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助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (B)個人研究助成  (B) Individual Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0022
題目
(Project Title)
カザフスタン共和国アラル海地域におけるサクサウール植林活動の持続性と多元性の向上―地域社会と文化的背景に着目した新たなステークホルダーの創出―
The New Stakeholder in Reforestaton Activity for the Greater Sustainability in the Aral Region, Kazakhstan: Focusing on the cultural and social background of the region
代表者名
(Representative)
松井 佳世
Kayo Matsui
代表者所属
(Organization)
北海道大学大学院農学研究院
Research Faculty of Agriculture, Hokkaido University
助成金額
(Grant Amount)
 1,700,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

旧ソ連の灌漑政策の結果生じたアラル海危機は地域生態系の破壊、広大な湖底沙漠の出現をまねき、その後塩を含む砂嵐や大量の移動砂が住民生活を脅かしてきた。被害の軽減と植生拡大のため、カザフスタン政府や国際機関が耐乾性と耐塩性に優れる自生灌木種の黒サクサウールを植林種とし、当地域で大規模な植林事業を実施している。しかし旧湖底の厳しい環境条件での成功率は低く生長も緩慢で、自然繁殖の鍵となる種子を生産する成木になるのに長期間を要する。本研究は地域で成木数を確実に増やすという目標を掲げ、植林活動に関わっていない地域住民がその役割を担う新たなステークホルダーとして大きな潜在力を持つことに着目した。複数の活動主体が互いの弱点を補完し協調的に地域の環境問題に取り組めば、活動全体がさらに盤石になるだろう。また本研究は、地域生活、社会的・文化的背景、及び住民がどのような地域環境の未来像を描くかを把握した上で内容設計をしており、結果的に住民による自発的、持続的活動として地域に根付く可能性を高めている。このアプローチ法は環境改善の取り組みの多元化、持続性向上の点で、他地域への応用も期待できる。

The irrigation policy of the former Soviet Union resulted in large-scale desiccation of the Aral Sea in the latter part of the 20th century. As a result, severe sand storms, with high levels of salt, have become common occurrences impacting the livelihoods of the local people living there. To alleviate the damage by the increase in sand and to improve the vegetation of the area, Kazakhstan government and international organizations, such as World Bank, UNDP etc. , implemented a number of reforestation projects that aimed to plant a native species of trees called black saxaul (Haloxylon aphyllum), which has a high tolerance for aridity and salinity. It is important to increase the number of mature black saxaul trees in order for their seeds to be effectively dispersed by the wind and other processes. However, because of the severe environmental condition in the desert seabed, the survival rate of seedlings is extremely low and most trees planted remain immature. To increase the number of productive trees in the Aral region, local people can play a key role to improve the current situation, however community support for the planting activities has been limited. Because this project takes into account socio-cultural factors of the region and local attitudes toward the environment, active participation by community members in the project can increase. This method can also be applied to other regions facing similar environmental issues in which multi stakeholders should work together to achieve sustainable outcomes.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

【プロジェクト概要】
 西カザフスタン乾燥地のアラル海地域では、今も昔も人間活動と様々に関わる黒サクサウール(Haloxylon aphyllum)という在来の樹木が存在する。その優れた木質から伝統的に燃料材として利用されていたが、ソ連崩壊後の社会の混乱期に乱伐され数を減らした。現在当地域内ではこの木の伐採が禁止されている。一方で、燃料材目的ではない黒サクサウールと人間との関係もうかがえる。一つは自然木が敷地内に囲われたり移植されて、景観の一部に取り込まれていることである。そしてもう一つは植林事業の植林種として近年盛んに利用されている状況がある。これは旧ソ連の灌漑政策の結果生じたアラル海の消失に端を発する。破壊された地域生態系の修復に向け、政府や国際機関、国際NGOが大規模植林事業を展開し、多くの科学者も長年この課題に取り組んでいる。しかし乾燥地の厳しい環境では在来種といえども植林成功率は低く成長速度も緩慢で、自然繁殖の鍵となる種子を生産する成木になることもまれである。
 本研究は地域の社会的背景、および現状の環境保全事業の現状を踏まえ、地域内で黒サクサウールの成木数を増やすことが求められている状況において、居住地域や住民が新たなステークホルダーとしての潜在力を持つことに着目した。というのも居住敷地内で育つ黒サクサウールの成木は多くの種を毎年つけているからである。対象地は、アラル海東側の旧海岸線沿いに位置し、4村で構成されるカラテレン管区である。ここで黒サクサウール苗の配布イベントを通じた住民側の受け入れ能力や家庭菜園の普及に関する現状調査、および住民が黒サクサウールを愛好する文化的背景の調査を実施した。
【成果】
 2016年夏、苗の配布に先立ち全戸調査を行った。ここで得たデータは、水道インフラ整備と家庭菜園普及状況に関する調査成果として、2018年3月北海道大学で行われた北海道中央ユーラシア研究会第130回例会で発表した。当内容は日本沙漠学会への論文投稿に向けて執筆中である。また、黒サクサウールの育て方に関する住民向けのカザフ語のビラを作成し、2017年9月に地元森林局と協同で苗植樹とビラ配布を行った。同時に、村長の提案を受け、村中心地の共同花壇でサクサウール苗の植樹を行い、全住民が見える環境を提供した。黒サクサウールと住民との文化的・精神的な側面の調査ではカザフ語の音声を記録し文字に起こし分析した。その結果は報告書にまとめている。
 また、2017年5月にクジルオルダ州におけるアラル海地域の持続的な開発をテーマにした国際フォーラムで発表を行っている。そしてプロジェクト終了後の村での成果報告は、森林局や各世帯を個別訪問したほか、ここ数年間共に植林活動をしているバルサケルメス自然保護局との共催イベントで、地元の学校の協力も得て、学校の教職員と子供たちに対して紹介を行った。国内では2018年4月に「アラル海地域研究関係者会議」を主催し研究者間での議論を深めた。

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