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助成対象詳細(Details)

   

2016 研究助成 Research Grant Program  /  (A)共同研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D16-R-0661
題目
(Project Title)
地域社会における多世代共創型演劇ワークショップによる効果の総合的・定量的評価
Comprehensive and Quantitative Evaluation of the Effect of Theater Workshop Targetting Multi-generation in the Community
代表者名
(Representative)
蓮行
Rengyou
代表者所属
(Organization)
劇団衛星
Eisei Theater Company
助成金額
(Grant Amount)
 5,800,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

    日本は2007年に超高齢社会に突入して以降高齢化率の上昇が続いている。しかし、その進展速度と比較して国民意識や社会システムの対応は遅れており、介護従事者の負担増大、地域社会における世代間の断絶、社会保障費の増大という課題への対応策が求められている。
    上記の課題に対する有効な手法として「演劇ワークショップ」がある。これは、演劇の制作・上演という集団創作のプロセスを通じて、参加者の多様な能力の向上を促す手法である。子供から高齢者までの多世代を対象とした演劇ワークショップの実践により、介護者の心理的負担軽減、地域社会における互助関係の再構築がなされ、結果的に社会保障費の削減が期待される。
    本研究の目的は、多世代を対象とした演劇ワークショップの効果の総合的・定量的な評価と、普及に向けての知的基盤の構築である。また、既存の小劇場を実践の場として活用することで、小劇場が地域社会に創出しうる価値を示すことも目的とする。
    演劇ワークショップの効果について客観的根拠を示すことで、今後の政策提言と社会実装につながり、演劇を核とした多世代共生社会のモデルという新たな価値を創出することができる。

    Japan has been called super aging society since 2007 and aging rate has continued since then. However, the public awareness is not enough and reforms of social system also delay against to the rapid progress of aging. Therefore, various measures are required to solve some related problems such as increased burden of care givers, isolation of senior generation in local community, and increased costs of social security.
    "Theater workshop" is a valid approach to the above problems. This is a method to encourage the improvement of various capabilities of the participants through a process of creation and performance of theater drama in group. The practice of theater workshop involving multi-generation from children to elderly is expected to contribute to rebuild the mutual aid relationship in the community and decrease the psychological burden of care givers, and such effects seem to result in the reduction of social security costs.
    The purpose of this study is comprehensive and quantitative evaluation of the effect of theater workshop targeting multi-generation in order to spread such workshop. In addition, it is also aimed to present the new value that local small theaters can create in the community by using existing small theaters as places for practice of workshop.
    Revealing the objective evidence about the effect of the theater workshop is expected to lead to future policy recommendations and social implementation of theater workshop, and also be possible to create a new model of "multi-generation symbiosis society" with theater as core. It can be said that this study can achieve to creation of new value in society.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

本研究は①多世代共創型演劇ワークショップの開発と実施、②参加者に対する心理・身体・社会的効果に関する量的・質的評価の2つの要素から構成された。まず、研究会において試行的に開発したワークショップを実施し、そのプログラムについて、各地域特性を予測、考慮し改善を行なった。つづいて、開発したワークショップを全国4箇所(京都市右京区・福井市。京都市下京区・土佐市)の介護施設において実施した。参加者は、ワークショップ実施場所である介護施設を利用する高齢者と施設スタッフ、近隣に住む成人や子ども20名程度であった。また、演劇ワークショップ実施前後の参加者の心理的・身体的変化を定量的に評価するため、参加者を対象として複数の尺度による質問紙調査を行った。
演劇ワークショップは、集団創作のプロセスを通じて、参加者の多様な領域における知識・スキル、そしてモチベーションの向上が期待される手法である。このワークショップは、双方向的な交流と自発的なディスカッションを促す機能、対等な関係性における協働を促す機能を有しており、参加者の主体性や想像力の向上、コミュニケーション能力の養成、参加者相互に対する敬意の喚起に有効なツールとなる。子どもから現役世代、高齢者(介護者・被介護者を含む)までを対象に演劇ワークショップを実践することで、介護の現場においては介護者と被介護者間におけるコミュニケーションの円滑化と介護者の心理的負担軽減、地域社会においては異世代の他者を尊重する意識と互助的関係の再構築といった、福祉領域における効果が期待することができる。
プログラムの効果を検討するために、プログラムの事前・事後・遅延調査において測定された幸福度得点、自尊感情得点、コミュニケーション能力得点、共感性得点、ソーシャル・キャピタル得点をそれぞれ従属変数とする1要因分散分析を行なった。
本研究は演劇体験の効果について、ポジティブな影響を持ちうるであろう演劇の構成要素を推定し、その要素を用いて演劇プログラムを再構成するというような要素還元的な視点からではなく、演劇体験の全体性を重視し、比較的探索的な視点から、調査を試みた。また、多様な心理社会的スキル・知識・状態を測定する質問紙を使用しているが、各構成概念に対し演劇が影響を及ぼすに至る心理的メカニズムに関する詳細な仮定をおかず、調査を行った。
全体の傾向として、「参加者の年齢」と「過去の演劇体験の程度」の交互作用効果については一定のパターンがあった。より具体的にいえば、年齢が低い参加者においては、過去の演劇体験が多くなるほど、本プログラムへの参加に伴う各種資質・能力の伸びの程度が相対的に小さくなること、一方で、年齢が高い参加者においては、過去の演劇体験が多くなるほど、各種資質・能力の伸びの程度が相対的に大きくなる、という傾向が推察された。
多世代共創型の演劇ワークショップの設計にあたっては、個人差を考慮した個別最適型実践を目指すのではなく、個人差を考慮しながらも全員がそこで充実した経験を得ることができる演劇ワークショップの構築が必要と考えられる。
本研究は、小劇場がワークショップを通して複合的に地域の福祉を向上させるという新たな多世代共生社会の仮説的モデルに基づき、その中核となる、演劇ワークショップの開発と評価を行った。小劇場を高齢化に関する諸問題に苦しむ地域の支援の中核に据えたことは、画期的なモデルとして意義深いものであり、地域に眠る小劇場に新たな価値づけを行うものであった。国や自治体への具体的な政策提言につなげるために不可欠な定量的なエビデンスを得る試みにより、地域での演劇的手法によるコミュニケーション推進のための政策について、費用対効果を考慮した上で提言を行うことへの道筋をつけることができたと考えられる。

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