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助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (A)共同研究助成  (A) Joint Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0262
題目
(Project Title)
格差社会において様々な交換をアクティベートする実践的な分配の正義―共生人間科学に基づく社会の新たな価値創出―
Activation of Exchanges by Local and Practical Distributive Justice in a Gap Widening Society: Exploring new values for society based on convivial human science
代表者名
(Representative)
茂呂 雄二
Yuji Moro
代表者所属
(Organization)
筑波大学人間系
Faculty of Human Sciences, University of Tsukuba
助成金額
(Grant Amount)
 6,500,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

本研究は、格差や貧困に曝される子どもの発達支援のためのコミュニティ作りを切り口にして、発達心理学の視点から、分配的な正義にアプローチする。人々のローカルな実践を通して実現される分配的正義の考え方を整備して、子ども・若者を支援するコミュニティを社会実装するアクションリサーチを実施する。格差のため社会関係資本に乏しい子どもたちにとっては、社会文化的経験の欠乏が一層深刻な問題である。学校外の広い社会で生活する、多様な大人に出会う経験も制約され、大人を発達のモデルにする経験も制限される。本研究では、貧困層の子どもたちが、多様な価値観や技能を有する大人と出会うことのできるコミュニティ作りを通して社会関係資本を再分配する仕組みを作り、これをローカルで実践的な分配正義として提案する。このような分配のニーズと大人側の動機について調査データで検証する。そして(1)子ども・若者発達支援を行っている団体と共同し経常的に大人との出会いが果たせる場の構築、(2)子ども達と大人と共同でのイベント作りの、2つのアクションリサーチを実施し、質的なデータを蓄積し、参加者の認知と感情面の成長過程を明らかにする。

We approach the problem of distributive justice from the viewpoint of developmental learning, which stresses that poor young people's participation into community building process empowers their developing and becoming. We would reformulate the concept of distributive justice in terms of people's local and practical activities and translate it into action researches which will build convivial communities for young people. Poor young people, exposed to the economical gap and having less social capital, are inevitably deficient in socio-cultural experiences for getting together with diverse adult people, who have various knowledge and skills. Thus, poor youth would be deficient in models for who they will become in their future beyond who they are now. In our practical research, we would build communities that serve as an organization for re-distribution of social capitals and relational goods, giving young people chances to get together with diverse adult people. This community building process, in our view, would be a local and practical re-conceptualization of distributive justice.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

現在、ますます拡大する経済格差は、社会的な不和や人々の未来への不安をもたらしている。なかでも子どもと若者への影響はきわめて大きい。より深刻なのは、社会的で文化的な資本の分配の偏りが作り出す、格差と不平等である。本プロジェクトでは、この分配の不公平を少しでも平準化するためには、どのような介入実践が可能なのかについて、パフォーマンス心理学と交換(ギブとゲットの弁証法)の考え方に基づいて、貧困や格差に曝され学校や就労で苦戦している子ども達ならびに若者への支援実践を展開した。また、この実践の展開過程を社会物質的アレンジメント研究の視点から精密記述した。
 本プロジェクトが依拠するパフォーマンス心理学とは、1980年代から展開されてきた状況的認知論あるいは状況的学習研究の現在の到達点である。状況論は、従来の個体内部に閉じた心の営みの捉え方を批判して、それを社会的文化的プロセスとして捉える考え方である。本プロジェクトでは、まずパフォーマンス心理学の整備を行った。パフォーマンス概念の理論的特徴の解明と咀嚼を進めることで、パフォーマンス概念が、これまでにやったことのないことにチャンレンジすることであり、チャレンジを可能にする環境としてグループ、アンサンブル、コミュニティを、参加者が共同製作する過程で人々は成長し発達すると考える、学術トレンドがパフォーマンス心理学であることを明らかにした。次いでパフォーマンス・アプローチを交換という視点から、さらに先鋭化して、パフォーマンス心理学の深化・拡張を図った。発達的環境とは、グループ、アンサンブル、コミュニティのメンバー同士が互いにギブ(贈与)しあうことだという交換仮説に基づいて、交換論でパフォーマンス心理学の拡張を試みた。
 以上の方法論に基づいて、⑴東京都足立区の主婦等が運営する子ども支援団体(2団体)とこの団体周辺に出入りする貧困の子ども達、⑵茨城県西部のサポステ事業者とこれらの団体に出入りする就労に苦戦する若者達を対象にして、現地でのフィールド研究を行ない、両地域の子ども達ならびに若者達を取り囲む、社会物質的で心理文化的なアレンジメントの特徴を明らかにした。そして、その特徴を考慮しながら、介入研究を行ない、どのようにしたら、これらの子ども達・若者達に、新しい活動の形態を経験させることができるのかを検討した。介入研究のうち、⑴については、2016年10月から、2017年1月までの期間、「タレントショーづくり」を考案し実施した。これはステージ上でダンスや歌などの特技を披露するイベントであるが、企画・運営・発表の過程で「専門性を持つ大人」を必要とする場面をつくることができ、この場面において文化社会資本の交換が実現できると考えた。「専門性を持つ大人」との交流は、前述のフィールド調査ならびに質問紙調査から、当該地域には様々なタイプの子ども支援が確認できたが、貧困の子ども支援活動は、学校外での子ども達への支援に関わり始めた「専門性を持つ大人」を十分に活用できていないことが示されたからである。⑵については、2016年12月から2019年6月間での期間において、「若者たちの固定化した生の在り方と遊ぶこと」を目指した共同活動を組織した。上記フィールドワークで得た、茨城県西若者サポートステーション代表の「サポステに来る若者の多くは、何か新しい状況に直面した時、まずできない理由を探し、それにトライしない自分を納得させているように感じる」とのサポステ事業者の発言にあるように、固定化した生の限界を突破する、新しいパフォーマンスの開拓が重要だと考えたからである。

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