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助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (A)共同研究助成  (A) Joint Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0519
題目
(Project Title)
小規模自治体の固有性・持続可能性を支える自治の諸相の実証解明―1960年代以降のガバナンス・風景・公共圏の変遷を巡る「日独仏」の構造比較―
An Empirical Study on the Self-governing Conditions of How a Small Municipality Can Keep its Inherence and Sustainability: An interdisciplinary comparative analysis on the transitions of governance, landscape, and public spheres in the villages in Japan, Germany, and France since 1960s
代表者名
(Representative)
山田圭二郎
Keijiro Yamada
代表者所属
(Organization)
金沢工業大学環境・建築学部
College of Environmental Engineering and Architecture, Kanazawa Institute of Technology
助成金額
(Grant Amount)
 4,600,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

   現在、環境変動によって、テロや民族的な不寛容、さらに文化や風景の喪失のような困難な社会的課題が課せられているが、それらに向き合い、ともに解決しようとする市民意識はむしろやせ細っている。しかし小規模自治体のなかには、異質性を受け止めつつ自分たちの固有性と持続性を保持し、外部にも開かれた市民意識を生み出しているところがある。我々はそのような自治が成り立つ「場」の可能性と条件を解明し、共有すべき価値として提示したいと考えている。
 具体的には、日独仏の3つの小規模自治体を対象に、我々の考案した「空間—社会構造分析」(Socio-spatial Analysis Approach)を行う。まず、空間—社会の関係を、空間要素と社会的活動(所有・管理や組織・制度的枠組み等)の個別要素レベルで具体的に把握する。次に、環境変動を自治体が受け止める過程で、ガバナンス・風景・公共圏が互いに連動しつつ更新されてゆく様子を、「場」(空間—社会構造)の変遷を通じて確認し、その運動論的な構造を描き出す。その国際比較により、最終的には、上述した「場」の条件を地方・都市を問わず活用できる仕方で提示することを試みる。

Today, there have been the increasing social difficulties such as terrorism, racial intolerance, and the loss of culture and its landscape, while the citizen awareness of trying to face these difficulties and solve them with others has been weakened. We consider that a small municipality can have the inherent social values which should be shared internationally, that is, the values that it functions as the field for self-government, where it can keep its inherence and sustainability while tolerating heterogeneity, at the same time, foster the open-minded citizen awareness.
    This study aims to clarify the conditions of the field for self-government like mentioned above, focusing on 3 small municipalities in Japan, Germany, and France. In the study, using our original "Socio-spatial Analysis Approach", we will investigate and grasp the empirical relations between spatial elements and social elements (who owns and / or controls each of spatial elements, and what kinds of organizations and / or social systems are related to each) in great detail. Then, we will illustrate the dynamic structure in socio-spatial relations and their transitions during the process of tolerating environmental changes, in which local-governance, landscape, and public spheres are interconnected toward their renewals. Finally, by international comparison, we will clarify the above-mentioned conditions of which the international similarities and differences and the applicability to both urban and rural areas will be taken into account.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

〈プロジェクト概要〉
自治体は本来、単に公共サービスを提供する枠組ではなく、住民共同の「器」として少子高齢化や文化的源泉の喪失等の現代的課題に対応しうる〈主体〉を育む〈場〉でもある。その観点から本研究は、人口千人未満の基礎自治体Lyons-la-Forêt(仏)とColnrade(独)、ならびに長野県木曽町開田地区と南木曽町妻籠地区を対象として、それらが1960年代から現在に至る社会変動期に、閉鎖的になることなく、その固有性と存続可能性を追求しえた自治的条件の解明を目指した。
具体的には、地方政府、市町村間連携協力組織、住民団体を自治の〈主体〉として、また建造物、広場、道路、水路等の空間を自治の〈場〉として捉え、この〈主体〉と〈場〉の相互作用を、所有、管理・運営、利用等の機能から把握する「空間-社会構造図」を用いて実証的に分析した。併せて、制度や施策等の変化をモノグラフ的に分析し、〈主体〉と〈場〉の変遷の画期について考究した。
結果、以下が確認された。どの自治体等も20世紀中葉に主要産業の衰退や財政難から「Ⅰ存続の危機」に直面し、そこから従前の地域像を存続可能な新たな自己像に書き換える「Ⅱ物語の書き換え」へと踏み出している。この動きは先見的着想を得た〈主体〉が住民を巻き込む議論を誘発し、議会や地域の合意を得て政策化される。特に、各種の地域活動が展開される「Ⅲ公共圏的空間」としての広場(独・仏)や公民館(独、妻籠)等の〈場〉が形成されると、多様な〈主体〉に新たな物語が自覚的に共有され、当事者意識が育まれる。そして諸〈主体〉がⅢの〈場〉を共同運営するとき、「Ⅳ行政による空間管理からガバナンスによる〈場〉の運営」に向けてローカル・ガバナンスが再構築される。
さらに、建造物や生垣等の素材や工法が歴史的資源として、またこれらが形成する〈風景〉が共同体の価値を蓄積した文化的源泉として、新たな自己像を生み出す触媒となっていることも確認された。国際比較からは、〈主体〉による〈場〉の自己決定に必要な法制度的担保の問題、及び各国固有の非制度的社会関係が公共圏的空間の形成に与える影響の解明という次なる研究課題が得られた。

〈成果物〉
・国際シンポジウム「自治しうる〈主体〉と〈場〉を問いなおす」(東京経済大学主催、本研究メンバーが統括)における発表、独仏日の首長等を招聘したパネルディスカッション、冊子(ISBN:978-4-9909294-6-6)所収の各専門領域からの諸論文。
・第 55 回土木計画学研究発表会で報告した「地域の動態的持続性を巡る〈場〉の形成とローカル・ガバナンスの変化:Lyons-la-Forêt を対象とした『空間─社会構造分析』の適用を通じて」、「地域のサスティナビリティを支える社会的活動の〈主体〉と〈場〉の変遷に関する考察:Colnrade を事例対象として」の2論文。

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