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助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (A)共同研究助成  (A) Joint Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0631
題目
(Project Title)
人生を貫くことばの意味から未来の言語教育を考える
Reconsidering the Future of Language Education Based on the Significance of a Language that Shapes One's Whole Life Course
代表者名
(Representative)
ロマン・パシュカ
Roman Pașca
代表者所属
(Organization)
神田外語大学日本研究所
Japanese Studies Research Institute, Kanda University of International Studies
助成金額
(Grant Amount)
 4,800,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

日本語教育分野では、戦前戦中における教育の枠組みや方法を論じた先行研究は多々あるが、その渦中にいた人びとが現在、日本語を自分のことばとしてどう捉えているかを考え、その考察を今後の日本語教育に生かそうとする研究はこれまでにない。本研究では、理論的サンプリング法を用い、東アジア、アメリカ大陸の各調査地において、インタビュー調査を実施する。これらのインタビューを通して、母語として日本語を身につけた者が、外的要因により異なる言語環境に身を置くことになった現在でも、日本語で人生を全うしようとする姿を通し、ことばの根源的な意味を捉え直したい。なぜなら、人がことばを身につけることの意味の探求は、ことばの教育に携わる者には不可避であるにも関わらず、現在の日本語教育の主流は方法主義に基づいており、このあり方ではやがて限界を迎えるからである。それは、今後の移民社会においても同様で、異なった言語環境に身を置くことになった人々が、元々の自身のことばをどう意味づけているかを考えることにも繋がる。こうした視点から、従来の方法主義に基づいた言語教育とは異なる新たな「言語教育概念」を創生することを本研究の目的とする。

In the field of Japanese language education, a lot of research has been done on the education system and on the methodology used before and during the war, but there are no studies that consider the way in which the people who experienced those years of turmoil relate to Japanese as their own language, and try to use those considerations for the future of Japanese language teaching. In our research project, through a process of theoretical sampling, we will conduct interviews in various locations in East Asia and on the American continents. Through these interviews, we will try to reconsider the fundamental meaning of language for people who learned Japanese as a mother tongue, and who, although forced at some point to live in a different linguistic environment, are now trying to live their twilight years in Japanese. We start from the observation that, at present, Japanese language education focuses mostly on methodology and is therefore very close to reaching its limit, even though an investigation into the meaning of why people make a language their own is absolutely necessary. Such an investigation is crucial in understanding how people who find themselves in a different linguistic environment relate to their mother tongue, including future immigrant communities in Japan. Starting from this perspective, the aim of our research is to create a new approach to language education, different from the current one based on methodology.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

「人生を貫くことばの意味から未来の言語教育を考える」実践報告書の概要
D15-R-0631 代表者:ロマンパシュカ

【プロジェクトの概要】
本プロジェクトの目的は、戦前戦後の移民や社会状況の変化によって、母語としての日本語から他言語へと言語間を移動した(または移動せざるを得なくなった)人々の人生の語りを聴くことによって、ことばの根源的な意味を明らかにし、そこから新たな「言語教育概念」を創生することである。
調査者らは、理論的サンプリング法を用いた。調査は、台湾、ブラジル、カナダ、アメリカで実施した。社会の変動や協力者の生活世界、経験や想いをホリスティックに理解するため、ライフストーリーインタビューの手法をとった。
台湾では、台北市、新北市、花蓮市などでインタビューを実施した。敗戦を機に国籍ならびに、日本語から中国語へと使用言語の変更を余儀なくされた人びとで、日本統治時代に公学校でおよび小学校において日本語で教育を受けた人々などである(計16人)。
 ブラジルの調査協力者は、日本の移民送り出し政策によってブラジルへの移民をした1世、および2世で、サンパウロ周辺の日本人集住地域に住まう人々である(計9人)。
 カナダでは、バンクーバー市、バーナビー市、リッチモンド市などで実施した。対象者は日系人が多く入居するケアホームでの紹介や日系人が集まる施設ならびに日系人合同教会でのアウトリーチにより繋がった人々である。対象を広く募ったため、戦前からの日系人だけでなく、1967年の移民法改正以降に移住した新移民と呼ばれる人や、日本統治時代に日本教育を受けた台湾系移民、日韓併合により平壌で日本教育を受けた韓国系移民も含まれた。また、「帰加2世」と呼ばれる戦時中日本に一時的に渡り、戦後にカナダに帰還した日系2世に対してもインタビューを行った(計48人)。
アメリカの調査は、カリフォルニア州、コロラド州、ニュージャージー州にて行った。キリスト教会、仏教会寺院、日系商工会議所、高齢者施設、あるいは個人宅などで調査を実施した。調査協力者は、戦後間もない時期にアメリカ兵と結婚して移住した日本人女性、写真だけでアメリカに嫁いだ結婚移民女性、日系2世の元アメリカ兵、帰米2世、学校教育を終戦まで日本語で受けていた韓国人、元商社マン移住者、仏教開教使など、様々な立場の人に面接調査を行った(計70人)。
【成果物】
本プロジェクトの成果は大きく3つに分けられる。一つ目はインタビューデータをもとに分析と考察を行い、2017年2月から2018年3月の間に国内外で5回実施した学会発表である。二つ目は、調査協力者の録画記録を公開用に編集したアーカイブ化(http://www.j-life-research.com)である。三つ目は、調査協力者の語りをもとにストーリーを構築した冊子『言語間を移動した人たちの語り』の作成である。アーカイブと冊子は試行版であり、完成版作成に向け、今後プロジェクトの第二ステージへと進む。



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