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助成対象詳細(Details)

   

2016 社会コミュニケーションプログラム Communication with Society Program      
助成番号
(Grant Number)
D16-SC-0001
題目
(Project Title)
いじめやこころの不調に手を差し伸べられる子供達を応援する大人のためのカリキュラムの作成と実践―心豊かな学校・地域づくりに向けて―
Development and practical use of materials for educating adults to encourage children who support peers suffering mental difficulties and bullying: Towards development of warm-hearted, mutually-supporting schools and communities
代表者名
(Representative)
佐々木 司
Tsukasa Sasaki
代表者所属
(Organization)
東京大学大学院教育学研究科
Graduate School of Education, The University of Tokyo
助成金額
(Grant Amount)
 4,000,000
企画書・概要 (Abstract of Project Proposal)

本企画は、2013‐15年に開発した「仲間同士の支え合いが出来る子供」の育成プログラムについて、その内容・趣旨に関する保護者と地域住民の理解を進め、学校から地域への「相互扶助」の広がりを基礎にした心豊かな社会作りの実現を図ることを目的とする。具体的には保護者・住民を対象に、プログラムの内容である「精神疾患リテラシー」教育と「いじめ対策」教育の内容とともに、両教育プログラムの学習目標のコアである「苦しむ仲間を互いに支え合える子供の育成」の意義を理解するための資料(冊子とそれを補助する視聴覚教材)を作成し、それを活用した保護者・住民向けセミナーを実施することが、本企画の主な実施内容である。また本プログラムの授業は、学校教員が実施する形で開発しており、それを可能とするための教員向け講習会を実施してきたが、この継続実施も行う。これは授業に関する知識とともにプログラムの最終的目標である「支え合い」への理解を深め、保護者・地域住民とともに、子供同士の「支え合い」を応援できるようになることを意図するものである。これらの資料作成、セミナー、講習を通じて、「相互扶助」社会の学校から地域への広がりと定着を図る。

   Aim of the present project is to help school-children's parents and their neighbors understand the "mutual support" program, which is taught to the children at schools by teachers. Via the understanding, the parents and neighbors are expected to help and encourage the children mutually support their peers with difficulties including mental distresses and being bullied. For this aim, we are going to develop teaching materials including a brochure and an audiovisual one for parents and their neighbors. This would help them understand their children's learning and practices of the mutual support. Lectures will be held for parents and neighbors to further understand the children's learning and practices, using and introducing the materials. Lectures for school-teachers to learn how to teach the education program of mutual support to children at schools will also be held.
   The "mutual support" program, which was previously developed by our group of researcher-school teacher collaboration, with a great help of the TOYOTA Foundation, consists of two parts: mental health/illness literacy education and anti-bullying education. Children learn basic knowledge of mental health/illnesses, mechanism of development of bullying, and how they can help their peers as well as themselves when they are suffering the distresses. The program is to be delivered at classes by school teachers who are trained using brochures which we developed. The present development of the teaching materials and lectures using them would help parents'/neighbors' understanding of what children learn through the program, which may promote the children's everyday practice of the mutual support and its prevailing from schools to the communities. This, we believe, would finally lead to the development of warm-hearted, mutual-supporting society in our country.

実施報告書・概要 (Summary of Final Report)

本企画は、2013‐15年にトヨタ財団の助成を受けて開発した「仲間同士の支え合いが出来る子供」の育成プログラムの内容・趣旨について、保護者や学校地域の住民、さらには教員を含む多くの大人に広めることを目標として行うものである。その目的は、子供同士の助け合いを周りの大人が支持・支援することで、「相互扶助」の考えと文化を、学校を中心とする地域に広め、それを基礎にした心豊かな地域社会作りの実現を図ることにある。
この目的のコアに位置する子供同士の「助け合い」を進める際の具体的課題は2つある。1つは、子供の精神保健(メンタルヘルス)あるいは精神不調・精神疾患の予防と対処における子供同士の支えあいである。もう1つはいじめの防止と対処である。これらの問題は10歳前後から増え始め、10代における大きな問題となっている。また両者は相互に関連しており(いじめは被害者の精神的健康を大きく損ね、また精神的健康の低さ、特に集団における低い健康度は、いじめの増加に影響する)、また子供達の幸福を大きく脅かす問題であることは言うまでもない。
これらの課題の中で、子供達の助け合いがどのような意味をもつかについても簡単に説明したい。まず精神保健・精神不調に関しては、子供同士が互いに助け合う文化を学校に育むことで、精神不調に悩む子供の孤立を防ぎ、不登校など不調の長期化につながる問題を防ぎやすくなる。また、互いにその生活習慣に注意することで、精神不調の予防効果を得ることも可能である。プログラムでは直接触れなかったが、その中には、子供達に欠かせないものとなっているスマホ、SNSの使用(使用時間・使用時刻など使用制限の問題も含まれる)とそれによるトラブルの防止も、現代的生活習慣として含まれるだろう。いじめ防止と子供同士の助け合いには、さらに緊密な関係があることは、いじめにおける子供達の立場を考えると明確である。子供達のいじめ、特に学校におけるいじめには、直接の加害者と被害者だけでなく、それを取り巻く多くの子供達が関わっている。その中にはギャラリー的立場の子供、無関心の子供、被害者を助けたいが踏み出せない子供もいる。これらの子供達が出来るだけ、被害者を助ける子、いじめをやめさせる子供にと変わっていけば、自ずといじめも減少していく。実はこの理論は、北欧から世界中に広まっているDan Olweus博士のいじめ防止プログラムにおける基本原理となっている。なお、このような子供達の変化のためには、「互いの助け合い」が、学校の文化・地域の文化として当たり前のものとなっていることが1つの鍵となる。
子供同士の助け合いを可能とするもう一つの重要な鍵は、大人の理解と支援である。これは「互いの助け合い」を学校の文化として育てるためにも重要な鍵である。いじめ防止を例に説明すると、いくらいじめを止めたいと思っても、子供達は仕返しや、今度は自分が被害者となることを恐れて、それに踏み出すことができない。それを可能とするのは、いじめを止める行動(あるいは大人に相談する行動)を子供がとることを、大人が理解し支援してくれることである。また、大人達が互いの助け合いの重要性を理解し、そこに大きな価値があることを子供達に示すことも重要である。それが無ければ、子供達も、普段の生活の中で互いの助け合いの大切さに思いが至ることはないだろう。これは精神不調の問題でも同様である。偏見に満ちた考えのまま、精神不調に苦しむ人を助ける気持ちが学校や地域の大人になければ、子供達が互いの助け合いに目を向けることもない。
2013-15年の助成では、これらの課題を解決する一助として、子供達を対象に学校で行う「精神疾患リテラシー」教育と「いじめ対策」教育を開発し、両教育プログラムの学習目標のコアである「苦しむ仲間を互いに支え合える子供の育成」の学校とその地域における浸透をはかった。今回のプログラムではその内容を、保護者を含む一般の大人、あるいはより多くの教員に伝えるための解説資料を、冊子および映像の形で作成した。またこれを補うために、保護者・一般住民向けのセミナー、2013-15年の助成で開発した教育プログラムの教員むけ講習会の継続実施を合わせて行った。

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