HOME

助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (B)個人研究助成  (B) Individual Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0040
題目
(Project Title)
キーストーン種となる菌寄生植物の探索とその共生菌の解明―豊かな森の地下生態系の保護方策の確立を目指して―
Identification of Mycorrhizal Fungi in (Potential) Mycoheterotrophic Plants: Implication for conservation of species-rich underground biotic networks
代表者名
(Representative)
末次 健司
Kenji Suetsugu
代表者所属
(Organization)
神戸大学大学院理学研究科
Graduate School of Science, Kobe University
助成金額
(Grant Amount)
 1,600,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

陸上生態系の生物多様性は、陸上植物と他の生物との共進化によるところが大きい。植物とその共生相手は生態系における重要な構成要素として繁栄を遂げている。特に陸上植物の80%以上が菌根共生を結んでいるとされており、菌根菌と植物の相互作用の解明は、生物の種多様性や生態系の成り立ちを理解する上で極めて重要である。興味深いことに、植物の中には光合成する能力を失い、菌根菌に炭素源を得るようになった菌寄生植物が知られている。しかし、多くの菌寄生植物について菌根菌の同定すら行われていない。本研究では、菌寄生植物とその近縁種群について、光合成活性の測定、菌根菌の遺伝解析による共生菌の同定、菌寄生植物と菌根菌間の安定同位体を用いた物質の移動の追跡を行う。これにより、菌寄生植物の起源や菌寄生植物が周辺の植物群集に与える影響といった生態学の焦眉の課題に迫るものである。さらに、菌寄生植物の移植の適地診断、組織培養による増殖、播種増殖手法の開発を、科学的知見をもとに効率よく行い、絶滅危惧植物の保全に資することが可能となる。

Most terrestrial plants, from bryophytes to angiosperms, form mutualistic relationships with fungi, whereby the plant provides a carbon source in exchange for essential mineral nutrients. However, mutualisms, including mycorrhizal mutualisms, are often characterized as a balanced, reciprocal arrangement for the exchange of resources between two distantly related organisms. Such relationships also provide a window for exploitation by parasitic species that can acquire a resource without providing anything in return. Mycoheterotrophs are dependent on their fungal hosts for the essential supply of carbon resources in which the normal polarity of sugar movement from plant to fungus is reversed. Because most of mycorrhizal fungi are obligate biotrophs, mycoheterotrophic plants should obtain their carbon by forming mycorrhizal associations with adjacent autotrophic plants. Therefore, considering the extreme rarity of mycoheterotrophs, I will conduct molecular identification of mycorrhizal fungi in mycoheterotrophs and surrounding autotrophs to reveal what surrounding plants work as its carbon source and conserve the endangered mycoheterotrophs and species-rich underground biotic networks.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

菌寄生植物と呼ばれる植物は,光合成能力を失い,菌根菌から養分を略奪するという特異な進化を遂げている.このような菌寄生植物は,森の生態系に入り込み,寄生する存在であるといえる.このため,生態系に余裕があり,資源の余剰分を菌寄生植物が使っても問題のない安定した森林でなければ,生育できない.つまり,菌寄生植物が存在するという事実は,肉眼では見えない菌糸のネットワークを含めた豊かな生態系の広がりを示している.
上述の背景のもと,本プロジェクトでは,菌寄生植物の分布調査を行うとともに,菌寄生植物とその近縁種群について,光合成活性の測定,菌根菌の遺伝解析による共生菌の同定,及び安定同位体を用いた菌寄生植物と菌根菌間の物質移動の追跡を行った.これらの研究結果は,絶滅危惧種が多い菌寄生植物を保護する手助けにもなると考えられる.以下にその成果を,(1) 菌寄生植物の分布調査,(2) 緑色植物における菌寄生性の検討,(3) 主な調査地である屋久島における保護活動の3つに分けて,概説する.

(1) 未知の菌寄生植物の分布調査
 菌寄生植物は光合成を行わないため,花期と果実期のわずかな期間しか地上に姿を現わさない.花期や果実期は短く,また個体のサイズも小さいものが多いため,見つけることが非常に困難である.そこで,日本国内における菌寄生植物の分布調査と,その分類体系の整理に取り組んだ.その結果,多くの新産地や日本初記録種を発見することができた.例えば石垣島では,ソロモン諸島とインドネシアのパプア州でのみ分布が確認されていた「Sciaphila corniculata」を発見することができた.これらの島々から遠く離れた日本でこの植物が発見されたことは,驚くべきことである.

(2) 緑色植物における菌寄生性の検討
 光合成活性の測定と,安定同位体を用いた植物と菌根菌間の物質移動の追跡とを組み合わせることで,植物が菌に頼る度合いを強めていく過程で,光合成を行う必要が徐々になくなったという進化史を明らかにすることができた.さらにこれらの植物について,菌根菌の遺伝解析による共生菌の同定を行うことで,これらの植物が菌糸のネットワークを通じてどのような植物と繋がっているのかを解明した.菌糸のネットワークを通じ繋がっている植物は,間接的に栄養を与える存在であるため,これらの植物を保護するうえでも重要な存在であることが示唆された.

(3) 屋久島などの鹿児島県の島々における保護活動
 上述の研究手法を屋久島における保護活動として役立てた.屋久島における菌寄生植物が利用する菌は,アーバスキュラー菌根菌や外生菌根菌,腐朽菌のすべてを含み,生活スタイルの異なる様々な菌に寄生していることが明らかになった.これらの知見をもとに,菌寄生植物とその間接的な栄養源となる樹種の保護策に関する提言を行った.またこうした成果について,屋久島現地で講演を行い,地元の新聞でも取り上げられた.

ホームページへのリンク ◆トヨタ財団WEBサイト内関連記事