HOME

助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (A)共同研究助成  (A) Joint Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0656
題目
(Project Title)
多元的循環型社会における精神保健福祉システムの再構築―政策類型化の比較を通して―
Reconstruction of the Mental Health and Welfare System in a Polyphyletic Recycling Society: Through comparison of the classification of the policies
代表者名
(Representative)
緒方 由紀
Yuki Ogata
代表者所属
(Organization)
佛教大学社会福祉学部
Faculty of Social Welfare, Bukkyo University
助成金額
(Grant Amount)
 2,800,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

近年、差別撤廃、包摂が領域を超えた共通の課題であり、日本の精神保健福祉政策においても国際的な注視のもと相応の危機意識をもち、病院中心主義からの現状是正に向け動き続けている。こうした中で本研究は、新たな共生社会のもとでの精神保健福祉システムの全体構造を明らかにすることにある。
 第一に、地域移行にかかわる政策類型化を通した次社会システム要素の確定に関する比較検証。第二に、地域で生きることの質的確保に関する困難の再検証と新たなスキームの構築(事例分析、市民権に関する概念ならびにコミュニティ政策的なアプローチの国際比較)。第三に、「まちなかケア」の仕組み構築のためのコミュニティプログラム開発。
 これらを主軸に社会福祉、医療、司法、政策など学際的知見から、目指すべき多元的循環型社会のフレームを体系的かつ総合的に提示すべく理論・実証研究を行うことを目的としている。

    Abolition of discrimination and subsumption, both of which are common problems beyond the regions in recent years, are attracting global attention especially from among the Japanese mental health and welfare policies and are on the move to break the current status of the hospital centralism generating a considerable sense of crisis. Under this circumstance, the aim of this study is to clarify the overall structure of the mental health and welfare system under a new cohesive society. 
    The first focus is the comparative verification regarding the determination of elements of the next-generation society system via the classification of the policies involved in the development of local communities. The second one is the re-examination of the difficulties about securing quality of life in a local community as well as building the structure of a new scheme (case analysis of community care; international comparison of concepts and approaches of the citizenship). The last one is the development of a community program to build the framework of the "community care".
    With these being the main focuses, this study aims to conduct a theoretical and experimental study in order to present the framework of a polyphyletic recycling society to be achieved in a systematic and comprehensive manner from the interdisciplinary perspective of social welfare, medical care, justice, and policies.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

≪プロジェクト概要≫
 本プロジェクトの目的は、日本の次社会における価値、規範の解明と、新たな共生社会のもとでの精神保健医療福祉システムの再構築に向けて、目指すべき多元的循環型社会のフレームについて体系的かつ総合的に提示すべく検証を行うことにある。メンバーには、社会福祉学、精神医療・看護学、法学、政治学を専門とする大学教員以外に、実践に携わっている3名のソーシャルワーカーによって構成されている。2年間にわたる主な活動としては、ⅰ研究会開催(全7回)と研究報告(論文執筆、日本社会福祉学会第64回秋季大会発表報告2016年9月)、ⅱイタリア・トリエステでの調査(2017年3月、2018年2月)、Ⅲ公開研究会・講演会などがあげられる。
 ⅰ研究会・論文執筆による報告テーマは次のとおりである。
今川奈緒「特別教育と普通教育との境界-アメリカのRTIを手がかりに」「精神障害者の自立と法制度からの排除について」
吉川かおり「精神保健福祉システムにおける障害者家族とケアの再構築」
高山裕二「市民社会と『差異の平等』センのロールズ批判を中心に」
吉浜文洋「現代の精神科医療・看護と身体拘束」
岡村正幸「次社会における精神保健医療・福祉システムの構築に向けて―外と内と排除の論理をめぐって―」
緒方由紀「わが国の精神保健医療福祉法制度と市民社会」
 ⅱ海外調査イタリア・トリエステ 
①2017年3月「司法精神医療改革の実践について」司法精神科病院の閉鎖(2015年施行)により州ごとの居住施設REMSでの支援が始まっており、現状についてREMS職員と精神保健センターのソーシャルワーカーへのインタビュー。
②2018年2月「アソシエーション、協同組合などのセクターの役割と歴史」協同組合の職員から説明を受けた。また、近年ヨーロッパのある島の古い精神科病院で非人道的な処遇がなされていたことを示す資料を入手し、精神医療の地域(国)の価値や文化による格差が存在することを知る機会となった。
 ⅲ公開研究会の実施
イタリアの精神保健改革の中核となる文化と価値についての検証をプロジェクトにおいて進めるうえで、脱制度化のリーダーであり、この間の新たに司法精神科医療改革を進めるフランコバザーリア協議会会長でもあるGiovanna Del Giudice氏をわが国に招聘し、研究交流と共に本プロジェクトの成果報告の一部として公開研究会、講演会を二部形式で開催した(2018年3月20日)。
*研究会報告 「多元的循環型社会における精神保健医療福祉システムの構築について」岡村正幸(佛教大学教授)
*講演「病院中心型精神医学から地域精神保健へ、排除から包摂へ、権利の否定から権利の構築へ…イタリアでの治療の場における拘束撲滅運動を通して」フランコバザーリア協議会会長 Giovanna Del Giudice
 指定発言として、本研究会メンバーの吉浜佛教大学教授は「精神科看護の立場から」、高山裕二明治大学准教授は「政治学の立場から宗教との関連において」、それぞれコメントおよび問題提起がなされた。さらにフロアからのリアクションペーパーの一部を紹介し、Giovanna Del Giudice氏より、イタリアの精神保健改革の運動に関する補足説明がなされた。
 当日は90名を超える参加者があり当事者、家族、専門職(医師、コメディカル、福祉)、学生、ジャーナリスト、市民、教員と幅広く、日本の精神保健医療福祉に対する問題意識が高いことがうかがえた。とりわけ院内拘束は市民としての排除の側面の一方で、医療的根拠(自殺企図への対処など)や制度を運用する側の実態にも注視していかなければならない等々、日本側の課題の再確認ができたと同時に、イタリアのこの間の運動をとおしてあらためて日本の議論の方向性という点においては共有ができつつあると思われる。
≪成果物≫
 本研究会の成果として、2種類の出版(いずれもミネルヴァ書房)を準備中である。
 一つは、脱制度化以後、現在のイタリア精神医療改革の焦点の一つになっている精神科医療と身体拘束の現実に関するGiovanna Del Giudice氏らの著書「SLEGALO ! : 彼をほどきなさい(仮題)」の翻訳である。この本はイタリアでの全国精神保健フォーラムで提起され、2016年の下院議会キャンペーン、拘束への取り組みとして、多くの人々に、社会に伝えていくために編纂されたものである。訳書においては、Giovanna 氏の新たなわが国へのメッセ―ジを加えると共に、研究会メンバーによる解題も加えたものとして出版予定である。
 二つ目は、「多元的循環型社会における精神保健福祉システムの再構築(仮)」メンバー執筆によるプロジェクトの研究成果をまとめたものである。


ホームページへのリンク ◆トヨタ財団WEBサイト内関連記事