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助成対象詳細(Details)

   

2015 研究助成 Research Grant Program  /  (A)共同研究助成  (A) Joint Research Grants
助成番号
(Grant Number)
D15-R-0699
題目
(Project Title)
教育における時・空間の統合の研究―京都府・童仙房地域を中心にしたフィールドから学べるもの―
Toward Integration of Time and Space in Lifelong Learning: From the field of Dosenbo area, Kyoto
代表者名
(Representative)
前平 泰志
Yasushi Maehira
代表者所属
(Organization)
畿央大学教育学部
Faculty of Education, Kio University
助成金額
(Grant Amount)
 6,000,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

本プロジェクトの目的は、教育とは学校という空間において、そして子ども時代においてのみ、営まれるものであるという固定観念を壊すことにある。そのために、個人の誕生から死に至るまでの人生という時間のなかで展開される教育的な営みとその個人を形成する空間とを切り離さずに、その相互作用(教育における時間的統合と空間的統合)をとらえる視座を明示することにある。人と、人々の住まう空間である地域社会とが歴史という時間のなかで相互に影響を与えあっていくダイナミズムを明らかにすることこそを目指している。本研究は、理論研究と並行して10年にわたる京都府下の南山城村の童仙房地域で行ってきたフィールド研究へのひとつの道標を目指しているが、単なる地域教育実践の掘り起しにとどまらない。さらに持続的に関わっていくための再出発点ともなるものである。人の教育は生涯にわたること、そしてそれは、その生涯にわたって形成と自己形成をとげていく空間と不可分の関係にあること、を人々があらためて再認識することであり、それによって、社会の新しい価値が創出されていく第一歩になると思われる。

    This project aims to revolute the fixed idea that education exists only in the space of school and/or between the terms of school age. It presents a new theory from various kinds of practices in the longer times, and wider space under the ground of education to fully explore the concept of lifelong learning, which consists of 'educational time' from the individual and 'space integration' from all facilities. In other words, it is to make clear of dynamism under the influences between one and one's community in the time of history. This project aims to experiment new values even at the sprout stage that learning is to be understood without separating the nature of history and that of space. 
    Researchers and practitioners have been trying to wrap up the integration of educational time to one's birth and to death, and the integration of educational space from every kind of educational organizations.
     They talked, studied and acted both integration as entirely separate factors. For instance, when the idea of co-ordination (school-home-community) is emphasized as the integration of space, then one's issue of time axis (history) would be put aside. On the other hand, when one's life-history is emphasized as the time integration then space integration comes subject to its ones' axis. 
     This study is the accumulated result of a 10-year field study on Dosenbo Minami Yamashiro, a prefecture in Kyoto, which is one of the only case studies of community practices. By understanding the learning process (time) and learning context (spaces), one's consciousness transformation becomes closely related to one's living world (space) and as well as formation and self-formation for the whole life.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

本研究は、近代という時間しか持たない特異な開拓の地、京都府南山城村童仙房地域にフィールド研究の焦点を据えて、そこに住む(住んだ)人たちの自己形成過程という時間軸を空間軸と交差させながら、たどった研究である。
人が学ぶということは、本来、「どこでもないどこか」(nowhere)で学ぶのでもなく、また「どこでもいいどこか」(anywhere)で学ぶのでもない。学ぶためには学ぶ空間が必要であり、また空間自体が学ぶ内容、方法を規定する。人と空間は相互に作用しあっているからである。
聞き取りは、ライフヒストリー(個人の歴史=時間)を叙述することよりも、童仙房の自然や空間を表明するダイナミックな時間=歴史のなかへの位置づけを目指した。
童仙房地域の人口流入は、大略以下の4つの段階に区別される。
①明治初期―第1次入植者
②第二次世界大戦敗戦直後―第2次入植者
③高度経済成長期
④1990年代以降-「Iターン」者の出現
開拓事業は、多くの離農者を出しながらも、絶えず新しいメンバーを迎えながら、村秩序の空間が維持されてきた。童仙房では1番から9番まででの番号が通称地名として使われているが、これはその地域が開拓された順番と言われている。童仙房という空間は、時間を刻印しているのである。
空間とは、境界線を確定することであるなら、関係としての人間の形成の境界線は<他者>を発見することであろう。童仙房では当初から自己以外をすべて他者と認識することから出発する他なかった。国家政策の変遷は、国境という境界線の変遷につれて<他者>と<我々>もまたそのたびごとに再設定され続ける。だが、新たに出現した開拓地にとって、<我々>とはだれのことを指すのだろうか。<我々の時間>と<他者の時間>は同一の空間にあっても、異なる時間を生きているはずである。戦前、戦後、童仙房のなかで生きた在日朝鮮人の生きた時間は、もうひとつの非対称の時間を物語るものである。
子どもの時間と空間も童仙房では、特異な時空間を構成している。野殿童仙房保育園の設立は、全国的に見ても、近隣地区と比較しても、きわめて遅い時期にやってくる(1970年代)。農業する母親のもとで子どもの成長を見守る過程から、子どもたちの精神ばかりか身体までも「教育する存在」(ホモ・エデュカンス)に再編成されていく過程を、保育園での保育の設立から検証した。
童仙房の近代は、食の近代でもある。戦後から高度経済成長期にかけて、近代化の象徴である「食生活改善運動」が推進されていくのは、この童仙房でも例外ではない。童仙房という空間に特有の調理や保存の方法、食べ方の工夫が各家庭のなかでなされてきた時間とは異なる時間が侵入してくる。その当時の主婦がどのような戸惑いを持ち、かつどのように対処していったかを、語りと実際の料理を再現しながら食の空間と時間を改めて考察した。




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