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助成対象詳細(Details)

   

2016 研究助成 Research Grant Program  /  (A)共同研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D16-R-0736
題目
(Project Title)
東南アジアにおけるコミュニティ・ポリシングの実践から学ぶ―治安改善および警察改革へのインパクトの検討―
 
Community Policing in Southeast Asia: Assessing the impact on community security and police reform 
代表者名
(Representative)
木場 紗綾
Saya Kiba
代表者所属
(Organization)
公立小松大学国際文化交流学部
Faculty of Intercultural Communication, Komatsu University
助成金額
(Grant Amount)
 5,800,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

    警察と住民の参加協働によって地域内の諸問題の解決を図る「コミュニティ・ポリシング」を実施してきた東南アジアの新興民主主義国において、1)その帰結として地域の治安はどの程度改善されたのか、また、警察改革はどの程度実現したのか、2)各国によって改善・改革の度合いが異なる要因は何か、3)それら知見はどのように紛争予防に応用できるのか、の3つの問いを設定し、比較研究を実施する。
    インドネシア、タイ、フィリピン、ミャンマーの4カ国を対象とし、それぞれの国を専門とする研究者および、各国で実際にコミュニティ・ポリシングに従事した経験を有する日本や欧州の警察官僚、現地の警察官僚、事業を財政的・技術的に支援してきたドナー(日本の国際協力機構JICAやスイスのGeneva Centre for the Democratic Control of Armed Forces:DCAF, 英国のSaferworldなど)と共同で研究会を開催し、複数の事例から教訓および知見を共有する手段を議論する。
    さらに、コミュニティ・ポリシングを平和構築や紛争予防に適用していくための手法や枠組みを提示する。

    This project will analyze community policing in some of the new democracies of Southeast Asia to widen our understanding of security sector governance in the region, a crucial field of study yet to be developed.
    In Southeast Asian countries, non-state security actors, such as private security companies, militia, and armed local vigilantes, continue to play traditional roles in maintaining community security. Over the past few decades, however, community policing (CP) activities have been introduced in some new democracies as an instrument to improve the safety and security of local communities.
    CP's unique participatory approach, which encourages collaboration between the police and community members, is said to help enhance a number of police reform efforts, including anti-corruption, trust-building with communities, human rights awareness, and gender sensitivity. CP programs in these countries have been technically and financially supported by the police of Western countries (particularly the U.K.) and Japan, and by institutions like the Geneva Centre for the Democratic Control of Armed Forces, SaferWorld, the Hanns Seidel Foundation, and the Japan International Cooperation Agency (JICA). 
    Against this background, this project tries to answer the following questions:
    1) to what extent and in what way have CP initiatives been effective in achieving community security and reinforcing police reform?  
    2) how have CP support programs influenced the progress of police reforms in Southeast Asia? Do the programs effect common reform results, or do they bring about outcomes unique to each country? Why do they occur?
    3) how those lessens learnt can be applied to conflict prevention or peacebuilding projects in the region in future?
    This project invites scholars and experts in the field of CP and other related areas to discuss these questions. Their presentations cover issues including theories pertaining to CP, and cases from Indonesia, Thailand, the Philippines, and Myanmar.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

コミュニティ・ポリシング(CP)とは、警察と住民の協働によって地域の防犯対策を講じたり、地域内の諸問題の解決を図ったり、治安の改善を目指したりする取り組みである。警察は人権や宗教、ジェンダーなどに関する訓練を受け、警察署の環境を改善し、住民からの信頼獲得に努める。住民は必要に応じて警察に情報を提供する。もともとは1960年代の米国で、貧困や差別に起因する治安の悪化への対応策として導入された経緯がある。その後、紛争や内戦後の国家再建とコミュニティの和解のプロセスとしても注目されるようになった。
東南アジアのインドネシア、フィリピン、タイ、東ティモールでは、政府がコミュニティ・ポリシングを警察の組織改革の一環として法的・制度的に位置付け、導入してきた。また、日本の国際協力機構(JICA)を含む西側諸国は過去20年間にわたって、これらの国々に専門家を派遣し、コミュニティ・ポリシング事業を支援してきた。それによって警察の捜査能力は一定程度向上し、警察官の職務意識も変化してきたとされる。
しかし、そう簡単に事業は進んでいない。警察機構は慢性的な予算不足とキャパシティ不足に悩んでおり、警察官の汚職や裏取引は深刻である。
西欧諸国では、従来は国家が安全保障上の役割を独占しており、近年になって次第に、国際機関やNGO,民間軍事会社などの多様な主体が国家と役割を共有するようになってきた。一方で非西欧のいくつもの国々では、中央政府が完全に暴力を独占できたことはなく、私兵、ギャング、自警団、ゲリラといった民間の武装集団が国家の役割を肩代わりしてきた。東南アジアにおいては、非国家武装組織(民兵や自警団、マフィアなど)が未だに社会に跋扈している。彼らは違法に武器を所持・使用し、地域社会の治安を脅かしつつも、一方ではコミュニティ住民を庇護し、一定の支持や信頼を集めている。都市部、農村部ともに残存する非国家武装組織に対しては、現地の警察は有効な対策を講じておらず、一時的な妥協や懐柔、妥協に基づく不安定なセキュリティ・ガヴァナンスが続いている。
本研究の目的は、①東南アジアのコミュニティ・ポリシングの実態を明らかにすること、②コミュニティ・ポリシングが治安改善や警察の民主的改革に結びつくメカニズム、条件を、学際的に追求することである。
本プロジェクトは2017年5月に開始し、2019年11月に完了した。また、別添「成果物リスト」のとおり、合計10本の書籍及び論文を刊行した。


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