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助成対象詳細(Details)

   

2016 研究助成 Research Grant Program  /  (B)個人研究助成  
助成番号
(Grant Number)
D16-R-0847
題目
(Project Title)
環境要因によるため池環境(ため池の生物多様性にとっての環境)の評価方法の構築
Building an Approach to Evaluate Irrigation Ponds Environment by Using Environmental Factors for Biodiversity
代表者名
(Representative)
中川亜希子
Akiko Nakagawa
代表者所属
(Organization)
自然再生と自然保護区のための基金
Nature Restoration & Reserve Fund
助成金額
(Grant Amount)
 1,500,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

    ため池は、水草・水生昆虫・両生類等の一時的または永続的な生息地として、重要な環境である。
    しかし、耕作放棄地に伴うため池の利用停止および管理放棄による池干しまたは埋立て、池縁部の木本伸張による池上部のうっ閉、底泥の堆積等の環境変化が生じているため池が増加している。このため、現状は生物多様性に富むため池については保全し、また、現状は生物多様性に欠ける、或は、現状は生物多様性に富むものの何らかの危機が迫っているため池については再生方策を講じる必要性がある。しかし、ため池は全国に約20万個あり、現状把握だけで時間と労力を要し、再生策の立案までには至らない。本研究では、ため池生物の生息に作用する環境条件(環境要因)を用いてため池環境を体系的・網羅的に評価・推定する統一的・汎用的手法の構築を目指す。本研究成果を利用して、ため池の自然再生ポテンシャルを推定する研究を行ない、特に放棄ため池の自然再生手法の提案を目指す。

    Irrigation ponds are important environment as temporary or permanent habitat of aquatic plants, aquatic insects, amphibians and so on. Irrigation ponds are increasing those have occurred of environmental changes (e.g. draining, landfill, closure of opening by woody extension of the pond edge, mud deposition, etc.) which are due to suspension of use and management abandonment of irrigation ponds according to abandoned farmlands. Because of this, it is nesessary to preserve irrigation ponds which are rich in biodiversity and it is also nesessary to restore irrigation ponds which are poor in biodiversity or which are approaching some kind of crisis but rich in biodiversity. But irrigation ponds are about 20 million units in Japan, so it requires immense amount of time and effort to only understand the current situation, does not lead to up to planning of restoration policy. In this research, it is aimed to build a unified and general-purpose approach to systematic and comprehensive evaluation and estimate the irrigation ponds environment by using the environmental conditions (environmental factors) that act to the habitat of the irrigation ponds organisms. Using the results of this research, it is scheduled to perform a study to estimate the natural restoration potential of irrigation ponds and to improve the proposal of natural restoration method for abandoned irrigation ponds.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

日本国内においてため池は約20万個存在するとされ、多様な生物の生息地として重要な環境である。しかし、耕作放棄・管理放棄に伴い、埋立てや木本によるうっ閉、底泥の堆積等環境変化が進み、数年~十数年で池の生物相が大きく変化し、生息地の機能は衰退・消失する。一方、豪雨災害による決壊等を契機に、防災上重要なため池の基準が見直され、ため池改修の他統廃合・容量縮小も検討されつつある。ため池の生物多様性は、我が国のため池灌漑開始以来最大の危機を迎えている。
ため池の生物多様性や環境の評価には、生物相の調査に時間や経費を要するのが現状である。とはいえ、災害対策等には迅速さが重要であり、効率的・広域的・網羅的な評価手法が求められる。これまでのため池生物に関する研究は、特定の生物群を対象とした分布確認やそれらに影響を与える環境要因についてのものが多く、水生生物全般・種多様性を対象とした研究は少ない。また、ため池の自然再生手法については、水生植物の保全を対象とした事例が数例あるのみである。
これらの状況を踏まえ、生物の正確な種類や生息数よりも多くの生物に有効な環境要因を把握することに着目し、ため池の現状が把握される環境要因が文献等により推定されれば、水生生物全般・種多様性を対象とした保全対策の研究や立案に寄与できると考え、ため池に生息する生物群に共通して作用する環境要因を用い、ため池環境を網羅的かつ簡便に評価できる統一的・汎用的手法の構築を目指した。
近畿7府県を対象に92箇所を現地調査し、11の環境要因により調査地を評価した。現地調査により得られた評価を目的変数、現地調査に拠らず把握可能な26情報を説明変数とし、ため池環境を予測するモデルを作成した。ため池環境には周辺の土地利用が強く影響すること、土地利用はため池内部の環境(水質等)へ影響することが推測された。本評価手法・予測値の妥当性について、第三者により「生物多様性が豊か」と評価されるため池の(本モデルによる)予測値と、近畿圏の全ため池についての予測値を比較した。「生物多様性が豊か」と評価されるため池が有意に高得点であったことから、本評価手法・予測値はおおむね妥当とみられた。一方、作成された予測モデルは、自由度調整済み決定係数が0.40にとどまる。この予測精度は、現地調査地点数、現地調査地の選定方法、予測モデルの説明変数の数に起因すると考えられた。現地調査地点数は標高50~100mに集中し、他の標高に所在する調査地点数が不十分であった。説明変数は、既に相当数の環境要因を加味しているものの、護岸改修といった個々のイベント情報が含まれていない。これらの情報は自治体が整備している「ため池台帳」等より得られる可能性が高い。今後、現地調査地にランダムサンプリング方式で選定する池を追加、イベント情報を説明変数へ追加する、といった改善の試行を経ることで、本モデルの有効性についての判断を確定できると考えられた。

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