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助成対象詳細(Details)

   

2016 研究助成 Research Grant Program  /  (A)共同研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D16-R-0404
題目
(Project Title)
戦争災害前後の日常生活の記憶継承に向けたアクションリサーチの実践的研究
Living with the Bomb: A-bomb and air-raid survivor memories and their daily lives
代表者名
(Representative)
木村  豊
Yutaka Kimura
代表者所属
(Organization)
日本学術振興会
Japan Society for the Promotion of Science
助成金額
(Grant Amount)
 3,800,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

    戦後70年が経過する中で、戦争災害の記憶を語り継ぐ活動が盛んに進められるとともに、そうした活動を対象とした研究が数多くなされてきたが、その中では戦争災害を被災した当日の体験に重きが置かれ、戦争災害の非日常性が強調されてきた。それでも、戦争災害を生き抜いた人びとは連続した日常生活(防空―戦災―占領―復興)の中で戦争災害を経験している。また、焼け跡の写真などを含む戦争災害に関する歴史資料は数多く存在するが、いまだに詳細が不明なままのものが多く、当事者がそれに容易にアクセスできないため、語り継ぐ活動の中でもほとんど活用されていない。そこで本プロジェクトでは、日米の公文書館等で戦争災害前後の日常生活に関係する歴史資料を収集した上で現地を訪れ、アクションリサーチの手法を用いて戦争災害を経験した人びとと共に歴史資料を提示しながら戦争災害前後の日常生活に関する聞き取り調査を行う。そうして得られた歴史資料と口述資料を総合的に検証・分析することによって、日常生活から戦争災害の記憶を捉え直し、戦争災害の記憶が持つ普遍的な価値を探求するとともに、新しい戦争の記憶継承のあり方を提示する。

    Much research has been done on the efforts of atomic bomb and air-raid survivors to pass on memories of their experiences in the bombings. This research has often emphasized the day of the bombings or focused on the particular nature of the war damages. Yet those who lived through the war experienced the attacks and war damages as one part of their daily lives during and after the war, at which times they were engaged in various other activities including air-raid defense and recovery efforts. In addition, despite the many existing historical materials on the bombings including before-and-after images of the affected areas, many aspects of raids remain unclear. Furthermore, it is difficult for air-raid survivors to access these materials, and thus such resources remain underused in their attempts to narrate the bombings. In order to overcome this difficulty, as well as to better record atomic bomb and air-raid survivor war memories for future generations, this project proposes to undertake two things. The first is to utilize archives in the United States and Japan and to gather historical materials related to the Tokyo and Hiroshima bombings. The second is to use these materials in interviews with survivors, and to record their testimonies as oral-history. These interviews will especially focus on placing the events of the bombings within the context of survivors' daily lives before and after the attacks. In this way, and based on the data and information gleaned from the oral histories and gathered materials, the project ultimately aims to better understand the meanings of the atomic and fire-bombings and the impacts that the attacks had on survivors' daily lives. In addition, it seeks to achieve a new and interactive method for passing on memories of the attacks.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

〈プロジェクト概要〉
 本プロジェクトでは、戦争災害の記憶の継承をめぐる問題を「日常」という側面から捉え直すとともに、戦争災害の記憶が持つ普遍的な価値を探求し、新しい戦争の記憶継承のあり方を提示することを目的としている。
 戦後 70 年が経過する中で、戦争災害の記憶を語り継ぐ活動が盛んに進められるとともに、そうした活動を対象とした研究が数多くなされてきたが、その中では被災当日の体験に重きが置かれ、戦争災害の非日常性が強調されてきた。それでも、戦争災害を生き抜いた人びとは連続した日常生活(防空―戦災―占領―復興)の中で戦争災害を経験している。
 また、焼け跡の写真や映像などを含む戦争災害に関わる歴史的なビジュアル資料は数多く存在し、その一部は日米の文書館などに保存されているが、いまだに撮影場所などの詳細が不明なままのものも多く、また、戦争災害を経験した人びとがそれに容易にアクセスできないため、戦争災害の記憶を語り継ぐ活動の中でもほとんど活用されていない。
 そのような問題意識のもと、本プロジェクトでは、アクションリサーチの考えにもとづき、主に以下3点の調査研究を進めた。

(1)ビジュアル資料調査
 アメリカのナショナルアーカイブスを中心に日米の文書館において調査を行い、日本の戦争災害前後の日常生活に関わるビジュアル資料を収集した。特に、戦争災害で被災した地域で戦時期・占領期に撮影された写真・映像資料を中心に調査を行い、本助成期間を通して、写真資料2000枚以上、映像資料500本以上、そして、それらに関連する文書資料を収集した。

(2)ビジュアル資料にもとづく現地調査
 上記のビジュアル資料をもとに、東京・広島を中心に、群馬・埼玉・神奈川・長野・愛知・三重・大阪・長崎において現地でのフィールドワーク調査を行なった。ビジュアル資料を持ってそれが撮影された現地を歩きながら、写真・映像に写されているものについての検証を行うとともに、戦争災害を経験した人を中心に、長年その地に居住している人びとに対して、それらのビジュアル資料を提示しながら聞き取り調査を行った。

(3)ビジュアル資料展示型調査
 東京と広島において、上記のビジュアル資料を用いて、写真・映像展示型の調査を行なった。各地域の公共的な場所(広島:2018年8月5・6日平和記念公園・東京:2019年3月16・17日神楽坂スペースAOM、2019年3月30・31日八重洲ブックセンター本店)において、それぞれの地域の戦争災害前後の日常生活に関わるビジュアル資料を展示するとともに、その観覧者に対して簡易なアンケート調査・聞き取り調査を行った。

 これらの調査を通して得られた各種資料(写真・映像・文書・音声など)をとりまとめて、戦争災害前後の連続した日常生活という側面から戦争災害の記憶について再検討するとともに、「日常」という視点を取り入れた新しい戦争の記憶継承のあり方について考察した。

〈成果物〉
 本プロジェクトの主な成果物は、以下の3点である。

①プロジェクトの中間報告として、公開研究会・まちあるきワークショップ「都市における戦争と日常の交点を探る」(2018年6月17日すみだ北斎美術館)を開催した。

②プロジェクト全体を通した成果報告として、写真・映像展示イベント・ギャラリートーク「日常へのまなざし―昭和20年代、進駐軍が見た日本の街角」(2019年3月16・17日神楽坂スペースAOM、2019年3月30・31日八重洲ブックセンター本店)を開催した。

③プロジェクトの研究成果をとりまとめた冊子『日常へのまなざし―戦争災害前後の記憶継承に向けたアクションリサーチの実践的研究』を作成した。

また、日米の文書館において収集した写真・映像資料をアーカイブ化しインターネット上で公開する準備を進めた(近年中に公開予定)。

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