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助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (A)共同研究助成  (A) Joint Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0452
題目
(Project Title)
戦争の〈記憶〉の継承とその利活用に資するアーカイブズの構築およびそれに基づく平和学習の新たな可能性の探究―平和を希求する心を育むための試み―
Construction of Archives that Contribute to Inheritance and its Use of Memory of War, and Research of the New Possibility of the Peaceful Learning Based on it: To bring up a heart to desire peace
代表者名
(Representative)
佐藤 宏之
Hiroyuki Sato
代表者所属
(Organization)
鹿児島大学学術研究院法文教育学域
Education, Law, Economics and the Humanities Area, Research and Education Assembly, Kagoshima University
助成金額
(Grant Amount)
 6,500,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

1945年の日本の敗戦から70年という歳月が経過した。戦争体験世代や戦争や戦時の生活を少しでも記憶している世代は少なくなり、統計上、日本の総人口の10%を切ったといわれる。つまり、〈体験〉や〈証言〉として戦争・戦時が語られる時代から、少数派の戦争体験者と多数派の非体験者によって構成された戦争の〈記憶〉が、非体験者からさらに次の非体験者へと継承される時代になったのである。したがって、直接体験を持たない世代、戦争や植民地支配の過去を知らず、その史実を十分に学んでこなかった世代が、戦争の〈記憶〉をどう継いでいくのか。今日の教育的・社会的課題といえる。そこで本研究では、戦争体験者から集めた〈記憶〉(証言や資料など)を不特定多数の利用者を想定した「公共財」として新たに価値づけ、その利活用の目的性を問わない記録として後世へ伝えていくためのアーカイブズを構築することを第一の目的とする。そして、そのアーカイブズに基づいて、地域観光や学校教育の場で利用できる平和学習の新たな可能性を探究することを第二の目的とする。本研究により地域における戦争の〈記憶〉に、「地域の歴史資産」という新たな価値が付与される。

70 From Japan's defeat of 1945 has passed.The war experience generation, a war and a life in wartime, the remembered generation became even a little little.It is said to have been less than 10% of total population of Japan in statistics.Memory of the war made by a war experient of the minority and a non-experient of the majority,It was the times succeeded from a non-experient more to the next non-experient.It is today's educational social problem how the generation who did not learn the historical fact enough inherits memory of the war without knowing the past of war and the colonial rule to the generation who does not have direct wartime experience.The first purpose of this study evaluates memory which I collected from a war experient as "the public goods" which assumed the unspecified number of user newly and is to build archives to tell coming ages as a record for all purposefulness of the utilization.The second objective, based on the archives, is to explore the new possibilities of peace learning available in regional tourism and school education.By this study, the new value called "local history assets" is given in memory of the war in the area.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

本研究は、1945年の日本の敗戦から73年という歳月が経過し、「体験者消滅」の時代となった現在、戦争をめぐる語りが、実在としての戦争から書かれたものとしての戦争、記憶として再構成されたものとしての戦争へと移り変わっている。直接戦争体験を持たない世代が、戦争の記憶をどう受け継いでいくのか、今日の教育的・社会的課題に取り組んだものである。
 わたしたちは、2014年より鹿児島県出水市において、戦争体験者への聞き取り調査を行い、約100名の証言を映像と音声で集めた。この聞き取り調査の特徴は、調査の目的を、あくまでも「戦争体験」を「公共財」として後世へ伝えることとし、集められた「戦争体験」を不特定多数の利用者を想定した「公共性」を持つものとしてとらえている点にある。それをどのようなかたちで活用するか(平和学習・観光など)は利用者が考えるべきものという考えのもと、①聞き手の意図や価値観、その時々の流行や関心とは一線を画すこと、②聞き取り調査は語り手と聞き手の共同作業であるため、語り手がいちばん伝えたいことなにか、それを探りながら、語り手が主導権を持ち、聞き手はそこに寄り添いつつ事実確認(質問)を行うことを重視した。また、戦争の記憶のなかでも、比較的語り継がれやすい記憶ばかりでなく、継承されにくい、あるいはすでに消滅しかかっている記憶をも発見・発掘し、存在したものとしての戦争の事態解明のための材料を集めることを目指した。
したがって、集めた証言を「公共財」と価値づけて、広く公開し、一般市民が(その利用目的を問わずに)等しく利用し、検証することができるようにして初めてアーカイブズとしての価値を有するように思われる。直接的な聞き手以外が使いにくい資料を収集したところで、そこに価値は見出されない。こうした作業を通して、戦争体験者の証言に地域の歴史資産としての「新たな価値」が付与されるのである。
 そして、それを平和学習へと活用した。日本の平和学習は戦争被害(悲惨さ・過酷さなど)の継承が中心であり、その「教育内容」(教材)に比べ、戦争被害の学習を平和創造の主体形成へと結びつける「教育方法」(教え方)に対する関心が低かった。そこで、①出水基地と地域の人々の関係性を考える平和学習プログラム、②複数の体験者の人生を追いながら、ある時点での行動や気持ちを比較する平和学習プログラムを開発し、教育実践を行ったのである。
 こうした実践を通して、当時なにがあったのか、なにが起きたのか、想像力を働かせること、個々人がそれぞれどのような立場からどのような行動をとったのか、学習者が過去の個人に自分を置き換え(当事者性)、体験者の能動的、あるいは受動的な営みに対して「共感共苦」をすることが重要である。
またその過程で、自分には何ができたのか、あるいはできなかったのか、「もし自分が○○だったらどうするか」という「反実仮想」する活動を通して、「あの時代のどの段階であれば、別の、平和な時代を作る選択肢を人々は見いだせたのか」「別の選択肢を選びとる歴史的可能性はなかったのか」などの、判断する力を養うことができるのではないか。
 そうすることで、加害―被害という二項対立関係を超える合意形成が可能となってくる。そして、それを共有したあとになにを生み出すことができるのかを考えることが重要なのである。

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