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助成対象詳細(Details)

   

2016 研究助成 Research Grant Program  /  (B)個人研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D16-R-0344
題目
(Project Title)
「暮らしの目線」に見るフィールド研究の感性―映像メディアを活かす超学際研究の表現形の探究―
Senses of Field Studies Standing on Peoples' Livelihood: The search for phenotype of interdisciplinary research to take advantage of the video media
代表者名
(Representative)
澤崎 賢一
Kenichi Sawazaki
代表者所属
(Organization)
アーティスト/映像作家
Video artist/Film director
助成金額
(Grant Amount)
 1,400,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)


    アジアやアフリカでは、人間生存のための生業や開発が資源・生態環境を刻々と蝕みつつあるなど、時限を帯びて深刻化する諸問題に直面している。他方で、依然として存在する多様な文化や社会、生業体、在来知、紛争体験、人びとの活力などに、諸問題の解決やありうべき未来社会の形成に向けた潜在性を見出すことができる。そこで蓄積される多様な学術知見と経験は、新たな学術領域の形成への具体的なコンテンツと教育・社会実践に機動力を与えるだろう。資源・生態環境を蝕む急激で過剰な破壊を伴う意思決定や行為を抑制するのは、資源・生態環境への人びとの慎み深い思慮や態度ではないか。地域特有の暮らしの多様性の中には、この人びとの「畏れ・敬い」に拠った感性を見出すことができる。
    本研究では、ケニア、ベトナム、タンザニア、インド、ブルキナファソ、日本各地を対象地に、研究者のフィールド調査に同行し、研究以前の段階を含めて「暮らしの目線」から人びとの感性を映像で記録し、記録した映像を活用した超学際的研究手法を創出することで、開発支援や生態環境・生物多様性の保全などの社会実践や文化への織り込みのありかたを探求する。

    Asia and Africa are facing various problems that are escalating towards a time limit, such as the gradual depletion of resources and destruction of the ecology due to harvesting of resources necessary for human survival and development. On the other hand, potential for the solution of these various problems, as well as for the formation of an ideal future society, can be seen in the multitude of surviving cultures and societies, occupations, traditional wisdom, conflict experiences, and human vitality. The wide range of academic insights and experiences that accumulate in these areas will provide specific content to the formation of a new academic field, as well as mobility to education and the social execution of projects. Is it not the humble consideration and attitude of the people towards resources and ecology that suppresses decisions and actions that bring rapid and excessive destruction to the resources and ecology of an area? This human "fear and respect" can be seen reflected in the sensibilities of the diverse lifestyles unique to each area. 
    This research project will investigate the possibilities of social execution and cultural integration of development support and the preservation of ecosystems and biodiversity through the creation of trans-interdisciplinary methods using recorded video footage from field studies standing on peoples' livelihood of the locals - including from before the studies - taken alongside researchers in the field in Kenya, Vietnam, Tanzania, India, Burkina Faso, and multiple locations in Japan.
 

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

■プロジェクトの概要
(1) 問題点
アジアやアフリカのフィールド調査の現場の多くは、人間生存のための生業や開発が資源・生態環境を刻々と蝕みつつあるなど、時限を帯びて深刻化する諸問題に直面している。他方で、調査過程を「暮らしの目線」から眺めると、依然として存在する多様な文化や社会、生業体、在来知、人びとの活力などに、諸問題の解決やありうべき未来社会の形成に向けた潜在性を見出すことができる。しかし、従来研究の論文を中心とする表現だけでは、それら潜在性を十分に表現できていないのではないか。
(2) 解決方策
資源・生態環境を蝕む急激で過剰な破壊を抑制するのは、資源・生態環境への人びとの慎み深い思慮や態度-端的には「畏れ・敬い」-ではないか。この感性(在来知の潜在性)を最も多感覚的に捉え、広く共有することができる映像表現によって、その潜在性を活かすことのできる専門領域を乗り越えた方途を形成し、提案する。
(3) 研究目的
アジア・アフリカ・日本各地を対象地に、これまでの学術研究で表現されてこなかった「研究者とそれに呼応する人びとの感性」を映像によって表現するための手法を構築する。そして、「暮らしの目線」から人びとの心象風景や地域の実態を捉え、自然との共生を文化に織り込む芸術表現の実現、また開発支援や生態系・生物多様性の保全などの社会実践の一助となることを目指す。
(4) 研究方法
① 研究者のフィールド調査に同行し、調査風景のみならず旅程全体をできるだけまるごと映像で記録していく。同時に、映像独自の時間の流れの中で、最も在来知の潜在性を表現できる編集手法を探っていく。
② 芸術表現と社会実践を同時に実現するために、記録した映像を「(a)映像作品」と「(b)映像教材」として、研究者が所属する機関のワークショップや講演会、またYouTubeやiTunesUで発信する。
(a) 映像作品:文化の記録と芸術表現の両立を探りながら、課題の共有に必要な言語化以前の感情を鑑賞者の心に深く刻みこむ芸術的表現として映像を制作する。
(b) 映像教材:調査内容をわかりやすく説明すると共に、多様な専門領域を持つ研究者の活動を包括的に結び付け、「反転授業」などで活用できる映像教材として研究者と共同でまとめる。

■プロジェクトの成果
(1) プロジェクト「暮らしのモンタージュ」の設立、および公式YouTubeの開設
映像を活用した超学際的研究手法を創出するためのプラットフォームとして一般社団法人を設立し、研究者やアーティストらと共にプロジェクト「暮らしのモンタージュ」を立ち上げた。また、制作する映像作品を広く一般に公開するために、公式YouTubeを開設した。
(2)「暮らしの目線」でフィールド調査を記録した映像作品の制作
ベトナムでの学習支援活動を記録した映像作品《貧困の連鎖を断ち切る 〜ベトナム・フエ市での学習支援〜》、高知県の怒田集落での活動を記録した《怒田集落 -地域の「ための」民謡づくり-「たらしめことば」の語りとアートの実践》、ブルキナファソ、タンザニア、ケニアなどでの活動を短く紹介する映像シリーズ《LIVES as one's landscape》など多数の映像作品を制作した。
(3) 学会、講演会、ワークショップ、展示会などで映像を活用
制作した映像作品は、総合地球環境学研究所が企画する研究会や講演会、日本国際地域開発学会、京都市立芸術大学での研究発表、タンザニアで開催された農業祭での展示上映、こども向けの講演会など、多様な場面で活用された。
(4) ウェブマガジン「シネフィル」にて、フィールド調査での出来事を綴った連載記事
研究者との旅程を、撮影者のまなざしによってテキストと写真で一般向けに綴ることで、フィールドの潜在性を探る試みを行った。

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