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助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (B)個人研究助成  (B) Individual Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0613
題目
(Project Title)
現代の祝祭性をマネジメントする―音楽フェスティバルの主催者同士の対話を通じて―
Managing Festivity in the Contemporary Age: An action research through mutual interactions and networking of the organizers of rock festivals in Japan
代表者名
(Representative)
山崎  翔
Sho Yamasaki
代表者所属
(Organization)
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院
Graduate School of International Media, Communication, and Tourism Studies, Hokkaido University
助成金額
(Grant Amount)
 900,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

本研究では、流動性の高まった社会の担い手として、現代の音楽フェスティバル(フェス)主催者に着目する。物理的・情報環境的に移動が容易になった現代に生きる私達は、様々な時間や場所・属性を行き交う柔軟性を持ち合わせている。この時代を象徴する文化がフェスである。従来の祭りが特定の地域やコミュニティへの愛着を醸成するものならば、フェスは複数の世界にまたがって生きる私達を祝う現代の祭りである。そのことの裏付けとして、各地で開催されるフェスの数は増加の一途をたどっている。本研究は、理念も目標も異なるであろう全国各地のフェス主催者について、その運営の実態、ビジネス・文化的課題などを検討し、フェスが生み出されるプロセスそのものを明示化する。方法として、各フェス主催者へのインタビューを行い、また、全国のフェス主催者が一堂に会するワークショップを開催し、主催者同士がフェスの技術・知を共有・蓄積する過程を観察し、今後のまち・ひとづくりの担い手としての彼らの価値を明らかにする。さらに、同ワークショップを北海道ニセコで開催することにより、アイヌから和人、現代人に至るまでの人類史的な祝祭文化研究の足掛りとする。

This research project, focusing on the organizers of "FESU" (rock music festivals) as bearers of the increasing social mobility in the contemporary age, investigates the actual conditions of their managing activities and business/cultural problems, and clarifies the generative process of FESU, which are recently enjoying different principles and objectives throughout Japan. Because of greater ease and convenience of moving in physical and info-tech environments, we nowadays embrace some kind of flexibility, which might let us step across the various borders of time, place, and our attributions. While traditional festivals can incubate a high grade of attachment to particular local regions or communities, FESU could be regarded as a contemporary fete blessing us, people who are living across the multiple worlds. The continuous increase of the number of FESU can be regarded as the very evidence of this situation. The methodology of this research will be organized to include interviews with the organizers of the FESUs, and to hold a special workshop which invites the organizers from all over Japan to meet together, to share and exchange their experiences and knowhow. Through observing the process of this workshop, this research project attempts to show the value of the organizers and their activities as the future bearers of the town/human development. Furthermore, by promoting this workshop, held in Niseko district of Hokkaido, where the Ainu and the Wajin (ethnic Japanese), the contemporary people and foreigners have lived and live together, this project aims to be a good opportunity to deepen festival culture study from the viewpoint of human history and civilization.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

〈プロジェクトの概要〉
 本プロジェクトは、流動化する現代社会を象徴する祝祭「ロックフェスティバル(フェス)」の「主催者」に焦点を当てたものである。フェスは複数ステージが同時進行するプログラムの中で、来場者自らが場をつくる「参加者」になることができ、フェス研究もその点に焦点が当てられてきた。その一方で、近年はフェスの商業化が進み、参加者の主体性や創造性を疑問視する議論も展開されている。
上記の背景を踏まえ、本プロジェクトでは、1997年のフジロックフェスティバルを契機としたフェス20年の歴史を「主催者」の視点から捉え直すものであった。2010年以降は全国各地で規模の小さなローカルフェスが増加しているが、それは同時に「主催者」の増加も意味している。彼らの多くはフェス「参加者」としての経験を有しており、その経験がフェスづくりに活かされている。
 本プロジェクトのメイン企画は2016年10月に北海道のニセコ地区で開催された「フェス観測会2016」と題したワークショップである。本観測会は全国のローカルフェス主催者同士が対話を行い、自らのフェスの「参加」と「主催」の歴史を辿るものである。北は札幌から南は対馬まで、10名のローカルフェス主催者が集まり、フェス研究者、フェスメディア、ワークショップの専門家等から構成することで、フェスを多角的な視点から論じることができた。
 プログラムは、1999年から北海道で継続開催されている「ライジングサンロックフェスティバル」主催代表の基調講演に始まり、フェス研究者・メディアからの発表を通じて問題共有を行った。その上で、「ロックフェスが創造してきたローカリティ―現代フェス20年を辿って」と題したフェス主催者同士が対話するワークショップを実施した。ワークショップでは、6つのキーワード(①場所、②実行委員会・スタッフ、③アーティスト・タイムテーブル、④音楽以外のコンテンツ、⑤料金・事業規模、⑥継続性・継承性)を基に、主催者同士の対話から各フェスの固有性を明らかにしていった。最終的にそれらのキーワードを集約した「ローカルフェスマップ」を作成し、参加フェスを「フェス」「祭り」「イベント」「展示」の4象限にマッピングすることができた。
 フェスを「主催者」の視点から捉え直すと、ローカルフェスには「フェス」としての共通点がある一方、その差異も顕著となった。どのフェスも参加者自身が場をつくりこめる「余地」がある点で共通しており、それこそが参加者の主体性や創造性を育み、個性ある新たなフェスの創出につながっていることが分かった。
 フェスは特定の場所やコミュニティに留まらない点にその魅力があるが、そのような緩やかな場は常にその継続性が危ぶまれる側面も兼ね備えている。しかし、観測会ではフェスの緩やかさを組織化する「主催(organize)」というコンセプトを中心に据えたことで、フェスの歴史・文化的側面を主催者が認識する場をつくりあげることができた。今後は、このようなローカルフェス主催者同士が創出する緩やかな関係性やネットワークの総体を解き明かすことで、従来の地域社会の枠組みでは把握することが困難な自生的な地方創生の在り方を実証していきたい。

〈成果物〉
 本プロジェクトの主な成果物は「フェス観測会2016報告書」である。本報告書では観測会開催に至る経緯から、当日の開催記録までを詳細に取りまとめている。その他にも、観測会開催に向けた告知及び開催後の成果を発信・共有するホームページ・フェイスブックを作成した。ホームぺージでは全国のフェス開催状況を収集した「フェスアーカイブ1997-2016」を公開している。また、ワークショップのリアルな過程を記録した「フェス観測会2016ダイジェスト動画」を作成し、ウェブ上で公開している。さらに、ローカルフェスの各会場において、観測会の様子をパネルで展示する「フェス観測会2016企画展」を順次開催している。


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