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助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (B)個人研究助成  (B) Individual Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0169
題目
(Project Title)
国際人権法の社会規範再構築機能の検証―インドネシアの幼児婚と多元的法制度―
"Invisible" Function of International Human Rights Laws: Reconstructing moral and social norms
代表者名
(Representative)
堀井 穂子
Hoko Horii
代表者所属
(Organization)
ライデン大学法学部
Van Vollenhoven Institute/KITLV, Leiden University
助成金額
(Grant Amount)
 1,700,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

国際人権法が草の根レベルの社会に与える影響の限界には限界がみられる。インドネシアの幼児婚の例でいうと、インドネシア政府が幼児婚を禁止する国際法に批准しているにも関わらず、宗教裁判所では国際法規範よりも市民の価値観に近い宗教法や慣習法規範が使われ、幼児婚が法的に認められるケースが多くある。他方で、村でのインタビューや、他の研究者や活動家と情報交換をする過程で、国際人権法を含む法全般は政府や裁判所を通して履行される他にも「見えない」機能がある可能性が示唆された。注目すべきは、国際法規範を現地に持ち込み、人々のモラルやコミュニティーの社会規範を再構築することによって社会を変革する機能である。当研究は、幼児婚を含めた婚姻や性的関係の規範を例に、この「見えない」法の機能を含めて調査し、国際人権法の新しい価値を見出すものである。また、法制定の影響がみえにくく実施が難しい家族法などの分野で、法律を文面上で終わらせるのではなく、草の根レベルで「生きる法」にするための示唆を生み出す形で、法整備支援、国際法、法移植などのプロジェクトに貢献する。

Previous researches and the reports have shown the limited influence of international human rights law. Despite of the ratification of international conventions prohibiting child marriage by the Indonesian government, judges in religious courts often favor customary and religious laws over the state law, which results in giving a legal approval to child marriages. However some field reseaches in a local village and and interviews with NGOs suggested that international human rights laws have "invisible" functions besides the process of implementation through the government or judiciary. To investigate this point, this research project explores the impact of laws in social engineering by changing social norms and moralities of people through the case of sexual morality and marriage norms including child marriage.This study will clarify the process of transformation from written codes into "living law" in practice, thus contribute to the effective implementation of new laws into the grassroots society, both in international human rights law and legal assistance projects.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

当プロジェクトは、国際人権規範と草の根レベルの現実・慣習との乖離に着目し、インドネシアの幼児婚を例として人権規範の新しい価値を探求することを目的としている。主として以下の活動からなる。
1)バリでのフィールドワーク
バリでの半年間のフィールドワークでは、LBH Apik Baliという子どもの権利に特化した法的支援を市民に提供するNGOなど現地のネットワークの力を借りながら研究を進めた。研究方法としては参与観察、インタビュー、裁判所判決文の分析、フォーカスグループディスカッションの4つを組み合わせ、現地社会における幼児婚の現実、婚姻・性的関係に関する規範の調査を進めた。
2)バリでのワークショップ
LBH Apik Baliと協同で開催したワークショップでは、バリの幼児婚と婚姻外妊娠をテーマとし、フィールドワークで集まった情報をプレゼンテーションという形で参加者と共有した。その後参加者が意見を表明する時間を設けて、現在の課題を明らかにし解決策を模索した。このワークショップ開催の目的は、自らの研究の結果を現地社会に還元するための第一歩として、現地の活動家たちに意見を出してもらうことであった。
3)ジャカルタでのワークショップと本の出版
ジャカルタでのワークショップでは、インドネシア国内での幼児婚についての論文を募り、選抜された論文を各自で発展・完成させてもらい、ワークショップ当日に各自の研究を発表してもらった。これらの論文は全てインドネシアの幼児婚をテーマにしているという点を共通点とし、インドネシア各地の幼児婚の状況を独自の視点、方法で研究したものであった。集まった論文をまとめた本を出版する計画を、編集者・出版社・資金提供者でその後も続けている。国際機関がレポートなどの出版物で描くアジェンダベースの単一的な「Child Marriage(幼児婚)」とは少し違う、インドネシアの幼児婚のリアリティーについての情報を本として提供することで、政策策定に貢献することが出版の意図である。
4)オランダでの研究
バリでのフィールドワークから戻ってからは、フィールドワークの結果を元に国際人権規範について考察、執筆、発表を繰り返しながら思考を深めている。私が問題とするのは、「18歳以下の者の結婚は幼児婚であり、人権侵害である」という単純化された国際人権法規範である。では人権規範の価値はどうすれば高められるのか?まず最初に国際人権規範の前提である普遍性は現実的でも理想的でもないことを説く。今人権規範に必要なのは、多文化的なアプローチであり、構造的な権力を十分にもたない者や国家の意見を積極的に取り入れる仕組み・構造である。また、そのように柔軟性をもった人権規範を適用する際、現地のアクターが議論して生み出す現地の解決策を促進する姿勢とシステムも必要となる。そのような仕組み、構造、システム、そして姿勢における変化が、国際人権規範の新しい価値を生む鍵となると考える。


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