害の軽減につながる可能性がある。

本研究では、日本全土を対象に、集水域ごとの森林の樹種数(林野庁・森林生態系多様性基礎調査データによる)と表層崩壊(国土地理院・国土数値情報による)との関係性を定量的に解析した。そこでまず、崩壊時の土砂流出量をハザードの指標として採用し、この変数を説明づけるモデルの構築を行った。説明変数として生物・非生物要因を用いた。この表層崩壊予測モデルの予測精度が、樹種多様性によりいかなる影響を受けるのかを解析した。その結果、樹種が高いほどにモデルの予測精度が高まることを見出した。言い換えると、樹種多様性を高く保つような土地利用は、災害予測に係る不確実性を減らすことに貢献し得ることが分かった。この成果は、米国の学術雑誌であるEnvironmental Managementに公表した。

本研究で得られた知見は、国土の再整備のあり方を問う中で、工学的なインフラだけに頼らない、自然をベースにしたアプローチの礎となると期待される。このような視点は、生態系を基軸とした防災・減災(Eco-DRR)、あるいは、グリーン・インフラストラクチャーの枠組みとして着目されており、国際的にも評価が急務である。ここで重要なことは、単に緑ある景観が災害抑止に資するわけでなく、如何なるプロセスをもって生態系が災害に寄与しているのかを解明する必要がある。自然度の高い土地利用による災害リスク削減については、その費用対効果など、多くの事項が検討されつつある。

一方で、自然が有する生物多様性そのものが、災害抑制にどのように貢献するのかについては、知見が乏しい。この点において、本研究は、「生物多様性-生態系機能」の研究によって培われた知見を応用し、生態系が災害リスクの削減につながる可能性について定量的評価を試みた数少ない研究成果である。本研究では、生物多様性の災害抑制に対する直接的な寄与は見出せなかったが、樹木多様性を高く維持する土地利用が災害予測に係る不確実性を削減し得ることを見出すことができた。


There is a growing number of evidence showing that biodiversity is fundamental for supporting humanity. However, less is known for how conserving ecosystems and biodiversity is effective in the context of disaster risk reduction (Eco-DDR). Currently, there is a high probability of increasing intensity and frequency of weather extremes under the changing climate. In this regard, this study focused on a possible linkage between tree diversity and erosion control in forest ecosystems in Japan. Although results were not straightforward and thus required careful interpretations, we found an increased model fitness for predicting risks of soil erosion and landslide in watersheds that have high tree species diversity. We expect that knowledge gained from this study will benefit society that is required to reconsider land-use and land management. The study of biodiversity-DDR gives an important opportunity to global society including numerous international frameworks and governments to evaluate the possibility of nature-based solution to face uncertainty in the current era of global change.

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