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助成対象詳細(Details)

   

2016 研究助成 Research Grant Program  /  (B)個人研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D16-R-0424
題目
(Project Title)
自然と人の間にある「境界」をめぐって―心意伝承に新たな可能性を拓く―
On the "Boundary" that Lies between Nature and Human: To open up new possibilities for "image folklore"
代表者名
(Representative)
今井 友樹
Tomoki Imai
代表者所属
(Organization)
株式会社工房ギャレット
Studio-Garret
助成金額
(Grant Amount)
 1,400,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

    現代社会は"心の貧しさからいかに解放されるか"を模索している。それは自然と人の間にある「境界」を無理に切り離したことで招いた結果ではないだろうか。
    これまで我々は、人間生活において混沌・恐怖・死といった"不安なもの"を高度な科学技術や社会制度の発展によって克服しようとしてきた。しかし我々がいま直面している諸問題は発展による恩恵の裏側で引き起こされており、必ずしも発展は幸福に繋がらないと考えるようになってきている。
    本研究は、この課題解決の手掛かりを「心意伝承」の世界に求める。
    先人たちは"不安なもの"(=心意伝承)を、自然と人の間にある曖昧な「境界」として機能させてきた。岐阜県東白川村の心意伝承(妖怪、幽霊など)と全国の事例を相互に鑑み、いかに伝承されどのような役割を果たしてきたのかを検証する。さらに現代社会で「境界」はなぜ切り離されたのか、その功罪は何であるかを本研究の柱とし、多様な視点で問い直す。その上で、先人たちが抱いてきた"不安なもの"を"心の豊かさ"として捉え、切り離された「境界」を地続きの世界としてどのように現代社会に見出すことができるかを提示する。

    Modern society is exploring on "how to be released from the poverty of the mind". Is it not that this result was created due to forcefully disconnecting with the "boundary" that exists between nature and human?
    So far we have tried to overcome "things that makes us anxious" like chaos, fear, and death within human life through advanced science and technology, and development of a social system.
    However, we are starting to think that development does not necessarily lead to happiness because behind the benefits of development are the various problems we are facing now.
    In this research, we are to find some kind of clues to solving the problem in the world of "Image Folklore". Our predecessors have been treating "things that makes us anxious" =  Image Folklore to function at the vague "boundary" located between nature and human.
    By gathering the Higashishirakawa village in Gifu prefecture's Image Folklore (goblin, ghosts, etc) and take into account the mutual view of the nationwide cases, verify as to how the tradition was handed down, and what kind of roles were played. In addition, to inquire why the "boundary" was detached in modern society, for the merits and demerits to be the pillar of this study, and to question again from a variety of perspectives. Moreover, "things that make us anxious" (which was embraced by the ancestors) will be perceived as the "richness of the heart", and consider "boundary" as the world of adjoining land, and present how modern society can be found.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

〈プロジェクトの概要〉

▶︎ プロジェクトの課題
 現代社会は“心の貧しさからいかに解放されるか”を模索している。それは自然と人の間にある「境界」を無理に切り離したことで招いた結果ではないだろうか。これまで我々は、人間生活において混沌・恐怖・死といった“不安なもの”を高度な科学技術や社会制度の発展によって克服しようとしてきた。しかし我々がいま直面している諸問題は発展による恩恵の裏側で引き起こされており、必ずしも発展は幸福に繋がらないと考えるようになってきている。本研究は、この課題解決の手掛かりを「心意伝承」の世界に求め、現代社会で「境界」はなぜ切り離されたのか、その功罪は何であるかを本研究の柱とし、多様な視点で問い直した。その上で先人たちが抱いてきた“不安なもの”を“心の豊かさ”として捉え、切り離された「境界」を地続きの世界としてどのように現代社会に見出すことができるかを目指した。

▶︎ 研究の内容・方法
先人たちは“不安なもの”(=心意伝承)を、自然と人の間にある曖昧な「境界」として機能させてきた。岐阜県東白川村の心意伝承の1事例であるツチノコ伝承を手掛かりアンケートやインタビュー取材を行った。もともと東白川村ではツチノコの目撃者は、「見たら人には言ってはいけない、災いが起こる」と考えられていた。しかし現在は、ツチノコを観光資源として捜索イベントを行ったり、ツチノコ関連グッズがお土産になっている。その歴史と変容過程を目撃者や関係者などにインタビュー取材を行った。さらに全国の同様な事例先にも取材をし、いかに伝承され、どのような役割を果たしてきたのかの検証と比較を行った。

〈成果物〉
記録映画作品にまとめて発表する予定である。東白川村で毎年5月3日に開催されている「つちのこフェスタ」のイベントを本研究のメインに据えていたが、平成30年の開催が雨により中止になった。よって助成期間終了後の令和元年5月3日のイベント開催を取材した。その為、成果物とする記録映画作品は、年内に編集・完成、翌年2020年春以降に劇場公開を目指す。

▶︎▶︎ 記録映画作品「(仮題)ふるさとのツチノコを追って」(約90分)
▶︎ 作品内容
「ツチノコはいると思うか?」この問いに、おそらく大半の現代人は「いない」と答えるだろう。ビール瓶を飲み込んだ蛇のようで、飛んだり、転がったり・・・。様々な目撃情報があるものの、未だに発見されていない謎だらけのツチノコ。私の生まれ育ったふるさと・岐阜県東白川村は、平成元年からツチノコを観光資源として、ツチノコ捜索のイベントを毎年行い、村おこしに利用している。私は子どものころ「いる」と信じていた。しかしいまは「いない」と冷めている。なぜ気持ちが変化したのか。本作で描かんとするのは、「いる」・「いない」の問いの間(境界)に隠された、ふるさとの自然観の変容である。自然を相手に暮らしてきた人は、理解できないもの、不可解なものに遭遇することがある。そんなとき、かつてなら「妖怪に出会った」とか、「狐に騙された」とか、お互いに了解され共有された世間があった。しかし、いまそんなことを言えば「迷信だ」と片付けられてしまうだろう。もしかしたらツチノコは「いる」と信じた人・時代のほうが心豊かであったと言えるのかもしれない。「いない」と思う現代人が、如何に「いる」と思う世界を共有できるのか。・・・果たして、本当にツチノコはいるのだろうか?


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