HOME

助成対象詳細(Details)

   

2015 イニシアティブ助成 Initiative Grants      
助成番号
(Grant Number)
D15-PI-0003
題目
(Project Title)
アジアにおける関わりの多様化に対応した市民研究プログラムの構築
Developing a Participatory Program for "Concerned Citizens" Exploring and Learning Asia: Towards New Relationship between Asia and Japan
代表者名
(Representative)
長田 紀之
NoriyukiOsada
代表者所属
(Organization)
日本貿易振興機構アジア経済研究所
Institute of Developing Economies-Japan External Trade Organization
助成金額
(Grant Amount)
5,000,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

本企画は、長期的にアジアに関心を持つ研究者と一般市民を「アジアに関わる市民」として捉え、彼らが世代・業種・専門を越えて交流・議論する「アジア関わりコンソーシアム」を設立する。その上で、アジアでの臨地研修や国内での研究セミナーなどを開催し、それらの実践を通じ、アジアを対象とする市民研究プログラムの構築を図る。
 現在、多くの日本人がアジア各地で勤務・就学し、また日本では、外国人就労者の増加等、草の根レベルの国際化が進展している。アジアと日本人との出会いの機会が広がるなかで、アジア研究の需要は多様化し、大学院でアジア研究を専攻した後に実業界に進む人や、仕事で関わったアジアに関心を持ち、退職して大学院で学ぶ人も相当数存在する。しかし、このような「アジアに関わる市民」の研鑽や交流の場は少ない。本企画は「アジアに関わる市民」に開かれた、新たな学びのプラットフォームを構築し、市民が社会に主体的に関わる次世代型市民社会における知的活動基盤のモデルとすることを目指す。
 企画実施にあたっては、過去22年間に渡りアジア各地で学生のフィールドワーク実習を開催してきた「アジア農村研究会」の人材とノウハウを活用する。

This project aims to construct a program for “Asia-concerned citizens” who have lifelong interests in Asia and are eager to keep studying about Asian societies. For this purpose, The Consortium for Asia-Concerned Citizens (CACCs) will be created as a platform for Asia-concerned citizens. By holding seminars regularly in major cities in Japan and organizing a fieldwork training course in an Asian country once a year, CACCs will enhance intercourse of Asia-concerned citizens with various backgrounds (generations, jobs and majors) and enable to deepen their personal experience and knowledge by preparing discussions and joint study/research projects.
 While many Japanese now work or study in Asia, the process of grassroots globalization has progressed within the Japanese society as seen in changes such as the significant increase of foreign laborers. It can be said that opportunities for Japanese to encounter Asia or Asians are more spread and diversified than ever before. Various demands for Asian studies have risen in this context. For example, not few students who have majored Asian studies in graduate schools enter into business instead of becoming scholars, whereas business persons leaving their job related to Asia to enter graduate schools and be engaged in Asian studies are increasing in number.
 Despite the wide presence of such Asia-concerned citizens, it is very difficult for them to find a suitable place in the society for studying and networking. This project attempts to develop a platform open widely to Asia-concerned citizens and present it as a model of an intellectual basis of the future society led by proactive citizens.
 The participants of the project are constituted largely from members of the Association of Asian Village Studies which has a reliable storage of know-how based on its activities in various Asian countries in the past 22 years.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

本プロジェクトは、狭義の職業的研究者のみでなく、実務家も含み、高い意識をもって自発的にアジアに関わる人々を「研究する市民」と概念化して、彼らが「研究する」ために方法や姿勢を学び合う場=プラットフォームを作り出すとともに、そうした人々のつながりを拡大してゆくための「市民研究プログラム」を構築することを目的とした。ここでいう「研究」とは、学問的方法論の一定の客観性を重んじながら、対象地域に真摯に向き合い、関与する姿勢をさしている。
 プラットフォームの構築については、既存のネットワーク型組織であるアジア農村研究会をそのような学び合いの場として再定義し、学会報告、公開セミナー・勉強会の開催、海外臨地調査の準備・実施、実務家を対象とした国内研修の企画・実施、ワークショップの開催などを通じて、アジア農村研究会の人的ネットワークを拡大・活性化させた。アジア農村研究会は、厳密なメンバーシップを定めておらず、「研究」についての理念をある程度共有した緩やかなつながりとして存在してきた。本プロジェクトのさまざまな行事は、こうした人材プールを活用することで、ネットワークをさらに広げるものとなった。また、ネットワークの基盤・参照点として、ウェブサイト(anoukai.com)やメーリングリストを立ち上げた。
 市民研究プログラムの構築については、まず、そうした課題を念頭に、南インド広域調査実習を準備・実施した。南インド広域調査実習とその準備過程では、当該地域を多角的に理解し、地域に特有の課題を考えるための臨地研修プログラム(7月実施)の作成を目的とした。具体的には、セミナーや勉強会を重ねて、基礎的な知識を身につけたうえで、複数人の調査団を組織して現地を実見し、改めて議論を重ね、課題を発見するというプログラムとなった。この間、南インドの地域的特性を把握するために諸分野からの知見の吸収をいかに行うか、南インドを共同調査のフィールドとした場合、どのような課題設定が可能か、という点を意識しつつ議論した。議論への参加者の多くは、専門外の研究者・大学院生や学部学生であったが、人数こそ限られていたものの、国際開発やコンサルティング、地域おこしに関わる人材の参加もあり、本プロジェクトの対象とする「研究する市民」が目に見えるかたちとなってあらわれてきた。
 「研究」をさらに「市民」へと開いていくために、10月には国際協力機構(FASID)と協力して、国際開発や地域おこしに携わる実務者を主たる対象とする「社会調査法研修」を実施した。
FASIDとの協力関係も、本プロジェクトのもとでネットワークを拡大するなか、新たに築かれたものである。この研修は、技術的な調査方法論の授業ではなく、ある地域なり社会なりを対象に調査する場合に、どのような情報をどのような方法でとるべきかを、その都度「考える/研究する」重要性を共有することを目指して実施した。研修の参加者からは、こうした趣旨に対して高い評価を得た。この研修を企画し実施するなかで、市民研究プログラムでは、「どのように研究するのか」という方法論の教授よりも、「なんのために研究するのか」という根本的な問いについて考える場や機会を提供することの方が、より重要であるとの結論に至った。こうした考えに基づき、狭義の職業的研究者のなかでも議論を深め、「研究」をより広く「市民」に開いていくために、本プロジェクトの締めくくりとして「フィールドワークを通じた世界観の形成 科学と感性の架橋 」と題するワークショップを東京と京都で開催した。
 「市民研究プログラム」については、本プロジェクトで、国内での実務者向け研修と海外での本格的調査実習という組み合わせが市民研究プログラムの一つのモデルとなる可能性が生まれた。実務者向け研修の企画・実施を通じて、「研究」入門書の執筆の具体的な展望も得られた。しかし、今後いっそうの、個別プログラムの企画・実施という実践の積み重ねが必要である。入門書の出版や実践の積み重ねによって、「研究する市民」のコミュニティの拡大と活性化を図り続けることが今後の課題となる。また、「研究する市民」のためのプラットフォーム作りについては、アジア農村研究会の再定義と活性化を行ったものの、恒常的な事務局や規約をもつ別組織への改組は行わなかった。これは、拘束性の少ない緩やかなネットワークという性質を維持するという点では有用だが、組織の存在の持続性という点では短所にもなりうる。実践の積み重ねは、組織の存続についてもきわめて重要である。
 

ホームページへのリンク ◆トヨタ財団WEBサイト内関連記事