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助成対象詳細(Details)

   

2016 研究助成 Research Grant Program  /  (B)個人研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D16-R-0692
題目
(Project Title)
なぜありふれた自然環境を守るのか?「関係価値」評価メカニズムの解明
Why Protect Nature? Understanding Social-ecological Processes of Relational Values
代表者名
(Representative)
土屋 一彬
Kazuaki Tsuchiya
代表者所属
(Organization)
東京大学大学院農学生命科学研究科
Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo
助成金額
(Grant Amount)
 800,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

    近年、身近な、どこにでもありふれているような自然環境との関わりが、人々に精神的ストレスの緩和などの正の影響を与えることが明らかになりつつある。しかし、環境経済評価や絶滅危惧種等の保全を目指す立場からは、こうした身近な自然環境の価値は高く評価されず、自然環境保全上の位置づけも決して高く無かった。こうしたギャップを埋める概念として、人と自然の関わりこそが価値の源泉であるとする「関係価値」という考え方が提案されており、本研究は、東京都内の事例地域における質問紙調査と高解像度衛星画像分析を用いて、「ありふれた自然環境に対する関係価値を、どのような地域で、どのような人が、どのような自然環境に対して認識しているのか」の評価メカニズム解明に取り組む。この成果を応用することで、自治体や市民団体が推進してきた自然環境教育や自然体験イベントなどのソフト事業に対して、地域住民にとっての生活への貢献の評価が可能になる。加えて、ありふれた自然環境の保全と開発が対立する状況において、自然環境の関係価値を評価し定量的に提示することで、建設的な議論の土台づくりを支援するための枠組みを提示出来る。

    There are increasing numbers of stuides on how interactions with natural environment in daily life help to mitigate psychological stress and provide restorativeness. Conventional value systems, such as instrumental or intrinsic values, have not properly addressed these benefits thus failed to include the importance of human-nature interactions in environmental policy agenda. Recent recognition of relational values (Chan et al. 2016) may fill this gap through providing new theoretical and methodological approach to the evaluation of human-nature interactions. Here, we use web-based questionnaire and the analysis of high-resolution satellite imagery and investigate""how people recognize relational values to what kind of natural environment at three study sites along rural-urban gradient in Tokyo Metropolitan Area. Our results will help to improve local environmental governance on volunteer-based green space management and environmental education programs.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

<プロジェクトの概要>
従来、なぜ自然環境を守るのかの理由づけには、自然環境の存在自体に本質的に価値があるという、固有価値の立場があった。近年では、固有価値のみに頼った自然環境保全の限界が意識され、自然環境が持つ人間にとっての有用な価値を重視する立場も発展してきた。しかし、こうした有用価値の考え方は、多くの人々が有用性を共有する場合には機能するものの、「私個人にとってはとても重要である」といったような、個々の関係性に依拠する場合を十分に捉えきれないこと課題であった。

他方で、近年、身近でありふれた自然環境がもたらす「人と自然の関わり」の機会が、ストレスの緩和などの健康改善につながりうることが指摘されつつあり、そうした価値を総称して「関係価値」という第三の価値として位置づけることが提案されている。しかし、その背景にあるプロセスは未解明な点が多い。本研究は、日本の多くの人口が集中する都市を対象に、住民が認識している関係価値と自然環境タイプの関係性を解析し、関係価値の評価メカニズムの一端を解明することを目的とした。

日本の都市は、行政によって整備される都市公園などの公共の自然環境に限らず、民有地である居住地においても、庭木や鉢植えのような形で存在している。また、同じく民有地の神社やお寺においても、巨木や鎮守の森のような自然環境がみられる。こうした民有地の自然環境は、ひとつひとつの規模は小さく、希少な生物が存在することも稀ではあるが、他方で、関係価値の観点からは高く評価される可能性がある。

本研究では、都心から郊外までを含む東京都市圏の居住者を対象に質問表調査を実施し、これらの自然環境タイプと関係価値の関係性について解析した。その結果、民有地である居住地の庭木や鉢植えに対する関係価値の評価が、同じく民有地の神社やお寺の自然環境や行政が整備する公園・緑地・街路樹に比べて、高くなる傾向が確認された。他方で、居住地内での自然とのふれあいの機会が全くないとする回答も4割程度存在しており、関係価値を享受するための場所を身近に持たない都市住民も相当程度存在することも明らかとなった。

関係価値の考え方は、生物多様性と生態系サービスを議論する国際的枠組みであるIPBESでも重要な概念に位置づけられているが、どのような自然環境に対して特に評価が高まるのかについての知見は少なかった。この点について、本研究は、居住地周辺の自然環境において関係価値の評価が異なりうることを示すことができた。本研究で得られた知見は、都市における「人と自然の関わり」の増大に寄与する自然環境の保全や整備を考える中で、行政による取り組みだけに頼らない、民有地の自然環境を活用するアプローチが重要となることを示唆していた。

<成果物>
上記の研究成果について、学術雑誌への投稿に向けて準備中である。

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